第54話 学生大会3日目《はやての決勝》
決勝の相手も決まり、一年生の決勝は午前中に行われて、観客が見にきている二、三年の試合は午後から行われる。
一年生の試合は余興に過ぎない。
例年通りならそのはずであった。
しかし、今年の一年決勝はいつもとは違って注目を浴びている。
いつもなら、この決勝は午後からの試合の為に混み合う食堂や近くの店、フードコートなどに早めに行く為早期退場する者も多い。
しかし、今回は、誰1人として席を離れずに一年の決勝を観戦している。
決勝戦では、観客に向けて
これは、一年時から目をつけたい有力者にとって学園からのアピールである。
整列すると、大将は横並びになるので、まほろの隣に並んだ時雨しぐれが声をかけてきた。
「宣言通りあなたのライバルを倒してきましたわ!」
「ライバルじゃなくて腐れ縁なんだけどね、多分」
まほろはしぐれの言葉に苦笑いで返した。
「なんでもいいですわ。私はあなたと戦うのすごく楽しみですもの」
闘志沸るといった感じそしぐれはそう宣言した。
決勝に出る生徒の紹介が終われば、先鋒を残して残りは控え室に戻る。
模擬戦リングに残ったのははやてと相手の先鋒であった。
相手の先鋒の名前は
「それ、準決勝で時雨さんが使うてた武器!」
「ああ、これは元々俺のなんだよ。なのに急に貸せとか言いやがるから。ま、俺はあんたと戦う時にこれがあれば良かったからな。あんたは俺と同じ体術評価でAクラスに上がった優等生だ。是非戦ってみたかった」
カナトは話の途中から獰猛な笑みを浮かべる。
そして、審判の教員の合図と同時にカナトが動いた。
チャクラによる加速で、一瞬にしてはやてに近づくと、振りかぶっていた大刀を振り下ろした。
『
はやては2本の氷の刀を交差させて、大刀を受け止めた。
魔素で身体強化したはやてとカナトの力は拮抗しており、武器がガチャガチャと音を立てて震える。
「氷刀!」
「まほろちゃんみたいな綺麗な剣は作れへんけどな、私はお母ちゃんから、刀はしっかり仕込まれとんねんからな!」
はやてが力を入れて大刀を押し返した。
のけぞる形になって力が入れにくくなったカナトは、一旦後ろへ引いて体勢を立て直す。
「うらぁ!」
大声と共に大刀をカナトが振るうと、準決勝でしぐれが使ったように、刀身が分かれて蛇のように動く蛇腹の刀がしなりながらはやてを襲う。
はやてが氷刀で受けようた所で、カナトが口角を上げた。
はやてが受け止めた場所を起点に蛇腹刀が曲がり、巻きつくようにはやてを襲う。
受け止めてはいけないと理解したはやては、必死に体勢を屈めて地面を滑るようにして攻撃を交わした。
危機一髪、蛇腹刀ははやての鼻先をかすめ、毛先を少し切り裂いて通り過ぎた。
「なんつう反射神経だよ!」
カナトが驚きの声を上げるが、はやては会話に付き合っている暇はない。
蛇腹刀の攻撃より先に、自分の攻撃を仕掛ける為に言葉を紡ぐ。
『
はやては氷の壁を作って、その壁に向かって飛んだ。
『
「私はまだまほろちゃんみたいな魔女らしい戦い方ができへん。中途半端な忍者みたいな戦い方や、せやけど! 勝ちは譲られへんで!」
縦横無尽に動き回る蛇腹刀に対抗する為にはやてがとった行動は、空中に氷の壁を作り、それを足場に蛇腹刀の動きを上回る方法であった。
魔素という無限のエネルギーによる身体強化で蛇腹刀の動きを上回り、時には蛇腹刀の動きを氷の壁を使って阻害し、はやてはカナトへの道筋を作り出した。
2本の氷の刀をカナトの腹に叩き込むと、変わり身人形が横に斬り裂かれ、はやての勝利が確定した。
「くおぉ、負けた! 体術だけだって聞いてたのに忍術まで使ってしぐれみたいに戦いやがって!完敗だ! でも、次は負けないように修行だー!」
カナトは悔しそうに大声で叫んだ。
「そん時は、私ももっと魔女らしくなってるからもっとてごわなるで!」
はやてが手を差し出すとカナトはその手を握り返した。
「負けん!」
はやてはカナトの負けん気にニシシと笑った。
先鋒戦は、はやての勝利でまほろのグループに白星がついた。
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