第7話 一波乱
「げ、なんで落ちこぼれのEクラスがこの教室に入ってきてんだよ」
まほろが教室に入ってかけられたのはそんな言葉であった。
その言葉を放ったのは、教室で椅子では無く、机の上に座って他の生徒と話していた男子生徒であった。
男子生徒の名前は
まほろと同じ里の出身で、初等科の卒業試験でまほろにボロ負けした生徒であった。
まほろにボロ負けはしたのだが、その戦いは卒業試験トーナメント決勝であった為、上位成績者が選出されるこの学校に入学しているのは不思議ではない。
このAクラスに居るのも、初等科の教師からの覚えが良かったのだろう。
まほろと違って大堂の忍者である訳だし。
「あんた、いきなり何やねん! 失礼すぎとちゃう?」
トギの言葉に、まほろではなく一緒にいたはやてが反論した。
「あ? お前誰だよ。そいつはAクラスじゃなくて落ちこぼれのEクラスなの。成績上位者が集まるこのクラスに来ていい生徒じゃないんだよ」
「私はまほろちゃんの友達の速水はやてや! あんたな、まほろちゃんもこのクラスで一緒に勉強するって知らんのかいな。多分あの席表にも名前があるわ」
はやてはそう言って黒板に貼られている席表を指差した。
はやての言っている事は事実である。
しかし、トギの言っているまほろがEクラスと言うのも事実である。
周りの生徒達は、その二つの事実を知って、ヒソヒソと遠目に話をしている。
「なんで落ちこぼれが俺達と一緒に授業を受けんだよ!」
「そんなんまほろちゃんが凄いからに決まってるやろ! 文句があるなら先生に言いいや!」
売り言葉に買い言葉。ケンカの様な言い合いはとどまる事をしらない。
トギとはやてが狼が威嚇し合う様に睨み合っているが、この言い合いは何処までも意味の無いものである。
「はやてちゃん、もういいよ。席表見て座ろう」
「まほろちゃん、ええんか?」
「ああいうのは相手にするだけ無駄だよ。どうせ私に卒業試験で負けた負け犬の遠吠えだし」
「そうなんか?」
はやてはまほろの話を聞いてニヤニヤと笑いを堪えながらトギを見る。
卒業試験で負けておきながら、まほろの事を落ちこぼれ扱いするトギが滑稽に思えた。
はやてが言い合いに見切りをつけて、まほろと席表の方に移動しるのを、トギは悔しそうに睨みつける。
「おい、落ちこぼれと仲良くするとお前も落ちこぼれが
「あんた!」
はやてがトギの言葉に、怒りを再熱させた時であった。
Aクラスの学年主任が教室に入ってきた。
「それじゃあホームルームをはじめるぞ。自分の席は確認したか?」
出鼻を挫かれたのと、服の裾をまほろに引っ張られたのもあって、はやては怒りを我慢して席表を確認して自分の席へと向かう。
教室の席順は、Aクラスの席を並べた後に、一段分けて後ろにまほろの席があった。
しかしこれは差別ではなく区別だろう。
Aクラスの中にEクラスが混ざって授業を受けるのだから分けるのは当然の事だ。
これから一緒に授業を受けるのだから、その中で、何故まほろがAクラスと一緒に授業を受けるかはすぐにわかる事だろう。
一波乱あったが、先生が来た事で大きな問題もなく、ホームルームが始まるのであった。
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