第48話 入場

学生大会も、本番と言える3日目になった。


この日は朝から観客席はいっぱいである。

昨日のように、有力者は後から来るのでその席は空いているという事はなく、正真正銘満員で、立見席まで埋まっている。


「うわー、昨日とは違ってようさんあるなぁ」


試合用リング横の、入場口からはやてが観客席を覗いて感想を言った。


「私達一年生は余興だと思っていたけど、やっぱり3日目は違うのね」


あずきも、個人的な感想を交えてはやてに返事をした。


「違いますわ!」


2人の会話に口を挟んだのは、同じ控え室で出番を待っていたグループの少女であった。


少女は、まほろ達とは違うBクラスの生徒なので面識はないのだが、少女は言いたい事が我慢できないと言った様子で話をした。


「例年はこの時間からここまでひとが多い事はありませんわ! 去年、一昨年とお父様に連れてきてもらいましたがこの時間はまだ昨日のように少なかったですもの。 これは昨日の試合、貴方達の戦いを見た観客がレベルが違う生徒が混じっていると言って噂になっているからですわ!」


昨日の試合を初めから見ていた観客達は、二年生や三年生の試合を見た後に、その試合よりも一年生のまほろ達の試合の感想を話していた。


その話は、見逃してしまった有力者達の耳に入る事となり、そこまで言うなら一年の試合から見てみるかと言ってこうして最初の試合から満席になっているのである。


わたくし達が戦うなら決勝戦でしょうが、負けませんわ! 私は時雨ときさめずジュラクの娘。父の名誉の為に負けるわけにはいきませんわ!」


時雨ジュラクは、まほろやあずきの父達の様に里長の様な立場ではなく、忍者格闘家団体の代表であり、有名人である。


まほろの前世でいえば、プロレスなどの格闘家団体の団長の様な存在である。


勿論、相当な実力者であり、ファンも多い。


その娘ともなれば、この学生大会は父の仕事のアマチュア版とも言えるので、気合いの入り方が違うのであろう。


「しぐれちゃん! いきなり話しかけたら迷惑だよ! 私達はまず他のグループと戦わないといけないんだから!」


しぐれと言うのは少女の名前だ。時雨ときさめしぐれ。


しぐれは、グループメンバーに引きずられて去って行った。


「すごいやる気やな」


「負けてられないね、私達も決勝で時雨さんに会わないとね」


「でも、まずは決勝より準決勝。気を抜かずにいきましょ」


「ほな、いくで!」


まほろ達の準決勝第一試合、気合いを入れて入場していくのであった。

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