第60話 ゴシップ記事
「ねえ、面白い記事が出てるよ」
ある学校の女子生徒が同級生の男子生徒に、今週発売の週刊誌を見せるように声をかけた。
男子生徒は、女子生徒から渡された雑誌の記事を読むと、内容を鼻で笑った。
「バカバカしいフェイクニュースだな。話を盛りすぎてまるでお笑いだ。これだからゴシップ雑誌は好かん」
男子生徒は週刊誌を女子生徒に返すと、トレーニングの機械に座って鍛え始めた。
「えー、本当なら夢があるじゃない。絶対に不可能だって言われてた飛行忍術よ?」
「もしそれが実現したとしても学生大会の、それも一年生の試合で起こるわけないだろう? 観客が少なかったのをいい事に、面白おかしく書くのがそう言った記事のやり方さ。 記事を見た人間が、まるで見て来たように話したりするから大勢が見た真実だと錯覚しているだけだ」
「まあ、そうなんでしょうけど、真面目すぎない? モテないわよ?」
女子生徒は男子生徒の言葉を肯定して雑誌を丸めてゴミ箱に放り投げた。
面白いと友人に聞いて買った雑誌であったが、気になった記事は読み落としてしまうほど小さな記事であった。
しかも内容はまるで夢物語のように、一年生で特殊魔法を使いこなし、大規模魔法を使い、挙げ句の果てには不可能とされている空を飛ぶ忍術だ。
作り話にしてももっとやりようがあっただろうと思ってしまう。
まあ、あからさま作り話にする事で話題を提供したのかもしれないが。
「別にモテたくてこの話をしている訳じゃない」
「はぁ、そういうところよ? ……でも、この記事が本当だったら秋の学生大会はどうなると思う、テンマ?」
女子生徒の質問に、テンマと呼ばれた男子生徒はトレーニングの手を止めた。
「そんな事があれば、文字通り手も足も出ないだろうな。どんなに鍛えても、空を飛ばれたら手も武器も届かない。距離が離れれば離れるほど、忍術は避けやすくなるし、威力も下がるだろ?」
「そうね。チャクラの固定を完璧にできる生徒はいないもの。一流の忍者でも無理じゃないかしら?」
忍術は、体内に保有するチャクラを使って超常の現象を起こす技である。
その技は、時間が経つ程にチャクラが消費されて忍術を維持できない。
この持続時間を決めるのはチャクラの固定力と言われ、忍術にチャクラを閉じ込める力とされている。
理論上、完璧にチャクラを閉じ込めた忍術は消えることはない。
……らしい
「だが、そんなことはありえない。ほら、いつまでもバカな話をしてないでトレーニングだ。俺達の学生大会は来週なんだからな。それを勝ち抜かなければ、秋の大会もない」
「分かってるわよ。ほんと、真面目よね。テンマは」
女子生徒は、テンマに催促されて刀を持つと、奥にある訓練所に向かっていった。
部屋で1人になったテンマは、ワンセットトレーニングを終えてインターバルタイム、女子生徒が雑誌を捨てていったゴミ箱を見た。
「バカらしい」
集中する為に頭を振って余分な考えを捨てると、インターバルタイムを終えて、またトレーニングに戻るのであった。
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