第12話 準備
甘味処を出たまほろ達3人は、複合型商業施設の中を移動してある場所までやってきた。
「ここだよ」
腕を組んで胸を張り、まほろは自身ありげに話した。
「まほろちゃん、まず行かなあかんとこってほんまにここなんか?」
「おうともさ!」
まほろははやての質問に更に胸を突き出して答えた。
はやてとあずきは甘味処を出た後「魔女になる為にははじめに必要なものがある」と言うまほろの言葉でこの場所に案内された。
まほろが案内したのは、商業施設内にある洋服店であった。
「あら、まほろちゃんじゃない。こんなに早く来てくれるなんて、嬉しいわ」
「濃いな」
「濃いわね」
店から現れた店員を見て、はやてとあずきは同じ反応を返した。
金髪の艶やかで丸みのあるボブの髪型に、カチューシャを付けて、少し濃いめのメイクでも隠しきれていない口周りの青い剃り跡肩幅の広さを隠す様な肩にギャザーの付いた女性物の服装を着た女性?であった。
「ガイちゃん、こんにちは」
まほろにガイちゃんと呼ばれた店員は美を求める生粋の男性である。
美を求めているだけで、女性の心を持っているわけではなく、恋愛対象も女性であり、キチンと奥さんもいる。
「あんた、いきなり店の外に出たらお客さんが怖がるだろうが!」
「痛い! そうやってすぐに箒で叩くのはやめてくれない?」
店から出て来て、ガイを注意しながら箒で叩いたのはガイの奥さんのみれいであった。
見た目はとても美しく、スラリとした体型に似合うサバサバとしたパンツルックでとてもクールな印象なのだが、性格は肝っ玉母ちゃんの様に騒がしく、少し早とちりであった。
「おや、まほろちゃんじゃないかい。今日はどうしたんだい?」
「今日は友達の服と箒を買いに」
「そうかい。なら友達も一緒に店に入んな。ほらあんた、まほろちゃん達にお茶入れてやりな。いっちゃんいい玄米茶だよ」
「わかったわ!」
ガイはみれいの指示を聞いて素早い動きで店内に戻って行った。
はやてとあずきは呆気に取られているが、笑顔のまほろに手招きされるがまま、店内に入店した。
店内には既に湯呑みに入ったお茶が用意されており、ガイの手際の良さが伺える。
そもそも、なぜ入学したばかりのまほろがこの2人と知り合いなのかと言うと、この2人は元々、まほろの里の服屋だったのである。
まほろの服をオーダーメイドで作るうちに、この世界の和風テイストな服と違って、まほろが提案する、現代日本の服装に感銘を受けて店の使用をガラリと変えたばかりか、まほろがこの中等学校の里に行くと聞いて店舗移動までして来たのである。
「この服が気になるかい? ニットのセーターとスキニーって言うのさ。まほろちゃんの提案した服さ。普通の服よりも動きやすくて良いんだ」
みれいの、椅子に座りながらダボついたオーバーサイズのセーターを引っ張る仕草は、とても様になっていた。
対照的に、女性物、いや、男女兼用と言い張る服を着用するガイはメイクも相まってキャラが濃く見える。
「それで、この2人に服だって?」
「そう。私とおんなじやつ」
まほろの中で、魔女を目指すならまず形から。
忍者のような和風テイストで魔法を使うのは邪道である。
「成る程ね、あなた達も魔女になるの?」
ガイの質問にあずきとまほろは無言で頷いた。
「可愛い子が増えるのはいい事だわ!気合い入れてたくっちゃう!」
ガイが腕まくりをするのを見てあずきは疑問に思った事を口にした。
「あの、ガイさんが作るんですか? みれいさんじゃなくて?」
「ああそうだよ。私は箒の担当! 2人の分、いいやつを作ってやるからな、楽しみにしてな」
あずきの質問に答えたのはみれいであった。
ガイは既に服のイメージをしているらしく「やっぱりあれはこうよね」などと独り言を話している。
「それじゃ、採寸から始めるかね。2人は私について来な」
みれいは、長いストレートヘアをポニーテールにまとめながら、はやてとあずきを呼んだ。
服を作ってもらう為の採寸をしている間、まほろは少し冷めて飲み頃になったお茶を啜って待つのであった。
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