【第一部完結】【魔導鬼械xパープルアイズ】ロボのある異世界デスゲームの優勝賞品となってしまった僕、7人の女の子を救うためデスゲームを破壊する【ロボットxハーレム】
第2話:えーーーッ!? 幼馴染が巨大ロボだったなんて……
第2話:えーーーッ!? 幼馴染が巨大ロボだったなんて……
ラブデスゲーム開始まであと三日。僕はこのゲームをどうにかして止めたいと思ってる。できるかどうか分からないけど……僕だけがゲームの例外であること、それがゲームにどう作用するのか? それを確かめる必要があった。だから僕は、”やつら”のいるという聖王宮にやってきた。
聖王宮はパープルアイズで一番偉かった王様の住んでいた城で、廃墟になっていない数少ない建物だった。クリスタルのような建材で出来たトゲトゲの城だ。僕が城門でアルトゥアスに謁見を申し込むと、それはあっさりと許可された。
そして歩いて城内を進もうとした時、僕はちょっとした浮遊感を覚えた。気がつくとそこは城門付近ではなく、玉座のある綺羅びやかな大部屋だった。その部屋には玉座があり、アルトゥアスが胡座で座っていた。ピンク色の子供用靴下を履いた足をニギニギして、僕を興味深そうに見ていた。
「ヤクモン! いらっしゃーい。何々? あちしに聞きたいことがあるんだって?」
「ああ……僕はこのラブデスゲームにおいて例外的な存在、どの陣営に属す必要もなく、戦う必要もない。だけど、僕がこのゲームに干渉したらダメなのかどうか、それを確かめておきたかった」
「あはは! ゲームに干渉? ヤクモンが~!? 別にいいよ~、でもさぁ、君に何ができんの~? 人間の体で何ができるの? 人間て群れなきゃ何もできないじゃん、君主じゃないってことは、他の人間を駒として使えないってことなんだよぉ? 理解してるぅ?」
アルトゥアスは頭を指でつつき、僕に頭大丈夫か? 的な身振りでめっちゃ馬鹿にしてきた。
「でも、干渉してもいいんだよね? 僕が、このゲームを止めるために、ククリやミリア達の殺し合いを止めるために動いても、いいってことだよね?」
「だーから別に、いいっていってるじゃーん? はぁ、自分がゲームの景品だから、そう簡単に殺されないって、あんま調子に乗らないでよね? 確かに殺す気はないけど、殺さずにヤクモンの体を使って”遊ぶ”方法ならいくらでもあるんだよ?」
──ッ!? アルトゥアスに睨まれる。その瞬間に全身が固まった、緊張して、呼吸すら満足にできない。これは……プレッシャー? 物凄い圧力を感じた……分かってはいたことだけど、やっぱりこいつらは人間とはまるで違う存在なんだ。
「あーでも、アルトゥちゃん。彼女たちはヤクモくんのことが好きだから、彼とまともに戦えないんじゃない? 全力バトルじゃない戦いなんてつまんないし、やりづらいだろうから、彼女たち君主はヤクモくんを攻撃しても絶対に殺せない、そんな安全装置を設けたらどうかな? それで、ヤクモくんが既定値のダメージを受けたら、しばらく異空間に隔離、その間ゲームに干渉できない状態にするっていうのはどうかな?」
「それいいねぇ、エルトゥエラ! ヤクモンが彼女たちに排除されたら、隔離空間で映像をヤクモンに見せてあげよう! 自分の無力感を噛み締めてもらうの! あーそれと、ヤクモンは彼女達に絶対に殺されないけど、ヤクモンは普通に彼女たちを殺せるってよくない? 止めるための力加減を間違えちゃったら! 自分が守りたいと思った人を殺しちゃう! いいスリルっしょ? やっぱ、例外的な措置を認めるならそれぐらいのリスクはないとねっ!」
盛り上がるアルトゥアスとエルトゥエラ。二人の関心は僕にはない、関心があるのは……僕とククリ達7人があがき苦しむ姿、不愉快だ……
「でもでもアルトゥちゃん、無力なただの人間の、ヤクモくんが……戦うために生まれてきた彼女達を──”どうやったら殺せる”のかなぁ? できるかなぁ? アハっ! 楽しみねぇ~」
「ゲームを止めるッ! キリリッ! くぅ~、あっはは! 頑張って止めてね~?」
僕はアルトゥアスとエルトゥエラに言葉を返さず、聖王宮の玉座の間を去った。宮殿内の無駄に長い通路にさえ、今の僕はイライラしてしまう。だけど、あいつら、気になることを言っていた。戦うために生まれてきた彼女達、それって……ククリ達7君主のことだよね? ククリ達が戦うために生まれてきた? いったいどういうことなんだ? だけど、あいつらは僕がククリ達の相手にならないと思っているようだった……何か、僕が知らない秘密があるのか?
考えごとをしながら歩いていると、薄暗い図書室のような場所に迷い込んでしまった。というか……行きはアルトゥアスに転移させられたから、帰り道自体分からないんだった。
「お迷いのようですな。貴方様は異世界から転移でいらした方ですかな?」
「えっ!? あ、すみません。あの……あなたは?」
いきなり話しかけられたからびっくりした! 声のする方を見ると長い耳をした、そう、エルフみたいな感じのお爺さんがいた。でもそうだよな。よくよく考えたら、綺麗に保たれた宮殿内にあいつら以外の人がいないっていうのもおかしな話なんだ。
「ああ、申し遅れました。わたくしは……うん、ロングパレードと名乗りましょうか。その方がいい……わたくしはただここで人を待っているのです」
「人を……待ってる?」
「ええ、いつか帰ってくると、わたくしに約束してくれましたから。待っていたのはわたくしだけじゃありません。きっとあの方達のほうが、ずっと、ずっと待っていたことでしょう。彼は、わたくしにとっては兄のような存在でした、勝手にわたくし達の前から消えてしまって、恨んだこともありましたが……いざあの方の、希望が帰ってくるとなると、怒る気、起きませんでした」
「それは、その……なんていうか……その、ロングパレードさんにとって、その人はとても大事な人だったんですね」
「ええ、命を掛けても良いぐらいにね。わたくしはあのデスゲームに参加しないつもりです。不参加者は処刑される。だけど、それで構わない……十分長く生きたので、そんな老人が、若く未来のある生命を吸って生きるなど、わたくしのプライドが許さない」
ロングパレードさんは力ある、意志のこもった眼でそう言った。この人にどんな人生があったのかは知らないけれど、なんとなく、誇り高い人だと思った。
「あなたも、わたくしと同じく、譲れないプライドがあるのではありませんか? あなたはそのために、どこまでできますか? 彼女達を救うために、どこまでできますか?」
彼女たち……それってククリ達のこと? でもどうしてこの人が……ああ、そうか。僕ってアルトゥアス達に紹介されてたもんな。名前も顔も……映像に投影されてた。
「分かんないです。でも、みんなが傷つくのも、みんなが他の誰かを傷つけてしまうのも嫌です。これから始まるデスゲームだって、僕達が生きてきた世界からすれば想像もできないようなことが起こるはずですから。剣と魔法と、巨大ロボットのある世界……この宮殿を迷いながら歩いて、僕は憧れだった、非現実の巨大兵器を見ました。動かないようだったけど、大きなロボット達が、銅像のように並べられた通路があって……本当だったら、嬉しくて、はしゃいで、なんなら泣いていたはず。でも、僕がアレを見て実際に感じたのは恐怖でした」
「恐怖……ですか」
「はい、今でもカッコイイと思う。だけど、あれが実際に襲いかかってくるのを、リアルに想像してしまったら。僕は怖かった……知らないことだらけで、僕がここで何をできるのか? やっぱり分からない。怖い、怖いけど、僕は心の中で”それでも”と言えた。あの子達のために戦うと決められた。どうしてこんなに、僕の中ですんなり答えが出たのか分からない。だけど、僕がやらなきゃいけない気がしたんです」
「そうですか。いい顔です、なら戦いなさい。ゲーム開始まであと三日、昨日が所属陣営を決める期限でした。転移してきた者と、現地民はそれまでに選択をした。けれど、選択期限を過ぎた後に、この世界へ現れた者は──果たして、どう扱われるのでしょう? ゲームの例外は、あなただけではない。さぁ、お行きなさい。目覚めの時間です──約束は果たされた
──失われし時の牢獄よ。我が魔力の泉にて、鼓動、瞬き、喪失の罅を満たそう。完全の時は来たり、彼方からの来訪者、ここに刻もう、解放の導、ゲートリリース!!」
ロングパレードさんが呪文を唱え、空間が水色と白の光で満たされた。眩しくて何も見えない。
「──えっ、なに……?」
柔らかい感触が、僕の背中を抱いた。何も見えないその中で──
「──お待ちしていました。時の彼方から、あなたを! ──マイマスター!」
光の中で誰かが僕を抱きしめ──
──”マイマスター”と僕を呼んだ。
光が収まると、僕を女の子が抱いていた。銀の髪と金と青の眼、透き通るような白い肌と、すらりとした美しい体、薄手の服越しでもそれがわかった。
美少女だった。しかも巨乳だ。
──ペシっ。
「いてっ!?」
「今、胸部装甲にいやらしい視線を感じました。雰囲気が台無しです」
「い、いやらしくなんて見てないよ! ちょっと目に入っちゃっただけだって!」
ちょっと胸を見過ぎたら女の子に頭を叩かれた。女の子はほっぺを膨らませて怒っている。そのぷくーっとむくれるの、かわいいね……違う違う! いったいこれはどういうことなんだ? 異世界小説の知識から状況を考えるにこれは……この女の子がロングパレードさんに召喚されたってこと? でもマスターってどういうこと? それに僕を待ってたって……
「あれ? いない……ロングパレードさん……」
「彼なら、わたしが元いた空間に移動させました。彼の魔法を伝って、時の中に彼の記憶が見えましたから、死に場所は奪わせてもらいました。彼が死ぬにはまだ早い、さぁマイマスター。ご命令を」
「えっ、えっ?」
「ああ、自己紹介がまだでしたね。わたしはフラウ、マスターの願望を叶える使い魔のような者です。ですから、わたしに願いを言ってください」
使い魔? 願いを言えって……そんなの──願うことなんて決まってる。
「僕は人造神の馬鹿げたゲームを壊したい。あの子達を、僕と仲良くしてくれた、7人の君主達が生きる道を、そして、彼女達が殺さないで済む道を切り開きたい。それが僕の願い! フラウ、僕に協力して欲しい!」
「承りました、マイマスター。このフラウ、全身全霊を持って、あなた様の願いを叶えるため、戦うことを誓います」
流れで願ってしまったけど、大丈夫かな? 実はこの子が悪魔で、代償でなんか取られるとかあったりしないよね……? うう、ちょっと心配になってきた……
「状況は大体理解しています。彼の記憶を見ましたから。さぁ、まずは王宮を出て、活動拠点を決めましょう! マスターのお父様とお母様の所在地は把握していますか?」
「えっと多分、二人共ククリの陣営についたんじゃないかな? あ、そっか……僕が活動するにしても、家族の近くの方がいいよね」
僕とフラウは、ククリの支配地域【レッド・スピード】へと向かった。正直、移動だけで色々驚きがあった。聖王宮は僕が最初に転移した場所から近く、徒歩で行ったので知らなかったけど、この世界の長距離移動手段は、なんと竜だった。竜と言っても、列車が生き物になったような見た目だ。地上じゃなく空を飛ぶ乗り物で、正式には乗竜と言うらしい。
乗竜が大きく開いた口から乗り込むと、中は無重力空間のような感じで、移動中はみんな竜の中で浮遊している。乗り心地は意外と悪くなく、酔うこともなかった。ともかく僕とフラウは乗竜に乗って、ククリの支配地域【レッド・スピード】へやってきた。
僕がクラスのみんなと転移してきた場所は、見渡しても廃墟ばかりだったけど、この【レッド・スピード】に廃墟は見当たらなかった。いや、よく見ると……廃墟はあった。【レッド・スピード】を見渡す限りの赤に染め上げる、赤い建物、その下に建物の残骸のようなものが見えた。廃墟だったかどうかは分からないけど、元々あった建物を上から押しつぶすように、この赤い建物を乗せたってこと? なんていうか雑な仕事で、それだけでなんとなく、人造神達がやったんだろうなと察しがつく。
歩いてこの街? を見渡していると、赤い建物の中に、赤い魔導鬼械、ロボットが見えた。全長20mくらいかな? おそらく量産機かなんかのカラーリングを赤で統一したものだと思う。背部についた派手なスラスターが目を引く、スマートでカッコイイ機体だ。武器は銃かな? なんとなく射程の長いタイプの銃に見える。僕らのいた世界の狙撃銃に感じが似てるからそう思った。
自分たちの世界の狙撃銃に似ているからといって、似たような性能、方向性とは限らないんだけどね……だけど、見た感じ近接兵装は積んでいなくて、装甲も極限まで削ってあるように見えた。高機動で、敵を翻弄しながら中遠距離から敵を射撃して戦う感じか?
装甲を削った結果、どこまでの機動力を得られたのかは分からないけど、防御力は低そうだ。まぁ、魔法のある世界だから、そんな印象は簡単に覆してしまいそうではある。だけど、僕が気になったのはこの量産機達の状態だった。明らかに綺麗で、新品に見えた。
それが大量に……アルトゥアスが言っていたように、このパープルアイズがやつらに滅ぼされた世界なら、こんなにロボットを大量生産する余裕があるとは思えない。ということはやはり、この量産機達も……アルトゥアス達が用意したんだろう。
人造神は……この世界の住民のことを”敵”と認識していない。敵だと思うなら、こんな武器を渡したりしないし、逆に言えば、こういった魔導鬼械の量産機がいくらあったところで、やつらの脅威にはならないってこと……次元が違う……アルトゥアスがパソコンでロボットのイラストをコピー&ペーストしているようなイメージが頭に浮かんだ。実際そんな感じのことが、あいつらにはできてしまいそうなのが気に入らない。
僕は両親とククリを探すために、この街の人々に話を聞いてまわった。すると、すぐに目的の場所がわかった。ククリは僕の両親と自分の両親を特別な要塞で保護していた。僕がククリに会いたいと要塞前で頼むと、すぐにククリと会うことができた。その場所は司令室、ククリが元の世界で収集していたスニーカーが大量に飾られた部屋だった。
「ククリ、よかった。無事で……」
「無事も何も、まだ戦いが始まってないんだから当たり前でしょ?」
ククリ、なんかイライラしてるな。
「ヤクモ、その隣にいる巨乳は誰よ!」
「えっと、フラウって名前で、使い魔みたいな存在らしいよ?」
「使い魔ぁ? ……その割には、戦えるほどの力を持っていないみたいだけど?」
まぁ、実際フラウはただの女の子にしか見えないしなぁ。
「わたしのことは構いませんから。マイマスター、ククリに聞きたいことがあるのでは?」
「ああ、そうだった。父さんと母さんは? 二人はどこに? 会える?」
「……」
ククリは僕の問いに答えない、目をそらし、難しい顔をしている。
「ククリ?」
「うなあああ! そんな目でみるなぁ! しょうがないでしょ! ヤクモのパパとママも、あたしのパパとママも! 戦っちゃダメってうるさいんだもん! あたしは戦って、勝って、ヤクモと結婚するの!」
「ククリ、分かってるの? 戦って、勝つってことは……他の君主と、庇護下にある人達も、みんな殺すってことなんだよ? ミリアは、ククリとも仲が良かった。友達だったろ……!? なのに……」
おかしいよ。こんなの、やっぱりククリ達、君主に選ばれた彼女達は、この世界に来てからどこかおかしい気がする。正気じゃなくなっている。
「戦って殺すことなんて、ずっとやってきたよ。あたしもみんなも、戦って、敵を殺すために生まれてきた。戦うのをやめろなんて、意味わかんないこと言わないでよ!」
ククリが腕を大きく振るった。振るったその先にあった壁が爆発し、赤く光った。壁はボロボロと崩れ、外の風が部屋に入ってきた。
ククリの振るった腕は、赤くメタリックな、機械の腕になっていた。
「邪魔しないでヤクモ。他のみんなも、戦っちゃダメなんて……言う事聞かないよ。ほら……この腕、見たら分かるでしょ? 人間じゃない、ヤクモはそんなあたしを、力付くで止められる? やってみてよ! ねぇ!! あいつが言ってた、あたし達がどんなに本気で攻撃しても、ヤクモは絶対に死なない、倒せば、あたしを邪魔できなくなるって!! だから、あたしはッ! ヤクモを力でッ! 思い通りにできるよ?」
「マイマスター! 下がってください! 来ます──」
ククリの周囲から赤い稲妻が発生し、バチバチと音をたてて暴れる。雷はやがて竜巻のように回転し、ククリを包んだ。
『赫灼の機翼が、汝の双眸を焼き堕とし、闇へと誘う──光の軌跡を追う愚かさを、汝は知るだろう──
──高速機動狙撃型、
──
ククリが詠唱して、彼女を包んでいた赤い稲妻の竜巻は、部屋を、天井を破壊しながら大きく成長した。僕とフラウはその風圧に大きく吹き飛ばされながらも、その嵐を見守っていた。
赤き稲妻の嵐が、巨人を覆えるほどの大きさとなった時、嵐は消えた。
嵐の消えたその場所に、背に大きな機翼を伸ばす、赤き機械の巨人がいた。
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