【第一部完結】【魔導鬼械xパープルアイズ】ロボのある異世界デスゲームの優勝賞品となってしまった僕、7人の女の子を救うためデスゲームを破壊する【ロボットxハーレム】

太黒愛釈

第1話:えっ!? 僕が優勝賞品なんですか!?



「うら~! 起きろヤクモぉ!」



「うわぁぁっ!?」



 痛~~、何かが僕の上に覆いかぶさってきた。人の、よく知った重さ。僕の上にいるのはククリか……こう毎朝、寝床にダイブして起こされると、そのうちどっかアザができそうだ……



「ねぇククリ、もうこういうのやめようよ。僕達もう高校生なんだよ? 質量が子供の頃とは違うんだ。物理的に危ないよ~」



「む~! 質量が大きいって、ヤクモはあたしが太ったって言いたいの!?」



「そ、そんなことないよ。ただ体が大人になったからその……」



 筒宮つつみやククリ。僕、雷名らいみょうヤクモの幼馴染で、昔からいつも一緒にいる。赤い髪で元気一杯、おっぱいは小さい。家は隣で、朝方こうして窓から僕の部屋に侵入しては起こしに来る。昔からこうなので、父さんと母さんはもう慣れで気にしなくなっている。それどころか家の鍵までククリに渡している。冷静に考えると滅茶苦茶だ……



 中学から高校になる時、ククリは泣いていた。自分は頭が悪いから僕と同じ高校にいけないからって。だけどククリは運動神経抜群で、スポーツ推薦で僕と同じ高校、紫猫しびょう高校に入学した。けど、ククリはスポーツ推薦の仕組みをよく理解していなかったらしく、スポーツ推薦の期限が切れた段階で紫猫高校に話を通したらしい。だけど運動神経が良く、オリンピック選手確実と言われるレベルのククリを逃す手はなかったのか、色々裏で動きがあって、学校が強引に、ククリが実はスポーツ推薦で受かっていた……という事にしたらしい。



それいいのかな? って正直思いはしたけど、また同じ学校に通うことができてホッとした自分がいた。中学の同級生は何人かいるけれど、仲が良かったのはククリ以外では二人ぐらいだったから……



「二人共ご飯よ~」



 母さんの呼ぶ声がする。僕たちは朝ご飯を食べて、登校した。



◆◆◆



「あ、雷名くん……えへへ、へ……アレ、機動王シグルス見た?」



「見たよ! 鎌霧かまぎりさんの予想通り、やっぱセシルは裏切り者だったんだねぇ。どうして分かったの?」



 登校して教室に入ると、鎌霧さんに話しかけられた。鎌霧かまぎりロミィ、僕と同じクラスで、中学からの同級生、仲が良かった二人のうち一人。ボクとはオタク仲間で、女の子だけど僕が好きなロボットアニメのことを、他のどの男子よりも濃いレベルで話すことができる。濃い紫の前髪が長くて、目がほとんど隠れている。おどおどしていて、大人しい印象を受けるけど、実際僕以外と話す時はほとんど無の表情か、クールな感じだ。ちなみにおっぱいは大きい。



「えっとねぇ、あの子が使ってた銃が途中で変わったでしょ? 数コマだけ型式番号が映ってたんだけど、調べたら、敵の規格と同じだったんだぁ。だから銃が変わったのは、敵であることを隠すためだったんだと思う」



「す、すごい! 流石鎌霧さんだ! でもそっか、だからプラモのパーツが敵の機体と一部換装可能だったんだ。単に金型を流用したかっただけじゃなかったんだ」



「え? それは多分あってるんじゃぁ……企画だっておもちゃから始まってるだろうし、セシルの乗ってるアラゴナイトは他の機体よりギミック少ないし、見た目も地味だから……コスト削減のしわ寄せを食らったように……見えるかも」



「す、すごすぎる! そこまでわかるんだぁ!!」



 僕は思わず鎌霧さんの手を両手で握り、称えた。



 鎌霧さんは、本当は特待生レベルで賢いんだけど、中学の頃ちょっと不登校の時があって、それで特待生として入学できなかった。まぁ特待生じゃないからこそ、僕と同じクラスになったわけで、それで良かったと、僕は思ったりした。



「オタク君達、そろそろ授業が始まるわよ。特にヤクモ君、君は他の異常者達にも狙われてるんだから、振る舞いには気をつけた方がいいよ? ほら、後ろでククリとミリアがロミィを睨んでる」



「えぇ? 委員長、振る舞いに気をつけるって……僕、何か変なことしたかな?」



 よく分からない釘刺しをしたのは、化影かかげナナミさん。通称委員長、本当は委員長でもなんでもないんだけど、クールで真面目で、誰からも頼られる彼女はみんなからそう呼ばれている。水色の長い髪とキリッとしたクールな顔つき、長身でスラっとしている。おっぱいは小さい。彼女も特待生であるべき優秀な生徒なはずなんだけど、辞退したらしい。彼女とも同じ中学だったけど、仲が良いわけではなかった。仲が良かったもう一人は、委員長がさっき呼んだミリアだ。



「やだなぁ、委員長は。あはは、睨むだなんて……ホラ、ウチの顔見てみ? 可愛い笑顔っしょ? ね~ククリ? それに、人のことを異常者扱いする権利、自分にあんの?」



 針杖しんじょうミリア、オレンジ色のボブヘアーで八重歯が特徴的な女子。地頭が良いタイプで、なんでもすぐに習得する。今までやったこともなかったカードゲームの大会に気軽に参加して優勝したり、街の将棋大会からボードゲーム大会、それらもロクにやったこともないはずなのに、あっさり優勝した。多分、天才なんだと思うけど、本人はそれを全く活かそうとしない。ちなみにおっぱいは少し大きいくらいだ。彼女も特待生であるべき優秀な生徒で……



あれ? なんか本来特待生であるべき子……このクラスに異常にいない? よくよく考えたら……スポーツ推薦でうちに入ったはずのククリが、なんで普通科のクラスにいるんだろう? スポーツクラスだってあるのに……これも特例ってやつなのかな?



「ま、あえて否定するつもりはないけど……迷惑をかけてまで、我を通そうとは思わないわ。本当に相手を思ってるなら、そうするべきよ」



 あれ? なんか委員長とミリアがギスギスし始めた……なんで?



「みんな~、授業の時間だよ~~!」



 テンションの高い声が教室に響く。真城先生、今日はやけに声が高い──



 ──え? この人っていうか……この子誰?



 声のする方を向くと、赤い目で黒髪ギザっ歯な、小さな女の子がいた。小学生ぐらい……? だけどおっぱいは意外とある。何? どういうこと?



「今日の授業はぁ~、異世界転移だよ! まぁ、”今日”だけで終わる話じゃないし、なんならこの授業はぁ、”街”ごと受けてもらうけどね!」



 異世界……転移? いったいな──



 そこで僕の視界は真っ暗になった。黒い球状の何かに僕達は呑み込まれて、意識を失った。



 目が覚めると、そこは紫色の雲と、青い月の浮かぶ、廃墟の広がる世界だった。



『やぁ、どもども! ここが実習地の異世界、パープルアイズだよぉ~! みんなのいた世界と違って、剣と魔法と魔導鬼械オーガマトンのあるファンタジー世界だ! みんなにはあるゲームに強制参加してもらうよ~ん!』



 空、廃墟の壁、いろんな場所に映像が投影された。その映像に映るのはさっき僕達の教室に入ってきた謎の小さな女の子だった。映像には女の子だけでなく、気弱そうなおっぱいの大きい女性と、無表情の女の子(おっぱいは無、ほとんど存在しない)がいた。突然の出来事に僕も、クラスのみんなも困惑していた。あ! そうか……みんな同じ所に転移? したんだ。よかったぁ~……良かったのか? 良くない気がしてきた。なんだか、この女の子からキナ臭さを感じるし……



 それにしても剣と魔法のある世界……か。魔導鬼械オーガマトン、聞いたこともない単語だけど、なぜかその意味がなんとなく理解できてしまう。その意味は魔法の力で動く機械人形。戦うための兵器だ。そもそも、あの謎の女の子も明らかに日本語じゃない言語で話しているはずなのに、それが理解できる。まるで日本語で語りかけられているかのように錯覚する。テレパシーのようなものなのかな?



『こいつを見てくれ! なんだと思う~?』



 謎の女の子はそう言ってハート型の時計のような装置を、映像越しに見せた。なんだろうあれ……ディティールが凝っていて、もしあれが飾りでなく、本当に精密な機械だとするなら、いったいどんな機能があるんだろうか? 時計のような見た目だけど、それだけってことはないと思う。



『これはね? 永遠の愛、エターナルラブだよ! このゲームの勝利者に与えられる景品なんだぁ~! これには自分の望む、幸福な世界を創造する力があるの。つまり新世界創造装置ってわけ。へへーん、凄いでしょ?』



 謎の女の子の言葉で、あたりが騒がしくなる。ドッキリや夢と疑ったり、イカれてると嘆く人がいた。まぁ、そうだよね……仮に本当に世界を創造する装置があったとして、あんなに小さいわけがないし……



『あ~、疑ったでしょ! 次疑ったらね! 殺すからね! じゃゲーム説明するね。その名もラブデスゲーム! 7人の女の子達を君主とし、それぞれ7つの陣営に分かれて殺し合いをしてもらうよ! 紫猫町の人も、パープルアイズの現地民も、ゲームには強制参加。優勝した君主の女の子は愛する人、雷名ヤクモくんの永遠の愛を手に入れ、新世界へ旅立つことができるのです! でもでも、エターナルラブを手に入れられるのは一人だけ、敗北者は死、あるのみ。もちろん? 敗北者の陣営に属したお馬鹿さん達も死にまぁす! 生き残りたかったら、ちゃんとした君主を選ばないとね!』



「え? ぼ、僕? なんで? どういうこと?」



「ヤクモは特別扱いかよ……」



「7人の女の子って誰よ……」



 また周りが騒がしくなる。マジで……意味不明だ。僕なんてなんの変哲もない、ただのロボット好きのオタク少年なのに……異世界系の小説は読んだりするけど、これ……全然嬉しくないタイプのやつだ……



「っけ、バカバカしいぜ! イカれてんのかよ、あのガキ」



 クラスの不良っぽい男子がそう言った瞬間──



 ──パァン。



 その男子の頭が破裂した。悲鳴が響く、男子も女子も、殆どの人が動揺し、怯えた。



 だけど、数人、そうじゃない人がいた。



 ククリ、鎌霧さん、委員長、ミリア。四人は、僕を見ていた。狂気を感じるほどに真っ直ぐに、僕を見ていた。クラスの男子の頭が破裂しても、まるで動じていない。



『だーから言ったでしょ? 次疑ったら殺すって、あちしは我慢するの好きじゃないの。あ! そっかぁ! 自己紹介がまだだったから、疑う人がいたのかも! あちしはドヴォルザークからやってきた侵略者! 人造神、アルトゥアス・ネージュ。このパープルアイズはあちし達に滅ぼされちゃった世界なんだ~。勝者が敗北者を好きなようにするのは当たり前でしょ? ちなみにぃ、つまんないゲーム展開したら、みんなが元いた世界も滅ぼすからよろしくね!』



 あの時、不良の男子の頭が破裂した時、破裂した音は一つじゃなかった。沢山の音が、同時に鳴った。それはつまり、あの人造神によって、沢山の人が同時に殺されたってことで……僕達が知らない領域の力を、あいつは持っているんだ……



『じゃ、7人の女の子を紹介するね! 音手おとでリョウコちゃん! 針杖しんじょうミリアちゃん! 盾無たてなしイツカちゃん! 鎌霧かまぎりロミィちゃん! 化影かかげナナミちゃん! 鎖刀さとうヤコちゃん! 筒宮つつみやククリちゃん! どの女の子の味方をするかは3日後までに決めてね! 相談自由、情報収集自由! なんなら、あちしに質問してもいいよ? 面白くない質問だったら殺すけどね~』



 投影された映像に君主の7人の姿が表示された。キラキラとポップな、妙に凝った表示、殺し合いをさせるには不釣り合いな明るさだった。7人共、僕の知り合いだった。委員長以外はみんな僕と仲が良かった人だ。人造神、アルトゥアスが言ったことが事実なら……僕は景品の一つだ。ラブデスゲームの勝利者は僕と一緒に新世界へ旅立つと言っていた。僕だけが、ゲームの盤上にはいない、例外の存在だった。



『ゲーム開始は一週間後、それまではみんな仲良くね? 殺し合いはラブデスゲームが開始されてから!』



『あぁ、みなさん。慣れない異世界の土地で大変だと思うから、しばらくは食べ物と飲み物は、わたしが転送しますねぇ? みなさんの世界の地球から転送してるので、味は大丈夫だと思います』



 アルトゥアスの隣にいる気の弱そうな巨乳の女性が喋った。食べ物と飲み物を用意するって言ってるけど大丈夫なのかな? 転送って……食べ物以外も転送してしまわないか心配だ……このゲームの被害者が増えることになる。



『おいエルトゥエラ、ちゃんと代わりの質量は送ったか? バランスを保たないとあっちの世界は自壊するぞ? うちらのいるここと違って、無理やり安定させる奴がいないんだから』



『ああ! ごめん、イルトゥインちゃん、代わりの質量送るの忘れちゃった……えへへ、でもいいよね。多分あっちの世界も滅びることになるんだし』



『やれやれ、仕方ない。ボクがバランスをとっておく。余計なことは控えろよ?』



 気弱そうな巨乳の女性がエルトゥエラ、無表情の無乳の女の子がイルトゥイン。アルトゥアスと似たような名前だし、なんとなく友達のような関係性に見えるから。こいつらもアルトゥアスと同じく人造神なのかな? でもこのちょっとした奴らの会話から分かるのは、僕らは奴らからすれば、力のない、ちっぽけな存在ってこと。あいつらは……僕らの命を使って遊ぶつもりなんだ。



「ねぇ、みんな……みんなは、こんな殺し合いのゲームなんてしないよね?」



 僕は、僕を見る四人に問いかけた。



「勝つわ。あたしは勝ってヤクモと結婚して、幸せに暮らすの」



「ククリ……?」



「ワタシには、へへ、雷名くんしかいないんだよ? だから……ね? 戦うよ?」



「鎌霧……さん?」



「ウチはゲーム得意やし、負ける気せーへんな~? だから命をかけるのって、他の奴だけでしょ? こんな形で戦うことになるなんて、思っとらんかったけど、いつかは戦う運命やった、ヤクモはウチのものになる運命なんよ」



「み、ミリア!? えっ!?」



 どういうこと!?



「私は興味ないわ。でも、ゲームを壊すにしても、その方法を考える時間が必要でしょ……? 私はゲームの展開を遅らせて、最後には壊す。そして、少しでも多くの人を救うわ」



「委員長! 良かった、正気の人がいて!」



「正気じゃない……よ」



「え?」



「正気なんかじゃない。私は……愚か者だから……」



◆◆◆



 それから少し経って、アルトゥアス達は四人を迎えに来た。君主の7人にはそれぞれ支配地域が与えられ、みんなそれぞれの支配地域に移動したらしい。四人を迎えに来た時、アルトゥアス達は瞬間移動? 転移? をしていた。クラスのみんなも、すでに所属陣営を決めた人は一緒に転移した。



アルトゥアスが教室で言った通り、この世界、パープルアイズには僕の住む町、紫猫町の住民全てが転移させられていた。正確に言えば、紫猫町外に住んでた人もいる。たまたまその日紫猫にいた人や、紫猫に働きに来てる人も巻き込まれた。老若男女、すべての人が、このラブデスゲームに巻き込まれた。戦う力のない者達も戦わなければいけない。なぜならば、アルトゥアス達がつまらないと感じたら戦わなくとも殺されるから。



 こうして僕たちの異世界生活が始まった。


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