第35話 飛行魔法

「やったー!できたでまほろちゃん!あずきちゃん!」


喜んだはやてが飛び上がってまほろとあずきに両手でハイタッチした。


あずきから遅れる事2日、ついにはやても魔素を扱えるようになった。


「よっしゃ!ついに、ついにや!ちょっとまっててや」


はやては、興奮気味に部屋に戻って、箒を持って戻ってきた。


まだ魔法の基礎の基礎を覚えたばかりのはやてには、まほろのように召喚はできない。


「ついに私も空を飛ぶ練習ができるで!この為に、授業中も英語とルーン文字の練習してたんや!」


決して褒められた事ではないのだが、使える見込みのない忍術よりも、憧れの魔法を勉強した方が身になるのは事実である。


「それじゃ、いくで!」


とは言っても、魔素が扱えるようになったからといってすぐに飛べるわけではない。


まほろのように箒に腰掛けるようにして魔法陣を思い浮かべるが、魔法が発動する事はなかった。


「まほろちゃん、なんかコツはないんか?」


「私も知りたいわ」


はやての質問に先に練習していたあずきもまほろに助言を頼んだ。


「そうだね、魔法陣を練習で地面に描いて、その上に立ってやってみると分かりやすいかも?魔法陣が意識できるし。それと、初めは箒にまたがった方が余計な事に意識をさかなくていいかも?」


まほろは腰掛けるように座る事にこだわりがあるが、魔女は普通に跨って箒に乗るイメージなのでどちらかと言うとそちらの方がスタンダードだ。


腰掛けるように箒を準備すると、足で箒を挟んで固定できないので、落とさないようにと持っている手を意識してしまい、集中力を欠く可能性がある。


「分かった、やってみるわ」


「私も」


はやてとあずきはまず覚えた飛行の魔法陣を地面に書き込んでいく。


まほろも確認するが、2人の魔法陣に間違いはない。


2人は、描いた魔法陣の上で、箒に跨って魔素で地面の魔法陣をなぞるように集中していく。


勿論、一回でできるわけではないので、何回もチャレンジしていく。


最初に変化が起こったのは、はやてであった。


ざわざわと箒が動き、ゆっくりと足が地面から離れた。


「よっしゃ、このままいってまえぇぇえええ!」


力強く叫んだはやては、力が入り過ぎたのか、今までのゆっくりとした浮かび方とは違い、弾かれたように空に向かってすっ飛んでいった。


「まずい!」


はやてはまだ箒の制御がちゃんとできないので、落ちてしまえば大怪我、下手したら命の危険もある。


まほろは箒を即座に召喚して空に舞い上がり、飛んでいったはやてを全速力で追いかけると、はやてが重力に引かれて落ち始める前にキャッチした。


「焦ったー!まほろちゃん、ありがとう。でも、やったで!私空飛べたんや!」


箒で飛んだという事実に、満面の笑みを浮かべるはやてに、まほろはため息を吐いた。


「もっと自由に飛べるようにまだまだ練習だけどね」


「せやな。私頑張んで!」


元の位置に降りて来たはやてとまほろに、あずきが声をかけてきた。


「大丈夫、はやてちゃん?」


「まほろちゃんが助けてくれたからへーきや!それよりあずきちゃん、私飛べたで!」


力瘤を作るようにして笑いながら話すはやての様子にあずきはクスリと笑った。


「そうね、先いかれちゃったわ。でも、私も負けてないからね、すぐに追いつくから!」


1人が発動に成功した事で、まほろじゃなくてもできる事だと気合いが入る。


はやてとあずきは、切磋琢磨しながら、空を飛ぶ練習に励むのであった。



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