第10話 魔女っ子

「あずきちゃん、なんて格好してるのよ」


「え、私だってわかるの?」


まほろの言葉に、マスクとサングラスで変装?をした小鳥遊あずきが驚いた様子でまほろに尋ねた。


「まあね、そんな所で立ってても他の人の邪魔だから座ったら?」


まほろがぽんぽんと自分の隣の席を叩くと、あずきは何も言わずにその席へと座った。


「その格好は変だからとりあえずとったら?」


「う、うん」


あずきはまほろに言われた通りにマスクとサングラスを外した。


その様子をはやてはキョロキョロと2人を交互に見ていた


「それで?」


「え、あ、あの。面白い話をしていたから私も混ぜて欲しいな……なんて、ははは」


あずきの言葉は尻すぼみに消える様な音になっていく。


その言葉に、まほろはため息を吐いた。


「別に怒ってる訳じゃないよ。それに、今まで私が避けられ出たはずなんだけど?」


「それは、お父様の目があったからで、中等科に入ってやっと仲良くできると思ったらまほろちゃんは新しい友達といて話しかけにくくて……」


あずきは自分の思いを口にした。


どいやら、これまで避けられていたのは、小鳥遊家の目があったかららしい。


まほろとしても、そうされるだけの自覚はある。父は楽しそうに私の魔法を見てくれるが、母は世間体を気にしてまほろの格好などに小言が多い。


それも年数が経てば諦めたのかして言わなくなったけど。


他家からしたら、真似される前に付き合いをやめさせたかったのだろう。


そうすれば、トギの様にまほろの事を異端だと嫌う者も出てくる。


大人の顔色を、子供は伺うのだ。


にも関わらず、あずきは親に反抗できなかったまでも、まほろと仲良くしたいと思ってくれていたのだ。


そこは素直に嬉しいと思う。


「ありがとう」


「え?」


まほろの言葉を、あずきは聞き返した。


今までの事を怒っていると思っていたのだ。


「ありがとうって言ったの。私の事、ちゃんと見てくれて」


「うん。だってまほろちゃんはずっと私の憧れだから」


あずきにとって、まほろはいつまでも憧れだった。


自分は、父の言う事に逆らえず、外面を作って良い子でいつづけたが、本当はやりたい事がちゃんとあって、でも怖くて。


だから、誰になんと言われようとも、自分の道をしっかりと進む姿に憧れた。


そんなまほろとまた仲良くなりたくて。


だから、今日は、様子見のストーキングをしていた。


敵場視察だと思っていたのに、他の子と一緒に練習するなんて話になるもんだから、慌てて混ざろうと飛び出したのだ。


タイミングとしては、最悪だったと思う。


「クリームぜんざい、溶けちゃうよ?」


「うん」


まほろに言われて、餡子ののったソフトクリームを口に運ぶ。


「なんや、結局あずきちゃんもまほろちゃんと仲ようしたくて、それでここまで追っかけてきたんやろ?」


あずきの話を聞いて、はやては納得したかの様に嬉しそうに話しだした。


「そしたらあずきちゃんもまほろちゃんに魔法習ったらええやん! まほろちゃんの魔法は凄いんやで。教室で挨拶したけどもう一回言うわ。私の名前は速水はやて。よろしゅうな!」


はやてが笑顔で手を出したので、あずきは反射的にその手を握り返した。


「ほら、まほろちゃんもや」


まほろははやての言葉に空気を察して自分も2人の手に自分の手を重ねた。


「よっしゃ! 私達3人で魔法を馬鹿にしてる人を見返して魔法忍者になったんで!」


はやてが元気に宣言する言葉は、凄くいい言葉なのだが、まほろはどうしても注意しておきたい事があった。


「はやてちゃん、魔法忍者じゃなくて、魔女だからね!」


「え、分かった。一流の魔女になんで!」


「お、おー!」


はやてとあずき。まほろ以外の魔女を目指す少女、魔女っ子が誕生した瞬間であった。



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