第336話 整理券発行
コンパニオン、と言うにはキャリア臭がきつい三名は、皓星たちの姿を見つけて居住まいを正した。その営業スマイルにより、彼女たちが戦闘態勢に入ったことがわかる。
やはり早朝から客のいない受付を守るという状態では、多少気がゆるんでいたのだろう。さすがプロ、
招待券専用受付、とでかでかと看板が立っている横で、そのうちのひとりが笑顔でたずねた。
「おはようございます。招待券をお持ちのお客様でいらっしゃいますか?」
思わず笑顔を返しつつピラッとチケットを見せる
「恐れ入りますが、こちらにご呈示願います」
「あーっと、すみません。実はまだ連れが更衣室で……」
まとめて受付処理をしてほしいのだが、整理券のことが気になる旨を
「整理券配布につきましては招待券の確認後にお話することになっておりまして……受付手続き等、後程説明いたしますので、先に確認させていただいてもよろしいでしょうか?」
とてつもない念押しである。
招待券自体、偽物ではないのかと疑われていると悟った
受付嬢の笑みがそろって深まった。どうやら、真偽が確定したようだ。
彼女は一歩後退した。三人が横並びとなり、一斉に頭を下げる。
「たいへん失礼いたしました」
『いらっしゃいませ。ようこそ、皇海ゲームショウへ!』
実はコンパニオンだったのだろうか。
そう思うほど、そろいにそろった声音とともに、背後の皇海ゲームショウのポスターへと三人は手を向け、指し示したのである。
「では、受付についてですが」
そして、受付嬢は自身の腕に巻かれているリストバンドを示した。「皇海ゲームショウ」とロゴが西暦ごと記載されており、バーコードとQRコードが付随している。
「本開催より、皇海ゲームショウご参加の皆様に対して、入場手続き時リストバンドの装着をお願いしております。こちらにはIDを始め、各自の情報通信端末で確認できるようにとQRコードを印刷しますので、退場までは取り外さないようにお願いいたします。
なお、一般のお客様で各種催し物の整理券発行をご希望の方には整理券配布受付にてIDに整理券の情報を入力しております。当該整理券の内容を確認するため、特にスマートフォンなどの端末機によりQRコードを利用できない方のために、紙媒体による整理券も併せて配布しておりますが、紙媒体が主体ではなくIDによる管理となっておりますので、他者への譲渡は不可能です。
また、お客様のお連れ様はコスプレ受付をなさったとのことですが、その情報も入場手続きの際、IDに入力させていただきますので、登録証自体を失くされたとしてもリストバンドがございましたら問題なくコスプレ更衣室やクロークでの手続きは可能です。ご安心下さい。
なお、すべての情報は当日のみ有効となっておりますので、ご了承下さい」
にこやかに一通りの説明を行なう受付嬢は、そこでことばを区切った。
そして、受付の机の下から、一枚のボードを取り出す。その内容は――本日配布される予定の、整理券の一覧だった。
「招待券をお持ちのお客様限定ですが、一般の整理券配布受付ではなく、特別に受付時に各種催事整理券の発行を行なっております。いずれのイベントの整理券でもお一つだけですが、一般の方より優先しての参加が可能となります。ぜひ、ご希望の内容をお申し出下さい。
それと、恐れ入りますが、本サービスはシレーナグループからの招待の方のみ対象とさせていただいております。今後も継続して招待券にてご参加の方々にご満足いただきたいと思っておりますので、SNSやマスコミなど広報に対して拡散されませんよう、お願いいたします」
その内容を聞き、
「ここで出来るんですね。それなら楽でいいわ」
「はい。皆さまはグループでご参加のようですので、お連れ様もおそろいの上、先行入場開始時刻よりも早くおいでいただければ、優先して整理券を発行させていただきます。ご心配でしたら、現時点での各種整理券発行状況をお調べいたしますが?」
「助かります! あの、
身を乗り出してたずねる
一呼吸おき、
「イヤです、師匠……!」
先ほどまで赤かった頬は、今はすっかり蒼白になっていた。
「あたし、やっぱり師匠って呼びたいんです!」
「はあ?」
彼女の訴えに、
今までの話はいったい何だったんだ。
そう物語る表情に、
「だって、ペルソナって師匠の本当の名前じゃないし……!」
「……あー……」
その内容に、
ソルシエールと知り合ったのは、アンテステリオンで紅蓮の仮面を手に入れる直前だった。よって、ソルシエールもまた、彼の本来のキャラクターネームを知る数少ないひとりである。
今となっては呪いのために仮面を外すことはできず、名前も変更され、|紅蓮の魔術師とは「ペルソナ」であるとしか知られていない。
その事実を指摘され、
それは、
「それにお気持ちはすっごくうれしいんですけどっ、あたしにとってはやっぱり師匠は師匠なので!」
更に、超特大の拒絶が降ってきた。
「あたしだけが師匠って呼べるの、やっぱり特別っぽいし……」
そのことばと重なるように、
『あ、今へーき?』
「ああ」
『招待券の受付見つけたんだけど、すごいの! 今なら
「――え?」
興奮した
『とにかく、エスタとユーナちゃんの着替えが済んだら、急いで来てね! 場所はね……』
説明を始める
「ソル、
「あ、はい」
自身のスマホの画面に、皇海国際展示場の
「ここから、そんなに離れていませんけど……アシュアさんたち、戻らないんですか?」
「受付から離れたくないらしい」
肩をすくめる
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