【第一部完結】【魔導鬼械xパープルアイズ】ロボのある異世界デスゲームの優勝賞品となってしまった僕、7人の女の子を救うためデスゲームを破壊する【ロボットxハーレム】
第8話:戦闘、紫、達人ばかりの戦場で戦うのって辛い
第8話:戦闘、紫、達人ばかりの戦場で戦うのって辛い
「ロミィ! ミリアと手を組んでたの!?」
「ククリ、
委員長は人読みが上手い? じゃあ、鎌霧さんは……委員長が人読みが上手いことを知っていたから、ミリアの予測を回避してくるのを知っていたから……委員長の思考の癖を知っていたから……ここに、僕たちの居場所が分かったってことなのか? な、なんなんだこれ……汗が止まらない……言い表せないような、重苦しい空気が、重圧が僕を押しつぶす。や、ヤバイ……鎌霧さんはヤバイんだ、なぜだかそういう確信を持ってしまった。
「──みんな今すぐここを離れて!! 戦闘形態に!!」
委員長が叫ぶ、それと同時に僕らも委員長の指示通りに鎌霧さんから距離を取る。
「あは、怯える雷名くんも可愛いなぁ。それじゃあ、邪魔者にはここで死んでもらおうかなぁ? ──安寧を廻す円環の空洞、無尽は孤高、無限は軌跡──愚者は巻かれて朽ちるのみ、その名を永遠、久遠の車輪を回す者──
──永遠機動制圧型、
──
僕らが鎌霧さんから距離を取った瞬間、鎌霧さんは詠唱し、黒と紫の竜巻に包まれた。戦闘形態に、鬼械の巨人になるんだ。
「──死は重なり、絶望を歌う。其の勇気は呪いを祝福に、其の執念は諦念を悲願に、敗北を勝利に──戯曲の結末はただ一つ、全ては収束す。絶望を砕き、勝利を嚮導する者──
──広域武装供給指揮官型、
──
鎌霧さんに続いて委員長も詠唱する。青と黄金の竜巻が委員長を包んだ。フラウとククリも戦闘形態移行の詠唱を完了し、4機の超魔導鬼械が顯現する。
委員長の戦闘形態は青と金を基調とした無骨なシルエットで、他の超魔導鬼械達と比較するとかなりゴツく、安定感がある感じだ。いや、これは逆に他の機体が細すぎるんだ……超魔導鬼械はフレームの一部を魔法装甲という不可視の魔力でできたフレームを使用している。視覚的にはフレームがあって然るべき所にないせいで、かなり不安定に見える。実際には見えないだけで装甲は存在するし、魔法装甲には重量が存在しないのに丈夫とかいうとんでもない性能をしているから、見た目よりも異常に頑丈らしい。
まぁ、全部フラウから教えてもらったことだけど……そんな超魔導鬼械達の中で委員長の戦闘形態は異質だった。魔法装甲がなかったとしても、丈夫そうに見える。だけど、おそらく委員長の戦闘形態にも魔法装甲があるはずなんだ。だとしたら防御性能はかなり高いのかも……肩に盾みたいな追加装甲も装備されてるしね。装備も魔法ブレードとライフルでオーソドックスな感じだ、やっぱ
でも、そうなると鎌霧さん、永遠輪転は永遠機動制圧型っていったいどういう性能になるんだ? 見た目は凄い攻撃的だけど、持久戦や制圧戦を得意としてるってことでいいのか?
『
『……チッ……ロミィ、あなたのコードネームも大概でしょう? ヤクモ君、こいつの貧相な見た目に惑わされないで、永遠輪転は常時高出力の状態で戦っても全く息切れしないわ。回転と吸収の精霊概念によって、自身のエネルギーを超高効率で循環、再利用してるの。使えるエネルギーが他の機体とは段違いよ、生半可なダメージを与えても回復される』
『そ、そんな……滅茶苦茶だ……それって鎌霧さんは常に必殺技使いたい放題ってことだよね? けど、そうか……エネルギーを再利用、攻撃に使ったエネルギーを自分に返さないといけないから近接武器しか見当たらないんだ。射撃武器だと、消費したエネルギーを回収するのが難しいから』
永遠輪転は見た感じ棒のようなものと魔法のマントしか装備してない。もしかしたら、マントに隠し武器を仕込んでるかもだけど……ククリが必殺技を使った時は結構消耗してて、隙も見えた。だけど永遠輪転にそういった隙がないのだとしたら……防御性能と攻撃性能が高くて、持久力があって、隙もない……多分、常時高出力で戦えるっていうなら、スピードも早いはずだ。近接兵装しか装備していないなら、スピードは必須なはずだもんな。距離を詰めないと攻撃できないっていう欠点があったとしても高性能過ぎる……
あれ? でも……フラウも必殺技使ってもあんまし隙はなかったよな? 受けたダメージを回復した時も、特に弱体化することもなかったし、隙もなかった。確かフラウは全領域人機決闘型、そうか決闘……一対一での戦いに特化してるってことだ。燃費が極端に悪くて3時間しか戦えないけど、逆に3時間の間は常に高い性能を発揮できるんだ。だから
英雄幻想は、3時間限定ではあるけど、永遠輪転と同程度の基本性能で戦えるかも? ま、待って!? 3時間? 僕たち元はミリアと戦うって話だったのに、鎌霧さんとも戦うことになっちゃったんだろ? 3時間以内に……できるのか?
『マイマスター、やはりあなたは……』
「ふ、フラウ? どうしたの? 何か気づいたことが?」
『いえ、気にしないでください。この戦闘を生き延びたら話します。今は話してもノイズになるだけですから。敵は動くみたいですよッ!』
うわッ!? 早い、一瞬で永遠輪転が距離を詰めてきた。超高出力で吹かした永遠輪転の推進装置から、強い光が煌めいているのが見えた。推進装置の周りには実体化した紫色の魔力の光も輝いて、逆光となる。紫の夕日を背に、鬼械の巨影は僕の眼前までやってきた。コックピット越しではあるけど、僕は永遠輪転からの殺気を感じた。体の深部から、背骨を鷲掴みされるみたいな、嫌な、危険なプレッシャーがあるッ……!
永遠輪転が腕を大げさに広げる。その片手には長い棒が握りしめられていた。明らかにこれを僕に、英雄幻想に振り下ろすつもりだ! どんな装備で、どんな攻撃かは分からないけど、食らったらマズイ、そんな気しかしない!!
【──
──フィィィーーーン!!
永遠輪転の持つ棒の先端部に、魔法の刃で出来た輪が出現する。魔法の光で出来た紫色の刃は高速回転し、回転ノコギリのようになっている。僕はそれが英雄幻想の首元へと直撃する寸前、しゃがみ込んでから前方への跳躍で回避に成功する。あ、危なかった……元からなんらかの近接攻撃、それもあの棒を使うだろうってことが予測できていたから、なんとか避けられた。あっ!? 振り返って気づいた……前方に回避したのはいいけど、回避方向が委員長やククリと違う方向だったせいで僕は孤立してしまった──あれっ!? 永遠輪転が横に飛んだ? どうして距離を……
『どうやら永遠輪転は気づいているようです。この英雄幻想が彼女にとって最も危険であることを』
「ど、どういうことなの? フラウ……」
『英雄幻想の法則歪曲は、相手に触れることができれば、相手の持つ力、その法則すら歪めることが可能なのです。彼女の設計データによると、あのマントは吸収の概念を宿していて、触れた対象の持つエネルギーを吸収することができるみたいです。彼女は元々高い防御力を持っていますがその性能を、このマントの力でさらに押し上げている。攻撃の持つエネルギーをマントで吸収し無力化、さらにそのエネルギーを攻撃に転用する』
「と、とんでもないな……でも、そうか、やっとフラウが言っていたことの意味がわかったよ。僕たちは法則歪曲で鉄壁の防御を無力化できるから……それだけじゃない、僕達は攻撃するどころか触れているだけでいいんだ! 僕達が法則歪曲で永遠輪転の防御力を低下させている間に、ククリと委員長が攻撃すれば、それも通るんだ。触れられるだけで困るから……すぐに距離をとった!」
『危ない危ない……ククリを倒したあの技を見てなかったら、油断して負けていたかもねぇ~。異常な法則の歪み、それがなきゃ、あんな風に、ガラス細工みたいにフレームが砕けたりはしない。ねぇフラウ、雷名くんに乗ってもらうのって、どんな感じなの? 嬉しい? 興奮する? ワタシはあんたが羨ましくて仕方がないよ』
『えっ!? い、言い方ァっ!?』
『乗る? 有人機ですから当然のことと思いますが……マイマスター、何か他にも意味があるのですか?』
「き、気にしなくていいよフラウ! 鎌霧さんは僕たちに揺さぶりをかけようとしてるだけだから……」
あれ? フラウって僕と繋がってるから、僕の心を読めるんじゃなかったっけ? 今の感じ僕の心を読み取れていなかったよな?
『そう言えばそうですね……まさか、精神防御? この英雄幻想に、マイマスターの精神を守る防御機構が搭載されていないことを不可解に思っていましたが、マイマスター自体に精神防御能力が元からあったのなら、それにも説明がつきますね。けど、どうしてさっき精神防御を? わたしが知るとよくない情報だったのでしょうか?』
「そ、そうだよ! だから、それ以上は聞かないで!」
僕に精神防御能力が? それってみんな持ってるのかな? いや、フラウの言い方的に普通ではなさそうだよね? ククリによって精神汚染された時、僕は自力で立ち直ることができたけど、もしかしてフラウの言う精神防御能力があったからできたことなのか?
もしも、僕が精神防御能力を持っていなかったら、その場合どうなっていたんだろう? でも、あんな魔法の、不可思議能力に対抗できる力をどうして僕が持っているんだ? 僕はもしかして、普通の人間じゃないのか? よくよく考えれば、僕と関わりのある7人の君主達が超魔導鬼械だったし、フラウも出会ったときから僕をマイマスターと呼んでいた。それらを踏まえると……やっぱり僕にも何かあるんだ。僕の知らない何かが、僕にはあるんだ。
『うらあああああ!!』
ククリが飛び上がった、空中で加速して攻撃するつもりなのか! でも確かに、ここはさっきまで戦場じゃなかったし、ミリアが爆発する罠を仕掛けていない可能性が高い、なら空中で加速しても問題ないんだ。ククリは垂直に、できるだけ飛行範囲を狭めるように加速を行って、急降下、永遠輪転を急襲する。チャンスだ! 僕もククリに、触否定速に合わせて永遠輪転に攻撃を仕掛ければ、当たるかも! 触否定速の攻撃の邪魔にならない範囲から攻撃する。
英雄幻想には攻撃に転用できる魔力制御ユニットがある。それは英雄幻想の腰から生えた布、体操に使うリボンみたいな形状の特殊繊維でできた触手だ。その名を
『──おおこわ。でも残念、雷名くんとワタシじゃあ、戦闘の経験値が違うもの』
──えっ!? 永遠輪転が、飛び上がった? そんな、しかも急降下してくる触否定速とぶつかる角度だ……なんで? ──!? 嘘だろ? 永遠輪転はククリの攻撃をマントで覆うようにして防御、そしてひらりと、触否定速の装甲表面を滑り撫でるようにして、攻撃を空中でやり過ごした。
──バシュウウウ!!
永遠輪転に躱されて地面に激突しそうになった触否定速がブースターを派手に吹かして、激突を回避、地面を脚で蹴って、後隙を消した。今のはまさか……合気道みたいな、相手の攻撃を利用したのか? 回転の精霊概念を使って、触否定速の機動に回転の力を加えて、軌道を逸した? そこから相手から受けた攻撃のエネルギーを、自身も回転することで消した?
でも、あのマントは吸収の力を持っていたはず、マントでは吸収しきれないから……回転の力を使った回避も併用した? 飛び上がって、僕の舞踏飾紐を回避すると同時に、触否定速の攻撃を無力化し、そのままカウンターに続けた。や、ヤバすぎる……なんだってこんな達人芸みたいなことを当然のようにできるんだ。僕と鎌霧さんでは戦闘の経験値が違うと言われたけど、本当にその通りだ。
──ガガン!
永遠輪転のフレームがダメージを受けた。装甲が破壊され、修復を行っている。今の音……周囲を確認する。
『はぁ、うざ……ククリはともかくナナミの雑魚火力じゃ、嫌がらせ程度にしかならないよ? けど、やっぱりあんた危険だわ。ワタシが回転する方向と逆の方向から射撃、しかもマントを避けて命中させる……集中の力ねぇ……気合とか根性論でどうにかされてるみたいでイラつく……』
う……委員長も達人みたいなことをしてる。ククリも攻撃をカウンターされても、そのダメージを回避して後隙を消してたし、みんな僕以外は達人なんだ。戦うために生まれて、戦い続けてきたっていうのは、本当のことなんだ。僕とフラウだけが、この戦いについていけていない、当然か、僕もフラウもククリと戦ったのが初めての戦闘で、あの戦いに勝ったのだって、ククリがポンコツで運良く倒せただけ、戦闘面で言えば完全に負けていた。攻撃でも防御でも、ちゃんと考えて行動しないと、僕とフラウは、きっとすぐに負けてしまう。
永遠輪転が受けた銃撃のダメージ、もう回復したのか。10秒ぐらいでダメージが完全回復……ダメージが通るなら、理論上、一発一発が弱い攻撃でも当て続ければ、永遠輪転を倒すことは可能だ。回復能力を上回る速度で、有効打を当て続ける。さっき僕たちは同時攻撃によって委員長の攻撃を永遠輪転にヒットさせることに成功した。これをずっと繰り返し続ければいい!
永遠輪転からすれば、英雄幻想と触否定速の攻撃は必ず無力化しないといけない、おそらく勝利先導の攻撃のみを受けるようにするはず……確かに勝利先導の攻撃力は低いみたいだけど、それも連続で当たり続ければ洒落にならないはず。なら僕と触否定速を起点として永遠輪転に攻撃を仕掛け、連携攻撃を絶やさないよう、仕掛け続ければいいんだ。
『──ククリ!』
『分かってる! ヤクモ、仕掛けるわよ!』
ククリは当然自分がどうすればいいのかを分かっていた。今度は僕が最初に永遠輪転に攻撃を仕掛ける。剣を現実化させ、英雄幻想に持たせる。剣撃と舞踏飾紐による同時攻撃を行う。その間にククリは空中で加速し、急降下攻撃を永遠輪転に仕掛ける。僕が剣を武器として選択したのは、一人で擬似的な連携攻撃を行うためだ。舞踏飾紐で攻撃するにはある程度相手に接近しなければならない。だから近い間合いで戦える剣を選択し、剣と飾紐の攻撃を別々の方向、角度で行った。おそらく、全ての攻撃を回転によって受け流すことはできないはずだ。勝利先導の銃撃を無効化できなかったように、どれかは直撃する。
『──偉い偉い、ちゃんと戦いの中で学んだことを活かしてる。流石は雷名くん、でもね? 別にワタシは防御だけじゃなく、攻撃だってできるんだよ?』
──フィィイイイイン!
──ガガンガガン!
勝利先導のライフルによる銃撃がある。僕が剣で弾いたのとは逆回転側に勝利先導が射撃した。今度は二発明中、勝利先導の方を見ると、勝利先導が3機いた。そうか、不完全現実化によるダミーを使って、どこから射撃したのか分かりづらくしたんだ。ダメージを与えた、でも僕たちに休む暇はない。このまま永遠輪転に仕掛け続ける!
──ガガガガン、ガガガガン!
いいぞ、連携攻撃を続けて、何回か、今のは凄い! 勝利先導の銃撃が6発も有効打になったぞ! 永遠輪転はかなりダメージを受けてる! 半壊とまではいかないけど、明らかに回復が追いついていないし、動きまで鈍くなってる! そりゃそうだ、ダメージを受ければ、機能不全は起こるものだ! 勝てる! 勝てる──
『──ッ、まさか!? 引いて! ヤクモ君、ククリ! これは罠よ!!』
『えっ!?』
『──流石はナナミ、気づかれちゃった? でもねぇ、もう遅いよ。ククリと雷名くんは手遅れになっちゃったぁ』
あ、あああッ!? そんな、嘘だろ? 深手を負っているはずの永遠輪転のダメージが完全回復した、それも一瞬で……
『確かにワタシはダメージを回復しても出力の低下は起こらない、隙も作らない。でもねぇ? やろうと思えばみんなみたいに、リスクを抱えてダメージを回復することだってできる。そしてそれはワタシの場合、超高速回復になる!! 馬鹿みたいな隙は生まれるけどねぇ!』
『隙が生まれる? な、なら──』
『──だから、ウチがおんねん。悪いなァ、ナナミィ! ウチの勝ち、貰ったァ!』
──ミリアの声!?
「──無垢なる法則、我が言葉に揺蕩い、流動し、平伏する。流れは無機を有機に、法則は命を持つ。我は世界盤上を支配する演算者、真理を解放する者──
──魔導自由砲戦型、
──
僕達の前に、オレンジ色の、ミリアの戦闘形態が現出した。
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