第20話:覚醒、戦闘人格
──意識が、変質する。僕は、オレはずっとそこにいた。オレが飛び出せる場所なんてなかったから、押さえつけて、自分自身に殺意を向けて、殺そうとしてた。だけど、いまがその時なんだ、化け物でいい、愛する者を守れるのなら。
『ま、マイマスター!? これは一体、それにこのイメージ──』
イメージを構築、聖森の怒りで展開した魔力の枝を収束して伸ばす。伸びた枝は周囲の大気を焼き切って真空状態を生み出す。法則歪曲の力は枝から放出され、周辺空間の魔力を支配、魔法装甲を現実化させて真空をパッケージ、大気に邪魔させず、オレを魔力で加速させる──魔導超加速レール。
【──虹の
オレ達が、英雄幻想が魔力装甲で出来た密閉レール内を加速していく。レールの魔力は反発力によってオレ達をさらに加速させ、銀と水色に光り輝いた。加速して過ぎ去った部分のレールが消えていく──しかし、それによってこのレールに穴が開くことはない。このレールの先端と後端は常に閉じている。オレが移動すれば、それに連動して常にレールの分解と再構築が行われ、オレをどこまでも加速させる。触否定速の再現だ。レールは伸びる、オレの意思に従い、目的の場所へとオレを導く。
『──うおおおおおお!』
──ビシュ──ズシャアアア!
英雄幻想の、オレの剣が触否定速の胴体を両断する。法則歪曲の力が魔法装甲を食い破る、絶対の切断。それによって永遠輪転の腹の車輪に巻き込まれ、ミンチにされかかっていた触否定速、ククリを解放する。
強引な手だがこれしかない、超魔導鬼械はアニマ計算機構さえ無事なら死ぬことはない。触否定速のアニマ計算機構は胸部装甲の奥にある。もし、あと少しでも遅れていたら、触否定速のアニマ計算機構は永遠輪転に食われ、噛み砕かれていたところだった。オレは触否定速を救出した流れで剣を永遠輪転の腹に向け、切っ先を返す。
『──ッ、あぶなぁ~』
永遠輪転はそれを回避する。回避行動のために永遠輪転が距離を取った隙に俺は剣の現実化と虹の弾道を解除し、触否定速を両腕で回収する。オレは地上にいる青の陣営の魔導鬼械に触否定速を渡し、安全な所まで送るように頼んだ。触否定速は、ククリはもう戦えない、まともに動けるように回復するまで一日はかかる。
『ダメダメぇ、そうはさせないよ。雑魚共、触否定速をこの竜巻の中から逃がすな』
紫陣営の魔導鬼械達が触否定速を託した青の魔導鬼械の進路を塞ぐ。そう簡単にはいかないか。
『雷名くんの人間じゃない部分、戦うために生まれた部分、ワタシだけの秘密じゃなくなっちゃった。あーあー、それが、ククリを助けるためでさ……ワタシをククリのために倒そうとして……いいなぁ、羨ましいなぁ。嫌だなぁ、妬ましいなぁ……やっぱり、ククリのことが一番なんだね。ワタシが、誰よりも、雷名くんのことを好きなのにッ!!』
『勘違いするな。ロミィ、お前もククリも、オレのモノだ。オレは、どこまでもお前達を愛しているし、世界の誰よりもお前達を愛する自信がある』
『う……雷名くんの浮気者! ワタシは、ワタシだけを見てほしいのよ!』
『マイマスター……ロミィの言うことは最もでは? 恥を知るべきでは?』
『そうだな。だが、これがオレの偽りのない気持ちなんだから、どうしようもない』
フラウに罵倒される。けど、仕方がないだろ!? だって、二人共可愛いんだから……そもそも、二人だけじゃない、他の君主の子だってオレは可愛いと思ってるし、オレのモノだと思っている。
『ま、マイマスター!? もう! ホント、どうしようもない御主人様ですね!』
う、そうか……精神防御を発動させないとフラウには思ったことが筒抜けだった。が、こうやってオレの部分を解放して思ったが、オレが危惧していたよりも、オレはオレを制御できている。
『まぁ、そうだよねぇ。誰にだって、自分ではどうしようもないこと、あるよね。だから、ワタシがククリが憎くて、殺したいって思うのも、自分ではどうすることもできないの。雷名くんと二人の世界を手に入れるために、他の全てを殺そうとする、ワタシの心を……ワタシは止められない。この気持ちで、世界が壊れてしまうなら、壊れてしまえばいい』
『ロミィ、あんた……それであんたが望む幸福が手に入ると思ってるの? 他の誰もが滅んだ世界で永遠に二人、あんたも、ヤクモ君も、心をすり減らしていって、最後には破滅するわ』
ナナミの言葉、きっとロミィには届かない。なんとなく分かる……ロミィは、ただオレと一緒にいたいだけだ。幸福であるかは関係ない……そして、それはオレがロミィに向ける感情にも似ている。孤独と寂しさの中で、側にある温かさ、ただ側にあるだけで十分なんだ。ロミィは、オレといることでしか、孤独の寂しさを埋められない。ロミィは自分自身でそう決めつけて、それでいいと思ってるんだ。
『永遠? 永遠なんていらない、一瞬でもいいの。一瞬は永遠だから……瞬きの幸福があれば、永遠に幸福なんだよ、ナナミ。全てを賭けた一瞬は、無為の永遠よりも無限に近く、価値のあるモノ。別にいい、ここで雷名くんがワタシを精一杯愛してくれるなら、ここで死んだっていい──』
『あんた……狂ってるわ』
『知ってる。だから止まらないんじゃない──オールイン、オオォーーール、インだァッ!! 永遠よ、刹那に廻れ──』
【
永遠輪転の大鎌の光輪の刃が出力をあげ、どこまでも巨大化していく。光輪はやがて大鎌の柄すら取り込んで、永遠輪転は直接光輪に触れ、掴んでいる。しかし、回転する光輪の刃は永遠輪転を傷つけることはない。あの回転は、永遠輪転の精霊概念の力と完全同調している……光輪の回転は永遠輪転の吸収の力に100%回収され、回転の精霊概念が新たな回転を生み出す。永遠輪転の身体を通って循環しているんだ。
けど、明らかに出力が強すぎる……永遠輪転から紫の煙が出ている……機能不全状態に陥っている。おそらく、今この状態の永遠輪転には高い防御力も、高い再生能力もない。捨て身の一撃ではあるが、相手をこの攻撃で倒し、その後この巨大光輪の回転エネルギーを全て吸収すれば、永遠輪転は元通りだ──
『なっ──!?』
永遠輪転は、巨大な光輪を投げた。近接攻撃ではなく、広範囲を狙う遠距離攻撃だった。そんな……こんなことをして、技が外れたら、光輪から大量のエネルギーを回収できなくなるんだぞ? それに、攻撃の間、永遠輪転は機能不全状態のまま、無防備なままだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます