第2話 移動
弟が、跡継ぎの長男が生まれたからと言って、私が東雲家の人間でなくなった訳ではない。
なので、私は自分の魔法の研究をしながらも、初等忍者学校を卒業して、12歳の今日、中等学校に向かう事になっている。
「まほろ、貴方本当にその格好で行くの?」
朝、出発の用意をしていると、お母さんがそう話しかけてきた。
「うん。これが私のスタイルだから」
私の返事を聞いてお母さんはやれやれと言った様子で額に手を当ててため息を吐いた。
あの本と出会い、弟が生まれた時から、魔法の研究を始めた。
その時から、私はこの世界で初めての魔女になる事を決めた。
そして、まずは形から。
私は私服の上から真っ黒いローブを羽織り、箒を持ち歩く様になった。
里にある初等忍者学校では、前世の学校と違ってみんな自分に合った武器を携帯している。
小さい物はクナイから、大きい物だと刀等。
それが私は箒になったと言うだけだった。
しかしそれだけで同級生は私の事を変人を見る様な目で見てくるし、やんちゃな男子は、面と向かって悪口を言ってくる奴もいた。
だけど、そんな奴は卒業試験の時に箒を使ってぶっ飛ばしてやった。
不本意ながら、魔法ではなく
本当はぶっ飛ばされた男子に「東雲の元跡取り舐めんな!」と中指を突き立ててやりたかったが、そこは私も女の子。お淑やかに「弱っ」と捨て台詞だけ言って、何事もなかったかの様に去ってやった。
その方が、男子にはダメージが多そうだったし。
そんな感じで、ローブと箒は私のトレードマークだ。それは、これから中等学校へ行っても変わらない。
今日は、私が通う中等学校に通う生徒は、集まって中等学校のある里へ向かう事になっている。
中等学校は里々で全寮制であり、卒業試験の成績によってどの中等学校に行くか振り分けられている。
同じ学校に行くのは私を入れてこの里からは4人だが、私以外は、皆んなこの日の為に服を新調したのか真新しい服に身をつつんでいた。
忍の学校であるが、学生服などはなく、私服の為、皆、動きやすい服装である。
日本人が忍者でイメージする様な黒装束を着ている人は勿論いない。
ただ、この世界は忍が居るだけあって、一般人も皆、和装の雰囲気がある私服である。
その中にいる私の格好は、非常に浮いていると思う。
魔女っぽくする為、黒ローブは少しボロい物を選んでいるし、私服に関しても、日本のブレザーに近い物を頼んで作って貰ったオリジナルのオーダーメイドだから仕方がない。
だって、制服に少しダボついた黒ローブの魔女っ子って可愛くない? 流石に前世の大人の記憶がある私にはピンクやオレンジの衣装は拒否反応があった。
この世界では、この装いの良さに、誰も共感してくれないが、私は大変満足である。
移動用のバスに乗って、中等学校に向かうわけだが、他の学生が入学式を楽しみに会話をする中、ぼっちの私は、魔法の研究の為に、いつもの本を開いてバスに揺られるのだった。
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