第27話 最後の言葉
27 最後の言葉
02月04日 病室
「……ノノ?」
ゆきは、ノノに話しかけたが、ノノからはなんの反応もなかった。
ゆきは、なんとなく。ノノの中から何かが消えているように感じた。
…ゆきは、ノノを机に置いた。
そして。
ゆきは、月城彼方の持つ手紙を自分の手に取る。封筒には。 ゆきへ と書かれていた。
ゆきは、手紙を読んだ。
…………
手紙
ゆきへ
これを読んでいるということは、既にオレの身体は亡くなっていることだろう。
でもオレはな。後悔はしていないぞ。ゆきを守れたんだからな。
……ははっ。いざ、こうして書いていると、何書けばいいのか、わかんねーな。
書く前は、いっぱい浮かんでいたのによ。
…ゆき、お前は幼い頃は、あまりにも泣き虫だったよな。
お前が泣く度にオレは、お前の頭を撫でていた。
なのにさ、いつの間にか、ゆきは。アイドルなんてもんを初めていて。1人でなんでも出来るような奴に知らぬ間になっていてよ。
お前のその、成長にいつも驚かされていたんだぜ。
なにも出来ていない自分が少し惨めに見えてくるくらいにな。
…だが、そんなゆきを見るのは、とても、楽しく、そして、嬉しかった。
ゆき。お前は、オレにとって誇らしい、自慢の妹だ。
オレはお前の兄でいられて幸せだった。
………
そうだ。ゆき。
お前は今、声が出なくて辛い状態なんだろう。…オレはお兄ちゃんだからな、お前のことならなんでもわかる。
……ごめんな。こんな時に何もしてやれなくて。
でもな。オレは、信じているぞ。
ゆきなら、乗り越えられるって。
お前は自分が強くないから、なんて焦っているようだが。そんなことはない。
いいか。強くあろうなんて、思うな。お前は既に十分凄いやつだよ。
お前はその。お前だけの強さに、気づけていないだけなんだ。
それが、アイドル。月城ゆきの、強さなんだ。
大丈夫。
オレを信じろ 。皆を、信じろ。月城ゆきを、信じろ。
って、数ヶ月前までアイドルのあの字も知らなかった、オレみたいな奴が言えたことじゃあねーかもしれないけどな……。
ゆき。約束。覚えているか。
あの雪の日の約束。
ずっと傍で見ているというあの約束。
オレは忘れていないぞ。
いいか。
オレはいつでも、見ているぞ。見ているからな。…お前が困ってることも悩んでることも、全部お兄ちゃんには、お見通しなんだからな!
……だからさ。
いつか、見せてくれよ。
月城ゆきの、最高のステージってやつをさ…。
何年かかってもいい。
いつでも、待ってるからさ。
その時を、楽しみにしてるよ。
それじゃあな。ゆき。
月城彼方
…………………………
第2章 終わり
最終章につつく
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます