第8話 自己紹介
「それでは、みんな席に着ぎしたね。まず、私がこのクラスの担任になった
Aクラスの生徒とまほろが席に着くと、教壇に立った担任の水無月はそう挨拶した。
「それでは、これから一年共に学ぶ仲間同士自己紹介からしていきましょうか……はい、どうしました?」
水無月が進行する中、1人の生徒が手を挙げたので、水無月はその生徒の質問を許した。
「先生、なぜこのAクラスにEクラスの生徒が居るのでしょうか? このクラスに落ちこぼれは相応しくないと思います」
手を挙げたのは猪狩トギであった。
先程の続きとばかりに、落ちこぼれを強調して説明した。
それを聞いた水無月は、まほろを見ると、にっこりと笑ってトギの質問に答えた。
「東雲さんは1人だけEクラスですのでその為に教員を増やす事はできません。なので他のクラスと合同で授業を受けてもらう事になるのですが、東雲さんは他のクラスに混ざって授業を受けるのは難しい為、私のクラスと合同で授業を受けてもらう事になりました。みなさん仲良くしてあげてくださいね」
ニコニコとまほろを見ながら話す水無月を見て、まほろは思った。
『この人、わざとだなぁ』
どれだけの生徒が今の言葉を正しく理解できただろう。
事前情報としてまほろの実力を知っていなければEクラスの落ちこぼれと言うイメージは取れない。
まほろがこのクラスで合同授業を受けるのは、入学成績にそぐわぬ優秀さから、他の生徒の心を折ってしまいかねない為に、せめて実力差が少ないエリートクラスでという事と、そのエリートクラスの伸びた鼻を折るくらいは丁度いいという水無月の考えによるものである。
しかし、今の説明では、まほろが問題児なので、他のクラスに任せるのは大変だから私が見る事になりました。と聞こえる。
水無月のその言葉に、トギは満足そうにまほろを一瞥して「説明ありがとうございます」と水無月に言った。
「他に質問がないなら自己紹介をしていきますよ。では、出席番号順にしましょうか。名前と出身の里、それから得意な忍術。他に何かあればそれも言っていただいて構いません。 私が先に言いますので、その後は起立して順番にお願いしますね」
水無月は教室を見渡して皆が理解したのを確認すると、自らの自己紹介をはじめた。
「皆さんの担任の水無月グレンです。出身は影張の里、得意な忍術の系統は火遁ですね。それでは、私の真似をして順番に自己紹介を始めましょう」
水無月の進行にならって窓際の前の席から自己紹介を始める。
「俺の名前は猪狩トギ、叢雲の里出身で、得意忍術は水無月先生と同じ火遁、火遁だけは中級まで使えるのでもしアドバイス欲しい人がいたら聞いて下さい! よろしくお願いします」
意外にも、トギはスマートに自分の長所を説明して自己紹介を終えた。
初等科卒業試験でまほろと戦っただけあって優秀なのだ。
初等科では忍術として形にできれば御の字。
この学校に来る生徒達は、既に忍術を形にしている様な優秀な生徒達なので、得意忍術の自己紹介をするのだが、他の中等科ではしないのであろう。
その中でも、中級忍術を使えると言うのはかなり優秀だと言えるので、自己アピールとしては100点であろう。
その後は、あずきの自己紹介の時には優秀であるのは勿論、やはり人気があるので周りから黄色い声が上がったりもした。
そして自己紹介ははやての番である。
「うちの名前は速水はやてって言います。出身は斉賀の里、得意な忍術はありません。私は保有チャクラが少ないからどうも忍術は苦手なんです。せやけど、その分体術には自信があって卒業試験も一位通過でこの学校に来ました。皆さん、これからよろしくお願いします」
はやての自己紹介には、クラスの反応が分かれた。
はやてがこのクラスにいるのは初等科の担任がまほろの担任とは違い偏見のない成績をつけたからだろう。
ただ、体術は忍術と違っ派手さが無いので、有名な忍者になる人は忍術系統が二つ名になる人が多い。
その為、実力が曖昧な学生は特に、忍術が使えない生徒を馬鹿にする生徒も多かった。
体術でこのクラスにいるはやての事をすごいと称賛する目と、忍術が苦手な事を馬鹿にする目に分かれた。
その反応も、授業が始まれば変わっていくのだろうが、今は、トギが忍術自慢をする様に忍術が成績のパラメータである事は間違いない。
その後も、自己紹介は進み、最後にまほろの晩がやって来た。
「東雲まほろ、叢雲の里出身。私が得意なのは、重力系魔法です」
まほろの自己紹介に周りの生徒達はしらけた顔をした。
この世界では、魔法と言う言葉が無いので、周りにとって魔法とはまほろの造語である。
それを堂々と言ったまほろの事を周りは馬鹿にした様な目で見ている。
魔法の事をしかし話して知っているはやてはキラキラした目で見ているし、あずきは何故か怒った様な睨む様な目で見ているが、教室の反応は皆似た様なものである。
水無月は、それも面白いと言った様な雰囲気で頷いている。
まほろの自分を曲げない自己紹介で、朝のホームルームは幕を閉じたのであった。
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