第42話 心残り

「あずきちゃん、話聞こっか」


魔法の練習中に、まほろがあずきに声をかけた。


最近のあずきの魔法に打ち込む様は、どこか鬼迫るような雰囲気を感じたからであった。


はやても含めて休憩をとって、まほろとはやてはあずきの話を聞いた。


あずきは、この前の撮影の時に父親に自分の意思を伝えたが、認めてもらえなかった為に飛び出してきた事を話した。


「なんやねんそれ!私はあずきちゃんを応援するで!私も忍術が使えないからって散々バカにされたから分かるわ!私達3人、魔法でみんなを見返してやるんや!」


はやてはあずきの話を聞いて自分の事のようにヒートアップしている。


「でも、あずきちゃんは胸のどこかにつっかえてる所があるんでしょ?」


まほろの優しい声色に、あずきがハッとした表情でまほろの方を見た。


はやても言葉を止めて不思議そうにまほろの方を見た。


「どう言うことやの、まほろちゃん?」


はやての質問に、まほろはにっこりと微笑みながら話し始めた。


「あずきちゃんはちゃんとお父さんと話し合えなかった事をきにしてるんだよね」


「うん。私は、まほろちゃんやはやてちゃんの事を、魔法の事をちゃんと認めてもらいたい。ライア先輩は家族と話し合ってちゃんと認めてもらったって言ってた。だから、私もちゃんとお父様に認めてもらいたかった。……でも、聞く耳を持ってもらえないから飛び出してきちゃった。どうしたら良かったんだろうね」


あずきは悲しそうになんとか笑顔を作って話した。


「そっか。難しい問題だけど、ちゃんと話し合えるようになれたらいいね」


「うん……」


すぐに解決策が出るわけではない。

だけど、自分の思いを吐き出したあずきは少し気分がスッキリした様子であった。


「あずき!」


しかし、いい雰囲気であった所にあずきの父、小鳥遊ダイナがやって来たのであった。


あずきを追ってきたのか、3人の方に向かってくる。


まほろとはやては、ダイナの視線からあずきを遮るように立ち塞がった。


その様子を見て、ダイナはニヤリと口角が上がったようにまほろは感じた。


まほろは、ダイナの方に向かってピストルの形を作った指を構えた。


「まほろちゃん?」


隣のはやてが不安そうにまほろに話しかける中まほろの唇が動いた。


Fireファイア Bulletバレット


目にも留まらぬ速さでダイナの顔の横を炎弾が通りすぎると、背後にあった岩に風穴をあけた。


「これがあずきちゃんが練習している魔法だよ。ねえ、あずきちゃんのお父さん、あずきちゃんを連れ戻しにきたわけじゃないんでしょう?」


まほろの言葉にダイナは驚いた顔をして返事をした。


「ああ。あずきとちゃんと話がしたい。2人で話せないだろうか?」


まほろが気づいたダイナのニヤケだ様子は、まほろやはやてを嘲るものではなかった。

だから、その理由を考えた時、まほろはダイナの様子から一つの可能性にたどり着いた。


あずきを守るように立った2人を見て嬉しく思う気持ち。


その可能性が結果的は当たりだったのであろう。

だが、あずきから聞いた話からはいそうですかと言うわけにはいかない。


「もしも、あずきちゃんの意思に関係なく連れ去るようなら、今度は当てるから!」


まほろとはやてが遠くから見守る中、あずきとダイナの話し合いが始まるのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る