第31話 魔素
「本当に、飛んでるわ」
「な。めっちゃすごいやろ」
外に出て、まほろが箒で飛ぶ所を見せると、あずきは話には聞いていたが、信じられないと言った様子で目を見開いた。
その隣ではやてが自慢げに胸を張る。
「どう?これが飛行魔法なんだけど、やる気でた?」
まほろはスゥっとあずきとはやての前に戻って来ると、空中で静止したまま話した。
見上げる形になったあずきは、月明かりを背景に、空中で箒に腰掛けるまほろを見て、改めて、自分が目指すものは忍者では無く、常識の範囲外にいる魔女なのだと再確認した。
そして、自分もまほろの様な魔女になりたい。
友達だからなるのではなく、しっかりとした目標にして魔女になりたいと思った。
「それじゃ、せっかくだし2人ともやってみよっか」
まほろはゆっくりと地面に着地すると、2人にそう提案した。
「「えぇ!」」
「ま、まほろちゃん、それはスパルタちゃうか?私らまだ魔素の扱いもできてないんやけど?」
まほろの提案に、あずきとはやては尻込みをした。
「まあいきなり飛ぶなんてできないけどさ、座学じゃなくて外で魔素を扱ってみようよ。外だから暴発しても平気だしさ」
「「暴発!」」
「暴発って言っても初めは上手く扱えないんだし風がざわめく程度なんだけどさ、室内ですると部屋がぐちゃぐちゃになるんだよねぇ」
まほろは過去を思い出すかの様に2人に語った。
部屋をぐちゃぐちゃにして、母に正座で怒られたのは今となってはいい思い出である。
魔素を扱うと言っても、理解してしまえば簡単なのだ。
まほろは地球で見たよりも大きく感じる満月をみあげる。
クレーターが見える程に近づいている月は、笑っている様に感じた。
魔素の考え方は、量子力学の考え方と同じである。
魔素は大気中に溢れているが、そこにあると認識するまでは無いのと同じである。
そこにあると認識さえしてしまえば、体内のチャクラのように、もともとあるものとして扱うのは簡単だ。
しかしそれだけでは魔法ではなくただ無尽蔵に使えるだけの忍術にすぎない。
それを魔法たらしめるのは、まほろの記憶にある別の世界の知識と混ぜ合わせ、魔法としての存在を認めたれる事である。
「2人とも、これを見て」
あずきとはやてがまほろの言葉を聞いて魔素を扱おうと必死になっていた手を止め、まほろの方に向いた。
「「わあ……」」
2人は、その幻想的な光景に息を漏らした。
まほろの周りに、光の粒の様な粒子がぼんやりと、まるで雪が降って来たのに途中で止まっているる様な、まるで、静止画の様な光景であった。
「これが魔素だよ。私の力で光らせてみた」
2人に向けて向けるまほろの笑顔は、無邪気だが、やっている事はとんでもない事である。
「2人の周りにもこうやって魔素があるんだよ。これを手のひらに集める様に……」
まほろが集中すると、魔素はまほろの手のひらに引き寄せられるように集まっていく。
「これが基本だよ。空を飛ぶ時は手のひらじゃなくて箒や体にも魔素を纏わせるとか応用は必要だけと、扱い方がわかれば簡単だよ。まずは、さっきの光、魔素はこの世界に溢れているって事を自覚しないとね」
目で魔素を見たことにより、あずきとはやては魔素を想像しやすくなり、1週間もしないうちに魔素が扱える様になるのだが、今日の2人はさっきの光景を思い出しながら、唸っているだけであった。
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