第6話 入学式
入学式の会場に着くと、会場は入学式に出る生徒で一杯になっていた。
まだ時間には余裕があるが、皆が楽しみにしていたのか来るのが早い。
はやてとはクラスが違うので、まほろは別れて自分達の席へと向かう。
Aクラスであるはやては前の方の席で、Eクラスであるまほろは一番後ろである。
クラス毎にイスは区切りがつけられており、まほろの席は最後尾にポツンと一つ置かれている。
しかし、そのおかげで箒を持ったままでも他人の邪魔にならないので、まほろには都合がよかった。
しかし、箒の分だけ座った生徒の頭より少し高くなるので、まほろの隣に並ぶ
まほろにとっては今更ではあるが、周りにはやはり奇妙に見えるのか、遠目からチラチラと見る視線は鬱陶しかった。
しかし、そんな目線も、ある生徒の入場でまほろから離れる事となる。
式場にその生徒が入ってくると、式場にいた生徒は自分達のおしゃべりを止めて、その生徒の方に注目した。
明るい桃色の、腰まで伸ばした長い髪を揺らしながら歩く女の子は、他の生徒に見られているのに気づくと笑顔を向けて控えめに手を振って返事をした。
その瞬間、手を振った方向にいた生徒達は歓喜にざわついた。
まほろとは別の里の名家小鳥遊家の長女で跡取り。
実力もさることながら、見た目の可愛らしさと気さくな性格で大人気の、忍者アイドル的存在の少女。
忍者なのに少女向けファッション雑誌の表紙を飾ったこともあるので、知名度が高く、この学校の生徒達は、小鳥遊あずきと同じ学校に通えると言うのも、一つのステータスになっていた。
同じ名家として、まほろとは大違いである。
まほろも何気なしにあずきの方を見ると、偶然にも目があった気がした。
気がしたと言うのは直ぐに目を逸らされてしまったから。
まほろとあずきは以前にも数回あった事があるが、初めは仲良く話しかけてくれたあずきだったが、まほろが魔女を目指した頃からそっけなくなってしまい、今では疎遠状態である。
こう言う事はもう慣れっこなので、まほろはため息を吐くと、入学式が始まるまでの間、足を組んで腕も組み、箒を枕がわりにすると、目を瞑って静かに待った。
しばらくすると入学式が始まった。
忍学校だからと言って特別な事はなく、流れとしては前世日本の入学式と同じである。
入学式は進み、校長先生の挨拶である。
今年の入学式の校長先生は体調の悪そうな前の細い男性らしい。
今年のと言うのは、この学校の校長先生はずっと同じ人物なのだが、変装の名人であり、人前に出る度に姿が変わり、本当の姿は数名しか知らないのだ。
去年の入学式は岩男のような大男だったそうだし、卒業式は6歳の少女であったそうだ。
正体がわからないから生徒の中にいつ紛れ込んでいるかわからず、生徒も緊張感を持って過ごさねばならない。
「ええ、私からは一つ。学生時代は一度しかありません。忍びとして精進するのは大切です。でもそれは大人になってからでもできる事、友人を作り、忍術以外にも多くを学び、人として、大きな成長を遂げる事を私は願っています。 皆さんが、よい学生生活を遅れるよう、応援しております」
校長先生の話はそれだけで終わった。
校長先生が壇上を降りると拍手が起こる。
長々しい話を覚悟していたまほろは拍子抜けであった。
まほろがホッとしたのも束の間、続いっての話は教頭先生であった。
こちらが、すこぶる長かった。
同じ話が2度ほどループしたし、要約すると、校長先生はああ言いましたが、忍者学校の本文は忍術の向上。我が校は他校に比べてエリート校ですから、それに恥じないように、謹んだ学生生活を送ってください。とのことだ。
まほろは素行の悪い生徒と思われているのか、教頭先生は話の間、誰か個人に向けて言っているかのようにまほろの方を向いて話している時があった。
これは、自意識過剰ではないと思う。
その後は、生徒会の挨拶があったり、新入生代表のあずきの挨拶があったり。
一通りの流れが終わると、入学式は終了となった。
入学式が終わると、教室に移動になる。
まほろは先日決まった通り、Aクラスに混ざって授業などを受ける為、教室も同じである。
教師に移動する間は、はやてと合流して、2人で教室へと向かう。
「しっかしあの教頭、感じ悪いよなあ。まほろちゃんの事チラチラ見ながら嫌味言うてたで。まほろちゃんの凄さも分からんと、嫌な人やで」
はやては教頭先生の先ほどの挨拶にご立腹のようである。
友達がそう怒ってくれる事で、まほろは胸の内が少し軽くなるような気がした。
いや、慣れているのでなんとも思ってなかったのだけれども。
2人がたわいもない会話をしながら、教室に辿り着いて中に入ると、中にいた生徒が大声で声をかけてきた。
「げ、なんで落ちこぼれのEクラスがこの教室に入ってきてんだよ」
まほろに向かってかけられた声は、そんな誹謗中傷の声であった。
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