第33話 猪狩トギ1

放課後、学生訓練場にて居残りで自主練している生徒達がいた。


今日の授業で習った事を復習したり、予習で新しい忍術を勉強したり、模擬戦をしたりと色々な生徒が自分の成長の為に居残っている。


その中に、猪狩トギの姿もあった。


同じグループの生徒を相手に、模擬戦を行なっている。


一方的な模擬戦で、相手の生徒は手も足も出ていない。


防戦一方だった生徒の防御を、トギが崩したことによって相手の生徒は防御もままならなくなって変わり身人形のHPが無くなり負けが決まった。


にも関わらず、トギは手を止めずに生徒を一方的に殴り続ける。


「おい! もう終わりだ!」


他のグループメンバーが、トギを止めに入ってやっと止まった。


「おい、やりすぎだぞトギ、何やってんだよ!」


「チッ」


羽交いじめにして止められたトギは、舌打ちをして攻撃の手を止めた。


「おい、何イライラしてんだよ、トギ!」


「お前らには強くなろうとする意思が感じられない! あんな落ちこぼれに負けたまま、あの格好を認めていいのか!違う、オレ達は忍なんだ、あんなふざけた格好をした奴を認めていい訳がないんだ!」


トギは、あの模擬戦以降、まほろの事をクラスの一員と扱うクラスメイトにイライラしていた。


まほろを否定して向かっていくのではなく、強者として一目置いて馴れ合おうとする周りに腹が立った。


「おい、お前荒れてんなあ、入学したてで生きがいいいのはいいが、やり過ぎると孤立するぞ?」


訓練所に居た先輩が、揉めているトギ達を見て声を掛けてくれた。


「ちょうどいいや。先輩、相手してくださいよ、こいつらやる気ないんで」


「これはお灸が必要かもな」


先輩はため息を吐いて模擬戦のステージに上がった。


「三年の豪間ガイムだ」


「猪狩トギ」


「先輩の胸を借りるんだからちゃんと挨拶しろよ?まあ、いいか」


「強さに関係ないんで」


ガイムはトギの態度にため息を吐いて何も言わずに構えを取った。


模擬戦が始まると、先程の模擬戦とは違って拮抗した戦いの様に見えた。


「この程度でイキがっているなんて、笑い者だぞ?」


ガイムが隙を見つけてカウンターを食らわせると、今度はガイムが一方的な攻撃が始まり、変わり身人形のHPを削り切ると、先程のトギではないが、最後に腹を思いきり殴ってトギを吹っ飛ばした。


鳩尾に思いきりダメージを受けて浮き飛んだトギは壁まで飛ばされた。


その後、ガイムがトギに何かを話しているが、トギには届いておらず、トギはガイムを睨みつけながら別の事を考えていた。



クソったれ……


自分の弱さが嫌になる。


自分はまほろを否定しなければいけない。


あの存在を、里の恥として認めてはいけない。


トギは自分の中にある感情で体に鞭打って、呼吸を整えると、ガイムの話も聞かずに模擬戦をもう一度挑むのであった。


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