第68話 そうめん

まほろ達は空の旅を終えて、あずきの祖父母の家にやって来た。


「おお、よう来たなぁ。あずきも、お友達も、ゆっくりしていきなさい」


「お昼は食べたのかい? そうめんあるけど湯掻こうかねえ」


家に入りると、優しそうなおじいちゃんとおばあちゃんが笑顔で迎えてくれた。


「こんにちは! 今日からしばらくよろしくお願いします!」


まほろ達も挨拶をする中で、はやてが緊張した様子で頭を下げた。


「元気なお嬢さんね。そうめん2束くらい食べるかしら?」


「そうめんだから沢山湯掻いてみんなでつついたらいいじゃろ」


「そうですねぇ。じゃあ、湯掻いてきますね」


おばあちゃんは、奥にそうめんを湯掻きに行った。


残ったおじいちゃんにリビングまで案内してくれる。


「好きな所に座るといい」


おじいちゃんは、そう言って、自分の指定席であろう違う座布団が置かれた場所に座った。


まほろ達は、並んでおじいちゃんの迎えに座った。


「まだ海に入るには早いけど、ゆっくりして行くといい」


「まほろちゃんがバーベキューを楽しみにしてるのよ」


「そうか。なら、明日は沢山エビとか貝を取ってこないとな」


「「はい!」」


「それじゃ、一緒に取りに行こうか」


「「はい!」」


おじいちゃんの言葉にまほろとはやてが元気に返事をするのを、あずきが面白そうに笑っている。


「できましたよ。あずきちゃん、器出してくれる?」


「うん」


「あ、私達も手伝います」


「なに運んだらええですか?」


あずきが器を出しに行き、まほろは麺つゆの入った容器を、はやては薬味を机まで持ってくる。


「このそうめんめっちゃ美味しいです!」


「おばあさんのそうめんは歯触りは勿論出汁も最高だからな」


おじいちゃんが、はやての言葉におばあちゃんのそうめんをベタ褒めする。


「鰹と椎茸出汁のつゆですよ。そうめんを湯掻くときのコツはね、沸騰したお湯の火を止めてからそうめんを入れるのよ。誰でもできますよ」


おばあちゃんは、おじいちゃんの言葉に頬を赤くしながら誰でもできると言って否定した。


「そんな事ないですよ。普段あんまりそうめんって食べへんけど、これならどんだけでもたべれます!」


「あらあら、まだ湯掻いたらあるから沢山食べてね」


「はい!」


「うぃ!」


はやての言葉に嬉しそうに笑うおばあちゃんの横で、まほろが突然声にならない悲鳴をあげた。


「どうしたの? まほろちゃん」


「わさびがぁぁああ」


あずきが心配の声をかけるが、まほろは涙を目にいっぱいためて鼻をおさえた。


そのまほろの行動に、食卓は笑いに包まれる。


まほろ達の長期休みは、のんびりとした時間が過ぎていくのであった。




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