第二節:研究所内の異形
研究所内の通路は、明かりが消え昼間であるはずが深夜のような暗闇に包まれていた。
研究員の一人エイダンがポケットからペンライト取り出し明かりを点ける。
それを見て各々も手持ちのライトを点け始めた。
「今はこのライト位しかないけど仕方ない、制御室に向かおう……」
緊張した面持ちでエイダンはそう言いながら周囲を照らしている。
「エイダン、頼りにしてるわ」
そう言うとルイーズは怯えながら、エイダンの後に続く。
研究所内は混乱し、異次元の影響か壁には謎の模様が浮かび上がり、足元には研究所の備品が乱雑に散らばっている。
「ここは荒れているな。気を付けて進もう……」
エイダンは足元のガラスを照らしながら言った。
「こんな事になるなんて……信じられないわ」
そう言いながらルイーズは足元のガラスを避けている。
「落ち着いて行動しましょう」
アンナはそう言って床に散らばるガラスを避けて二人の後ろついて行く。
「酷い有り様だな……早く制御室に向かわないと……」
眉間に皺を寄せ周囲を見渡しながら藤原が呟いた。
「我々の研究の失敗の影響がこんな事態を招いたとは……」
イブラヒムはそう言いながら背後照らしながらついて来ている。
研究者たちは各々ライトを手に持ち、研究所内の通路を進んで行く。
通路の先には混沌とした不気味な気配が漂っている。
研究所内の十字路に差し掛かろうとした時、エイダンが不意に足を止める。
「静かに、こっちに何かいるみたいだ……」
声を潜めながら止まるように促したエイダンの顔は緊迫している。
「見た事もない生物……」
エイダンの照ら出したものに、ルイーズは恐怖しながら呟いた。
突如、暗闇の中から研究員達の前に異形の化け物が姿を現していた。
その姿は人の姿に似ているが、全身は闇のような影に包まれており、赤く光る目だけが恐ろしい輝きを放っている。
異形の化け物は獰猛な低い唸り声を上げながら、ゆっくり研究員たちに向かって迫って来た。
「な、何なの……こんな存在、ありえないわ……」
アンナは言葉を詰まらせながら、ライトに照された異形の化け物に戦慄し後ずさる。
「落ち着いて……この化け物から離れよう……」
困惑した表情でで藤原はそう口にしながら、じわりと後退しようとしている。
「私たちの実験の結果じゃないと祈りたいのだが……」
そう言いうとイブラヒムは後方を照しながらも、前方の異形の化け物に固唾を呑んで立ち竦んでしまった。
研究者たちは恐怖に怯えながらも、制御室への道を塞ぐ異形の化け物、「影の異形(シャドウビースト)」たちと対峙していた。
闇の中から現れ、黒い霧状の体を持つ彼らは、手足が鋭く尖っており、壁や天井を自在に移動している。
緊張が研究員達の鼓動を高鳴らせる中、エイダンが不安ながらも覚悟を決めた。
持ってるライトで、ゆっくり通路を照らし、シャドウビーストたちの不気味な姿を浮かび上がらせる。
彼らは光を嫌がり、体を引っ込めるようにして後退して行く。
その反応に気づいた研究員達は、光明を感じながらも警戒しつつ進もうとしている。
「エイダン、そのライトの光を彼らは嫌がっているようだわ……」
ルイーズは震えつつもエイダンに伝えた。
「ああ、みたいだな。奴らは光を嫌うみたいだ」
確信を持ってエイダンがルイーズ答える。
「ライトを使って、あれらを退ける事が出来るなら何とか進めそうだな」
藤原は一息つき、落ち着きを払いながら言った。
「ライトで我々の身を守りましょう」
警戒しつつ周囲を照しながらアンナが提案し皆がその意見に頷いた。
「アッラーフ アクバル」
後ろを照しながらもイブラヒムは祈りを唱えている。
シャドウビースト達は光を避けるようにして、手足を引っ込めながら後退している。
研究員達はほっとしながらもその反応に気を引き締める。
彼らの体がライトの光で露出し、その恐ろしい姿がより一層際立っていた。
「進もう。光を当てれば、彼らを後退させられるはずだ」
そう言うとエイダンは緊張した面持ちで、前方を照らしながら道を作り進んで行く。
「このまま進んで、制御室にたどり着きましょう……」
落ち着きを取り戻しつつルイーズは呟く。
「化け物達が後ずさっている。確か制御室はこの先のはず」
冷静さを保とうとしながら、藤原は化け物が後ずさる光景を見て言った。
「制御室へ向かいましょう」
アンナは周囲を警戒しながらもそう言いながらついて行く。
「アッラーフ アクバル、神よ……我らにどうかご加護を」
後ろを照らし半身のイブラヒムは、神に祈ってついて来ている。
ライトの光がシャドウビーストたちを押し退け、研究員達は恐怖しながらも進んだ。
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