第37話 お墓参り

雲の上を飛んで、しばらくするとはやてが苦笑いで話し出した。


「まほろちゃん、これ雲ばっかりやからどっち向きか分からんわ!」


「それじゃ、雨が降ってない時は下に行こっか」


雲を突き抜けて雲の下に向かい、しばらく空を飛ぶと、目の前に大きな山が現れた。


「あそこやねん。いっつも墓参りする時は山に泊まりがけやからなかなか行けやんかったんや」


はやての言葉を聞いて、まほろとあずきは確かにと頷いた。


今回は箒で飛んでいくのですぐに行く事ができるだろう。


「お墓の近くにいっつも取りに行く花があんねん。取りに行ってええかな?」


「もちろん」


直接お墓には行かずに森の中にある花畑に降りると、はやては花を摘み始めた。


「綺麗なところね、誰も来ないから自然に花が群生したのね」


「それにしても、青い花って珍しいよね」


山に咲いているのは青い花だった。

まほろの知識だと青い花は自然界ではあり得ないのだが、この世界だとあるのだろう。


「お母ちゃんがこの山には力があるからそれを貰って育った花は青うなるんやって。よし、摘めたで! 近いから歩いていこう」


はやてが花を摘み終えたので、3人は歩いてお墓に向かう。


しばらく歩くと、森の中に石が積まれただけの簡易的なお墓が現れた。


「お母ちゃん、なかなか来れやんくてごめんな。私も中等学校に上がって村に居らんくなったんやんか。これ、いつもの花な」


はやてはお墓に話しかけながら花を添えて手を合わせた。


後ろで同じようにまほろとあずきが手を合わせた。


「お母ちゃん、紹介するわな。私にも友達ができてん。まほろちゃんとあずきちゃんや。ほんでな、今日は3人でここまで飛んできたんやで!箒に乗って空の上まで行ってな。 忍術の使えやん私には考えられやん事やろ? 私な、2人と一緒に忍者やなくて魔女になるって決めてん。そんであいつの事見返してやるねん。 ……今日は、その報告。あと、友達ができて楽しゅうやってるから、心配せんとゆっくり休んでやって言いに来たんや。ほな、もう行くわな」


はやてはお墓に話し終わるとすっと立ち上がった。


「まほろちゃん、あずきちゃん、行こか!」


振り向いたはやての顔は満面の笑みであった。


「もういいの?」


「うん。2人の事紹介したかっただけやし。私の大事な友達やってな。 それよりな、山降りてちょっと言ったとこにうどんの美味しいお茶屋さんがあんねん、寄ってこ」


決定とばかりに箒に跨って空へと舞い上がるはやては、飛び上がる前にお墓の方に向いて「見ててや」と呟いた。


「あ、待ってよ。はやてちゃんのお母さん、お邪魔しました」


「ちょっと、私の方が遅いんだから!」



まほろとあずきもはやてを追ってさらに舞い上がる。


3人は墓参りを終えて、はやての提案でうどんを食べに茶屋へ向かうのだった。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る