第五節:国会議事堂の異変


 内閣総理大臣の執務室は静かな緊張感に包まれている。

 国会の日程に忙殺される中、突如として異変が起きたのだ。

 重要な通信網が突如として断絶し、政府関係者たちは国内外の連絡や情報交換が出来なくなっていた。

 総理大臣と数人の職員達が神妙な面持ちでその室内に佇んでいる。


 その少し前、各国大臣の執務室や関係省庁の会議室で、関係者たちは重要な会議を行っていた。


 防衛省の佐藤直人防衛大臣もその一人である。


 彼も又、国会議事堂内の会議室で会議中であった。


 その会議中に突然、通信機器が急に騒がしく音を立て、画面には異常な文字や模様が乱れて表示され始めたのだ。

 会議室の中で、政府職員達は驚き混乱し、不安が空気を支配する。


「どういうことだ? ハッキングされてるのか?」

 と、一人の政府職員が叫んだ。


 彼の声が部屋に響き渡り、他の政府職員達も不安げな表情で周囲を見回ししている。

 通信機器の画面には正体不明の文字列が乱れて表示され、通信が途切れたり再接続されたりを繰り返す。

 室内回線の電話もその影響を受けていた。


 この異常事態にいち早く動いたのは佐藤防衛大臣だった。

 即座に立ち上がり、政府職員達に静粛を求める。


 彼は深い溜息をついた後、冷静な声で指示を出す。


「原因の解らない事態が起きているが、今は冷静に行動しよう。技術チームに原因を調査させ、一刻も早く通信、電子機器の復旧を図る。同時に、情報を集めて今後の対策を練る必要がある」

 そう言うと佐藤防衛大臣は椅子に座り直し、何かを考えている様子だった。


 政府関係者たちは大臣の指示に従い、行動を開始する。

 技術チームは調査に取り掛かり通信の乱れの原因を探す。

 情報部門では国内外の情報収集をするための手段を模索していた。

 会議室は緊張感に包まれたまま、政府職員達は危機に対処するための準備を急ピッチで進めている。


 数十分間の調査が続く中、政府職員達は異変の原因を突き止めようと懸命に努力していた。

 しかし原因が解らず通信も復旧せず事態は切迫していく。


 そんな中、近くの会議室や議員の所に状況を確認しに行ってた職員が帰って来る。


「大臣ご報告します。国会議事堂内の電子機器、通信は何処も同じ様です……外部との連絡もつきません……」

 政府職員はそう言い大臣の答えを待っている。


 何かが奇怪しい、これは一刻の猶予も無いかもしれない、ここは安全なのか? 総理は無事か? 街の様子は?

 そう感じた佐藤防衛大臣は、周囲の状況の確認のために国会議事堂の展望デッキが使えるのではないかと考えた。

 彼は会議室にいる職員達に向かって、冷静な声で指示を出す。


「政務官とその秘書は国会議事堂内の展望デッキに行って、外の様子を確認し、異変の状況を報告してくれ。

 電子機器や通信手段が乱れている中、いち早く現状を知るには周囲の状況からの情報が必要だ。私は総理大臣の所に行く」

 佐藤防衛大臣はそ言うと防衛省にも職員三人を向かわせる指示を出した。


 政府職員達は、防衛大臣の指示を受けて迅速に行動に移す。


 彼らは展望デッキと駐車場に別れて向かう。

  

 そんな最中、国会議事堂内やその周辺にも青白い光や奇妙な模様が広がっていた。


 それは、通路を歩く佐藤防衛大臣の目にも入ってくる。

「何だ、この模様は……どうやら、とてつもなく異常な事が起こっている様だな……」

 防衛大臣の不安は確信に変わり、足早に総理大臣執務室に向かうのだった。

 

 駐車場に着いた職員達は急ぎ車に乗り込んだ。

「霧か? 視界が悪くなって来てるな」

 職員の一人がそう言ってエンジンをかける。

「急ごう」

 助手席に乗る職員が呟きを、二人の職員は頷き防衛省に向かって行った。


 その頃、展望デッキには、他の議員や大臣達の政府職員も数人来ていて、一様に動揺を隠せずにいる。

 そして、展望デッキに向かった三人は霞に覆われた街に、異様な形をした何かを目撃する事になる。


「なんだ……あれは……」

 そう言い防衛政務官は驚愕し見ている方向を指している。


「霧でしょうか? はっきりと見ませんが……発砲音? 爆発音? が聞こえる様な……」

 デッキから目を凝らし耳を澄ましながら、防衛政務官秘書官は答える。


「ともかく、これは異常事態です、急いで大臣に報告をしましょう」

 もう一人の防衛政務官秘書官は二人にそう言い顔を強ばらせている。


「私は、内閣総理大臣執務室に行く、君たちは関係各所に伝えてくれ」

 政務官は別行動する旨を二人に言い総理大臣執務室に向かおうとする。


「解りました」

 二人は頷き答え足早にその場を後にする。


 政務官は決意を込めて展望デッキを後にした。

 急いで内閣総理大臣執務室へ向かいこの異様な事態を一刻も早く伝えなければ。

 そして早急に対象しなければ大変な事になる、そう感じていた。

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