第49話 学生大会3日目《はやての試合》
学生大会の準決勝戦、まほろ達の相手はAクラスのグループであった。
入学時のクラス分け成績は初等学園時の物といってもAクラスに振り分けられるだけあってやはり優秀な者も多い。
まずは先鋒の試合から始まるので、まほろ達のグループははやてが模擬戦リングに上がる。
相手のグループも先鋒の男の子が上がってきて、試合が始まる前にはやてに話しかけてきた。
「お前たちが一年の中で群を抜いて強いのは百も承知だ。速水さんも入学時は忍術が使えないって言ってたけど最近の授業で使えるようになってるみたいだし。だけど、だからって諦めたりしない! 俺だって今日まで頑張ってきたんだから、今日は勝つ!」
相手の男の子の言葉に、はやては嬉しそうに笑った。
今まで、初等学校までの同級生からは強くても忍術が使えない落ちこぼれと言われてきたからだ。
それを、きちんと認めた上で速水はやてと本気で戦ってくれる相手に、ちゃんと本気で応えようと思った。
忍術ではなく魔法だが、自分ができる精一杯の魔法で応えるのが礼儀だと思った。
「私も負けへんで! 私も、全力で迎え撃ったるわ!」
両者、気合いが入った所で審判の教員が試合開始の合図を出した。
「私の本気の本気、私は器用やないからまほろちゃんみたいな繊細なコントロールはできへんけど、体術やない私の最大火力の魔法、受けてみぃ!」
はやての最大火力魔法は、まほろがはやての為に考えた戦略級と言っていい魔法である。
決してこのような学生の大会で使っていい代物ではない為、はやてはまほろとの約束で威力を調節する為に言葉を追加するように言われている。
『
はやての呪文と共に作り出された空中に浮かぶ氷塊を見て、会場がざわついた。
《
「はな行くで『
はやての言葉と共に、空中に浮かんでいた氷塊は、対戦相手に向かってゆっくりと落ちていく。
自分に近づいて来るほどに大きく見えてくる氷塊は、それだけで恐怖であろう。
対戦相手は、「今日は勝つ」と気合いが入っていたにもかかわらず、予想の何倍もの攻撃が初手に来てしまったせいで足がすくんでしまっている。
氷塊は、ゆっくりとは言っても『
相手の男の子が、降参の合図を送る前に模擬戦リングに追突して相手を気絶させた。
『
会場が冷気で出来た霧に一瞬覆われる中、どこかから聞こえた言葉によって氷塊は砕け散り、男の子が潰されたままと言う事はなかった。
先鋒戦ではやてが勝利を収め、物凄い魔法に観客が歓声を送るのに、はやては笑顔で片腕で力こぶを作るように勝利をアピールした。
会場の興奮冷めやらぬまま退場したはやてが、その後に腕を組んで仁王立ちしたまほろの前で、両手を合わせて頭を下げているなどと言う事は、誰も想像していないであろう。
「まほろちゃん、ほんまにゴメンやで!」
「私、《Comet》の魔法は《Burst》を覚えるまで禁止って言ったよね」
「相手の子の本気には本気で答えやな失礼やんか。な?」
「そのせいで相手が死ぬ可能性がある事をちゃんと考えないとダメだよ! はやてちゃんには後で罰を与えます」
「そんな〜」
まほろに怒られるはやてを見て、あずきがクスリと笑った。
「仕方ないよ。まほろちゃんに頼る事を前提で戦ってたら相手に失礼だよ、はやてちゃん?」
「う、それは……ごめんなさい」
「罰は後にして、私の試合もちゃんと見ててよね」
あずきの正論パンチにやでは項垂れて降参した。
反省した様子のはやてを見て、まほろもこれ以上はとは鼻から息を吐いた。
あずきは、2人に見送られて足に魔素を集中させると、一足飛びに模擬戦リングに上がるのであった。
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