第338話 ニセモノとホンモノ
「え、メーア……と、ユーナ?」
「あははははっ! やったぁっ! 私もなかなか捨てたものじゃないね!」
「さ……エスタトゥーア、悪戯にもほどがあるんじゃないか?」
「そうですよ、エスタさん。そんなところまで見たら、メーア、卒倒しちゃうかも」
いくら自身のほうが年上でも、職場では先輩にあたる日和に対してタメ口をきいたことはない。この名で呼び合うあいだだけ、この場でならと、エスタトゥーアを意識しながら
一方で、
「メーアをおどろかせるというのが目的なら、大成功するだろうな。それにしても……」
それでも、やはり。
自身に与えられた印象が、幻界の
視線が落ちる。
「師匠?」
冷たい声音に、びくりと肩がふるえた。
ちょうどいい、と
「……目に入ったんだから仕方ないだろ」
「ゴミですか?」
首を傾げる
「まあ、仕方がありませんね。ところで……アシュアたちは? まだ戻っていないようですが」
「受付で待ってるそうです」
「受付で?」
己の技術が男性にも通用していると確認できた
「とにかく、急いだほうがいい。もう行けるのか?」
「あれ? エスタさん、お荷物は?」
荷物持ちの報酬として招待チケットを一枚融通してもらった
その当の本人は、手ぶらの両手を広げ、微笑む。
「クロークに預けました♪」
「――えええっ!?」
「あ、チケットはそのまま使って下さいね。他に使う予定もありませんし」
驚愕の声を上げる
「さて、急ぎましょうか。思ったよりも時間がかかってしまいましたし」
「すごく早かった気がしますけど」
「わたくしは10分くらいで仕上げるつもりだったんですけどね」
「で、受付はどちらでしょうか?」
「あっちだ」
「雨降って地固まる、でしょうか」
「雨降らせたの、エスタさんですよね?」
うれしそうに、小声で
「麗しい師弟愛が、
そのことばの深さを察することなく、
自身が
「やっぱり、黙っていられないですよね。だって――そこにいるんだし……」
自身の誤った選択が元凶で、自分が傷ついただけではなく、多くのひとたちに迷惑や心配をかけた。
どちらも、同じ心が行動を起こさせるのだ。
現実に、
うれしくなるような絆でも、紡ぎたくない縁であっても。
「ふふ。わたくしは、敢えて関わらないという選択肢があってもいいと思っていますよ」
「それは……そうですけど」
「お互いが会いたいって思うのなら、いいのかな……」
「いずれにせよ、
「行きますよー?」
「はいはい」
急ぐということばに反しておしゃべりに熱中しかかっていたふたりである。
案内された先は、それほど遠くなかった。広大な皇海国際展示場の敷地を思えば、同じ建物であるだけ近いというべき距離である。招待券受付と書かれた看板のそばには受付嬢がおり、その脇に設置されたソファに座り、
「来たー! 来ました!」
はしゃいだ
「おまたせ」
「おまたせしましたー!」
にこやかに手を振る
「――え、あれ? エスタトゥーアさん、ですか?」
「うわー……メーア来たら、天命来たとか言い出すんじゃないか?」
「ユーナ、そのまんまだね!」
ふたりのコスプレに目をみはる男性陣を完全に放置し、
「はい、招待券回収~!」
「お話中のところ、失礼いたします。あちらのお客様も
受付嬢が気遣ってくれたようで、やわらかく
「これで、お願いします!」
「かしこまりました。皆さま、
一斉に、大きくメンバーはうなずく。
その一致団結ぶりに受付嬢は、一瞬、反応を遅らせた。
「――では、皆さまの受付手続きを開始いたします。どうぞこちらへ」
女性の二人組が嬉々として受付を離れ、招待券専用控室と書かれた部屋へと消えていくのを横目に、受付嬢の案内によって
そこで、あらためて説明を聞き……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます