【第一部完結】【魔導鬼械xパープルアイズ】ロボのある異世界デスゲームの優勝賞品となってしまった僕、7人の女の子を救うためデスゲームを破壊する【ロボットxハーレム】
第13話:僕って最低野郎だったんですねぇ……
第13話:僕って最低野郎だったんですねぇ……
今日、急にルールが追加された。休戦日、毎週この日、一の曜……僕たちの世界の日曜日は、これから戦ってはいけない日、休息の日になるらしい。どうしていきなりそんなことになったのかは分からないけど、正直ありがたい。僕はこの休戦日を使って、話をすることにした。ただ一人、僕だけで”彼女”と話をする。
中立地帯である聖王宮周辺、そこにある、廃墟となり緑が生い茂ってしまっている噴水広場、ここを待ち合わせ場所にした。魔法の浄水循環システムはまだ生きているみたいで、野生動物達も人のいないここを有効活用しているようだった。所々砕けた噴水の縁で、僕が座って待っていると──
「お、おまたせ……ら、雷名くん……ど、どどど、どう? 変じゃない?」
「え!? 鎌霧さん!? ぜ、全然変じゃないよ! いつもと、その……雰囲気が違うから、ちょっとビックリしたけど……あ! もちろんいい意味でビックリしたんだよ!」
僕が話をしようとこの場所に呼び出したのは鎌霧さんだ。いつもは暗っぽい、ダウナー系っぽい感じの服装で、前髪で目元もあまり見えなかったけど……今日の鎌霧さんは、まるで系統が異なる格好だ。こう、清楚な感じっていうか、可憐な感じっていうか、でも胸元が結構大胆な気がする……
顔も、前髪で隠れていなくて……滅茶苦茶可愛い。儚げな雰囲気で、可愛いけど、綺麗でもある。幼くも見えるけど、胸が大きくて、大人のような感じも……なんだか、僕はどうしたらいいのか、彼女をどう捉えたらいいのかが分からなくなってしまう。
「よかったぁ、喜んで貰えたみたいで……普段はこういうカッコしないけど、雷名くん、いつも女の子のおっぱいばかり見てるから。喜ぶかなって」
「えぇ!? 僕ってそんなに胸見てる!?」
「え? うん、無意識なの? 物凄い執着してるような目線を感じるよ。なぜだか、あまりいやらしい感じはそこまでしないけど」
「あ、あああ……そっかぁ、僕はあんまし見ないようにしてたつもりだったんだけど、そんなに見ちゃってたんだ。見るつもりはなくても、目が勝手に見てしまうんだ」
「他の子は知らないけど、ワタシは、雷名くんになら、エッチな感じで、見られてもいいよ?」
「ええええっ!?」
「あはは、顔真っ赤。やっぱり可愛い」
っく、なんだか……鎌霧さんに手玉に取られている気がするぞ……もっと、もっと真面目な話をするつもりで鎌霧さんを呼んだのに……なんか、あんましそういう話をしたくなくなっちゃったな。楽しく、前向きに話せるなら、それもいいかと考えてしまう自分がいる。
今日は休戦日だ、だから……今日ぐらい、鎌霧さんと、この休息を楽しんでもいいんじゃないか? だって……もしかしたら……鎌霧さんと楽しく過ごせる日は、今日で最後かもしれないんだぞ? 僕が鎌霧さんを倒して、仲間にするのを失敗しなくとも、鎌霧さんが他の君主にやられて、殺されてしまうことだってありえる。
「雷名くん、大丈夫? これ、使って?」
鎌霧さんはそう言って、僕にハンカチを手渡してきた。ああ、僕……泣いちゃってたのか……駄目だろこんなの。この日を楽しむにしても、この先の話をするにしても、僕は泣いてたら駄目だろ。僕は鎌霧さんのハンカチで涙を拭いた。
「ご、ごめん! もう大丈夫。でも、困ったな。この世界で、楽しく遊べる所ってどこなんだろう? 全然分かんないや」
「雷名くん、ワタシと遊んでくれるの? で、でも……雷名くん、ワタシを説得しようとし──」
「──いいんだ。最初はそう思ってたけど、やめたから。あの時、鎌霧さんは……僕の言葉で、人造神に意思を歪められたのかもって気づいたけど、それでもやめないって言った。情けない話だけど、あの時僕は……なんだか鎌霧さんから凄みを感じてしまって、僕が君を説得するのは無理そうだって思った。僕が君を止めたいと思う気持ちよりも、君の気持ちの方が強い、そんな風に思った。だから説得はしない、でも諦めもしない、僕は君を倒して、止める」
「ごめん……雷名くん」
「謝る必要なんてないよ。感じたままが心で、それが自分にとっての、どうしようもない事実なんだ。思うことや目指す先が違っても、誰にも、本当の否定なんてできやしない。でも、今この時、僕も鎌霧さんも、本当は楽しく、仲良く過ごしたいでしょ? そこは一緒なんだ、すれ違いがあっても、同じがあるんだ。だからきっと、今日は楽しむのが一番の正解だと思った。それで後悔したって、僕が馬鹿なだけさ」
「──好き!」
あ? えっ? え!???? 柔らかい感触がいくつも……感じられる。腕、脚、胸、そして唇……き、キスされてる!? あ、あああ、ヤバイ……近くだと、鎌霧さん、こんないい匂いがするんだ……
ちょ! こんな変態みたいなこと考えて、それが鎌霧さんに伝わっちゃったらどうするんだよ僕! う、キスだけじゃない、全身絡みつかれてる。の、逃れられないっ……ちょ、体を弄ばれてる!? 流石に抵抗しないと! だ、駄目だ、振りほどこうにもびくともしない、凄い力だ……
「雷名くん、忘れてない? 今のワタシは
「だ、駄目だよ! 今日は休戦日なんで! この力強い包容は、戦闘行為に当たるんで!」
「あ、あはは! それもそうだね。これ以上やると、あいつもブチ切れるだろうし、今日はこの辺にしといてあげる」
鎌霧さんが解放してくれた。危なかった……鎌霧さんが強引な手段を取ることは予測していたから……二人きりで、ちゃんと話すことは難しいと思ってた。でもそこに休戦日がやってきたから、鎌霧さんが強引に来るのが抑止されて、ちゃんと話せるかもと、僕は鎌霧さんに会うのを決めた。女々しい話ではあるけれど、この感じ、僕の判断は間違っていなかったみたいだ。休戦日じゃなかったら、確実に終わっていたと断言できる。
「じゃあ、ワタシがここら辺のデートスポット、案内してあげるね? ま、ワタシが空からデートスポットを見てたあの頃は、デートなんて意味のない言葉だったから、全然そういう場所なんだって感じしないけど」
僕は鎌霧さんに手を引かれて、聖王宮周辺を周って、デートをすることになった。もう廃墟ばかりのこの場所だけど、そのどれもが、面影があった。かつてそこには人がいて、恋人達が生まれたり、逆に消えたりしたんだろうなって思った。小舟が沈んだ湖、欠けてしまっているけど、ステンドグラスが綺麗な教会、生い茂りすぎた花々のある小高い丘、どれも綺麗だったから、そう思った。
人がいないからこそ、そこは静かで、景色がよく見えたのもあるかもしれない。僕と鎌霧さんは、デートの間、特に話すことはなかった。いつもなら好きなアニメのオタクトークばかり、他の人からしたら煩いぐらいしていただろうに、今日はそういう話はしなかった。でも気まずいだとか、そんな風には思わなかった。
だから気づいた。本当は、僕はオタク話がしたくて鎌霧さんと一緒にいたわけじゃなかったんだ。そして、それは鎌霧さんも同じだったんだ。単に一緒にいると、居心地が良かったんだ。
デートをちゃんと計画できなくて、気の利いた話もできなくて、胸ばっかり見て、ダメダメな僕を、鎌霧さんは受け入れてくれている。甘えた野郎だと思う、僕は……実は鎌霧さんに甘やかされていたんだ。
駄目でもいい、そこにいればいい、そう言われているみたいだった。きっと、僕が鎌霧さんと付き合ったら、僕はとんでもないダメダメ人間になること間違いなしだろう。ああ、僕は……ダメダメなんだ、ククリのこと……本気で好きなのに──
──僕は、鎌霧さんのことも、本気で好きだったんだ。それに気づいた瞬間、僕の中で何かが変わった、決心がついたんだ。ククリのことがあるから、僕は鎌霧さんに向けた気持ちに気づかないようにしていた。だけど、僕はどうしようもない野郎だったんだ。
きっと、今は鎌霧さんに思いの強さで負けたりしない。
「今日のデートさ、普通だったら楽しくないと思うんだけど、楽しく思えた」
「わ、ワタシも……」
「負けないよ。気持ちも、勝負も、僕は君に負けない」
「え? 気持ちも? それって……」
「うん! 僕、鎌霧さんのこと、大好きだったみたいだ。君が僕を手に入れようとしなくとも、僕はもう……とっくの昔に、君のものでもあったんだ。最低かもだけど、それが僕の、嘘偽りない気持ち、だから、負けないよ」
僕は帰った。レッド・スピードの要塞へ、帰る時、鎌霧さんの方を振り向くことはなかった。だから鎌霧さんが、僕のあの告白を聞いて、どんな顔をしていたのかは分からない。どう思ったかも分からない。僕は、振り向くことができなかったんだ。
鎌霧さんに、自分だけのものになってほしい、他の君主を殺すのを手伝って欲しい、そう言われたら、僕は首を縦に振ってしまいかねない……イカれた話だし、流石にそんなことにはならないだろうけど、あの時の僕は、僕自身……恐怖を感じる危うさがあった。
昨日、ミリアに勝って要塞でみんなと話し合った後、フラウに言われた。僕は普通の人間ではないと……普通の人間が数分かけて行う思考を、一瞬で行えてしまっているらしい。フラウは今までずっと封印されていて、人間と触れ合うことも殆どなかったから、人間の一般的な性能を知らなかった。人と触れ合うようになった最近、この事に気づいたみたいだ。
といってもこれは僕が英雄幻想に乗っている時の話で、それ以外の時は人間の範疇らしい。それでもかなり思考スピードとその量は多いみたいだけど……ともかく、僕は普通じゃなかった、それはつまり……僕もきっと……他の超魔導鬼械達と同じく、戦うために生まれた存在ってことだ。
だとすれば、僕の中にも、人造神に仕込まれたバグがあるかも知れない。僕に精神防御機能があるのなら、精神防御によって、その影響を低下させていたのかも……精神防御と、戦うためじゃない、人間の僕の心で、人造神のバグが生み出す殺意に抵抗していたのかも。そういったことも考えて、僕は危ないかもしれないと思った。
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