第10話:色々と浮き彫りに




 幻想現実化により魔弾機織の爆弾が視認可能となった。それは大量に、至る所にそれはあった。だが、移動の全てが封じられるほどではない。永遠輪転と魔弾機織はこのオレンジ色の光に触れていた。触れているのに爆発してないってことは、やっぱり細かい条件を設定できたり、魔弾機織の命令で発動したりができるってことなんだ。



『へぇ、ミリア、やるじゃん。これって、ワタシをいつでも爆破できるってことじゃん。敵対行動と、その準備は同盟を破棄するまでは不可能って条件だったけど……これなら詐欺みたいなことができるね? この準備は、雷名くんとナナミ、ククリを倒すためであって、ワタシを倒すためじゃないから、例えこの準備が、ワタシを倒すために流用できても、嘘をついたことにはならないもんねぇ……ふふふ、アハッ──舐めた真似をしてくれる』



 ミリアと鎌霧さんが険悪な感じに、図らずも僕の幻想現実化は、二人の同盟関係にもヒビを入れたようだ。永遠輪転が、オレンジ色の光がない場所へと移動する。僕も光がない場所を通って、触否定速の場所まで移動し、触否定速を運びながら勝利先導の所まで移動する。



『まぁでもミリア、あんたがここで同盟に追加条文を認めるなら、ワタシは見捨てないでいてあげる。ワタシとミリアが最後の二人になって直接対決することになるか、どちらかが先に脱落した時のみ同盟は解消され、同盟の解消と同時に、あんたは今までに展開した罠を全て解除しなければならない。ワタシも同盟が解消される時は、あんたから距離を取る。あんたが改めて戦闘の準備ができるように』



『わ、分かった……どのみち、選択肢はないようやし、その条件でええわ』



 え!? 一瞬で仲直りした!? 鎌霧さん、冷静だ……ミリアに騙されてると分かった後でも、すぐに同盟関係を修復して戦力の低下と、この先のリスクを回避した。結構怒っていたように見えたんだけど……あ、永遠輪転から煙がでてる。超魔導鬼械がリソース不足で機能不全に陥っている時に出る煙だ。鎌霧さんは今、ピンチだったんだ……



ここで同盟を解消してしまったら、すぐに負けてしまうから……追い詰められた自分の状態を見て冷静になたんだ。鎌霧さんが機能不全状態になったのは、ミリアとの同盟関係が前提で策を講じたからだ。ミリアの静かな裏切りは、想定外だった……永遠輪転の煙が治まる。機能不全状態が終わったんだ。



『ククリ、ヤクモ君! 永遠輪転の位置を見て! 私達は、挟撃されているッ! 』



 なっ!? 委員長に言われて永遠輪転の位置を確認する。委員長の言う通り、永遠輪転とミリアは僕たちを挟むように囲んでいた。鎌霧さんは、ミリアの裏切りに怒りを感じ、爆弾罠から距離を取るために罠のない場所に移動したと思っていたけど、それだけじゃなかったんだ。僕たちを逃さない算段も同時に考えていた。



ククリ、触否定速は今、大ダメージを受けて機能不全状態で、僕は戦闘経験も浅い……勝利先導は火力不足で、僕たち3人で連携してやっと永遠輪転にダメージを与えることができた。触否定速が欠けた今、ミリアの妨害のある中で、戦いになるのか? っく、もう永遠輪転が仕掛けてくる。大鎌を僕たちに振り抜いてくる。



 ──ゾオオオム!!



 僕は永遠輪転の攻撃に合わせてバリア、次元境界障壁を展開した。しかし、それは僕の思っていた通り、永遠輪転の攻撃を完全に防ぐには至らなかった。バリアは鎌霧さんの大鎌とマントに触れた瞬間、僕たちから剥がれていった。まるで、巨大な車輪に巻き込まれたかのように、潰れて、吸収された。やっぱり、ククリが次元境界障壁を越えてダメージを与えて来たみたいに、他の超魔導鬼械も、自分の精霊概念の力を応用することであっさりと突破してくる。でも、意味がないわけじゃない、威力は間違いなく軽減されている。軽減された大鎌による攻撃を、僕と勝利先導は剣で弾いた。



『──ありがとう。ヤクモ、ナナミ──あたしが復活する時間を稼いでくれて、道を教えてくれて! この勝負、あたし達の勝ちよ』



 僕の後ろから、光を感じた。振り向くと、完全に傷を修復し、機能不全状態を脱した触否定速がその機械の眼孔から、黄色い光を発していた。そして、触否定速は僕たちの前に飛び出した。永遠輪転を通り抜け、魔弾機織の元へと、一直線。とんでもない加速、急加速だ。けど、その進路には魔弾機織の設置した爆弾罠がある。そんな、触否定速の軌道は完全に避けるつもりがない!? 一直線だ、それを貫こうとしている。



 ──ボガァ!



『そんなっ、ククリ、どうして!』



 爆発の光が見える。だけど、その音が僕たちの所に届くよりも早く、触否定速は加速していく、これじゃ触否定速はボロボロに、破壊されて、ククリが死んでしまうっ! 触否定速の腕、脚、パーツが爆破によってバラバラに別れていく。これじゃあ、自立も加速もできなくなる──え?



『──戦闘、続行!!』



 腕と脚のパーツが確かに爆破によってはじき出されたのが見えた。そのはずなのに、ク触否定速は依然として動き、加速し続けている──え? そんな、腕パーツは二の腕の部分がないのに肘先がまるで繋がってるみたいに……脚もそうだ太もものパーツがないのに、膝下のパーツが繋がっているかのように、動いている。



 いったい、何が起きているんだっ……!



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