第47話 学生大会2日目 2

2日目の試合は8グループが半分に減らされるだけなので1試合勝ち抜いてしまえばおしまいである為、まほろ達の出番はもうない。


まほろ達は試合が終わった後、まほろとあずきの親に呼ばれて食事に来ていた。


まほろの父やあずきの両親はまほろ達の試合を見に来ただけで、他の試合には興味がなかった。


里の長として人材を見るにしても3日目で十分だとおもっているし、スカウトの本番は秋の学生大会の方である。


この大会は、秋にスカウトする学生にツバをつけておく意味合いが強い。


「しかし、まほろ達の試合を見なかった有力者は残念な事をしたと思うだろうな」


「全くだ。一年生であれだけの実力差のある試合はまず見れないでしょうな」


「お父さん、シラハさん、色眼鏡が過ぎますよ。一年生だからこそ、あれだけの差ができたのでしょう」


親の評価はそれぞれ違うが、どちらとも正解であろう。


一年と言うどんぐり乗せ比べであるはずの学年にまほろ達のような突出した実力が現れたとも言えるし、この差は周りの生徒が成長すれば埋まるものだと言うのも一理ある。


しかし、ダイナとシラハはまほろの属性魔法を見た事があるので、縮まらない差だと思っていると言うのが考え方の差である。


ちなみに、《シラハ》と言うのはまほろの父の名だ。


あずきの母の名前は《まめこ》と言う


食事の注文を終えてからも、話は続く。


「はやてちゃんのご両親も誘えればよかったんだが、あいにく面識がないのでわからなかった」


ダイナがはやてに言った言葉にはやては首を振った。


「私はお母ちゃんは他界してますし父親は居ません。だからこうして誘ってもらえただけで嬉しいです」


「それは、辛い事を聞いたね。すまない」


はやてに謝ったダイナに、はやては苦笑いをしながら返事をした。


「そんな謝らんといて下さい。まほろちゃんとあずきちゃんにはお母ちゃんのお墓参り一緒にしてもろて2人を報告して来ました。この食事会だって私は家族の暖かさが感じられる素敵な時間です。誘ってくれた事にとっても感謝してるんですよ」


「そうか……」


はやての言葉に、ダイナはなんと返していいか分からず、少し暗い雰囲気になりかけた所で、妻のまめこが話題を変える話題を話した。


「今日の試合は3人共に体術しか使わなかったわね。私も魔法を見るの楽しみにしてたのに残念だわ」


「あずきちゃんのお母さん、あれは体術やのうて身体強化魔法っちゅう立派な魔法ですよ。でも、体術とよう似てるから、明日の試合で使う属性魔法の方が見応えがあると思います!」


「それは楽しみね」


「はい!あずきちゃんの魔法も凄いんですよ、もう《炎の魔女》って感じで!」


「はやてちゃん! お母様、はやてちゃんだって凄いんですよ、私が炎ならはやてちゃんは《氷の魔女》って感じです!」


「やめてやあずきちゃん恥ずかしいやんか! でも、私はお母ちゃんが得意やった水遁と同じ系統の魔法が得意なんは凄い嬉しいんです。……って、こんなん言うたらまたしんみりしてしまうやんか!」


はやてのセルフツッコミに笑いが起こって場の空気が和んだ。


「それで、はやてちゃんが《氷の魔女》あずきちゃんが《炎の魔女》ならまほろは何の魔女なんだい?」


シラハが自分の娘の事も気になるとばかりに子供達に質問をした。


それを聞いたあずきとはやては顔を見合わせるとニヤリと笑った。


まほろはあずきやはやてと違って得手不得手など無い。

それどころか、全ての魔法を2人の何倍も使いこなす事ができる。


《全の魔法使い》


とでも言えばいいのだろうか。


しかし、この言葉よりもまほろをピッタリの言葉をあずきとはやては知っている。


「「まほろちゃんは《始祖》様やな、《魔女の始祖》様!」」


「ちょ、2人ともそれは言わない約束!」


以前使い魔のファミが話した始祖の話黒歴史をまほろは2人に話さないようにお願いして封印してあったのだが、こんな所で裏切りに会ってしまった。


「ほう、まほろは《魔女の始祖》様か。言葉だけでは想像できないがどういう意味なんだ?」


それを知らないシラハは質問をしてくる。


和気藹々と説明するあずきとはやてに挟まれて、まほろは顔を赤く染める。


始祖の説明はシンプルで、忍者の世界で言えば開祖である。


魔法を生み出して舞い上がっていた頃の自分が、ファミに対して言った一言をまほろは恨めしく思うのだが、親達はあずきとはやての話を納得の様子で聞いているのであった。

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