第61話 家族の反応
シラハがまほろのいる中東学園の里から自分の里に、家に帰って来てすぐに妻のいざなに声をかけた。
自分の目で見てきたまほろの話をする為であった。
本当はいざなも一緒に連れていきたかったが、初等学校に火曜息子の面倒がある為仕方なかった。
「いざな、まほろがな、凄かったよ」
語彙力が乏しくなったのは、思い出して目頭が熱くなって話すと涙が出そうになったからであった。
「それだけじゃ分からないわよ。立ってないで座ったらどうですか」
「そうだな」
シラハといざなは、向かい合わせに座って、シラハがまほろの活躍を話し、その話をいざなは頷きながら聞いていた。
「あの子、凄いわね。私の心配なんて要らなかったみたい」
「そんな事はないさ。まほろも分かってくれてるさ」
夢を応援するのも親だが、諌めるのも親だ。
現実味のない事なら、道を正してあげる必要もある。
しかし子とは、時にはとんでもない所から親の想像を越えていく事もある。今回のまほろのように。
「見たかったわ、私も。あの子が飛ぶ所を」
「次にあった時に祝ってやればいいさ。認めてやればいい。あの子の夢の《魔女》のことを」
「ええ」
シラハといざなはこの後、まほろの活躍に乾杯するのであった。
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まほろの弟のシノブはある雑誌を学校で見た。
それは、姉の記事が載っている記事であった。
小さな記事であったが、不可能とされている空を飛ぶ忍術を使ったという記事であった。
シノブはその記事に衝撃を受けた。
周りから、落ちこぼれの姉のようにはならないようにと言って言われてきたからだ。
父や母の前で言うと、空気が悪くなるので言わないようにしているが、先生や周りの人からの評価が良くないのが姉である。
なので、贔屓目なしに生徒を評価しているはずの先生に、雑誌をもって聞きに行った。
先生は、シノブが持ってきた雑誌の記事に目を通すと溜息を吐いた。
「シノブ君、この雑誌はめちゃくちゃな記事を書くので有名な雑誌です。真実もありますが、噂話のネタ程度に思っておいた方がいいです。 そもそも、落ちこぼれのお姉さんが今まで伝説と言われた忍者達が挑戦して出来なかった事をできると思いますか?」
「それは……」
「大方一緒に写っている小鳥遊あずきさんの記事を盛り上げる為のフェイクニュースでしょう。あずきさんは人気のアイドルですから」
シノブは、先生の話に納得した。
確かに、教科書に載るほど不可能とされている忍術の一つである飛行忍術ができるはずはないのだ。
「そんな記事に踊らされずに精進しなさい。あなたはこの里を背負う里長になるのだから。その為に私は精一杯教えます。 あなたのお姉さんは言う事を聞かずに箒を振り回していましたが、ああなってはいけませんよ?」
「はい。精進いたします!」
シノブは礼をして職員室を退出する。
シノブは、教師の指導の元、姉の事を反面教師にどんどん成長していくのであった。
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