第22話 明日世界が終わる夜に 1


ノノ……?


そうノノを呼ぶゆきを見ながら。

オレは思った。

あぁ、今度こそ本当に、オレは……。月城彼方は、終わりなんだなと。

そしてオレの脳裏に浮かんだのは。


ノノとして過ごしたオレの記憶だった。


2回目の走馬灯は。ノノとしての走馬灯……。


……オレは、アイツに、何をしてやれたんだろう。



走馬灯


01月15日


魂としてさ迷っていたオレは、ゆきの病室へ向かった。

その時、あいつに、ノノに、呼ばれたような気がした。


思い出して……


「!?」


あなたは、大事なことを忘れているよ……。


「どういう、こと」


……まだ、思い出せないんだね。

……それなら。見せて上げる、ボクが、見てきた。キミの記憶を……


そして自分の中に、ある記憶が流れ出した。

それはアイドルの少女、たった1人のたいせつな妹……の、記憶。

そしてオレは、思い出した。自分が、月城彼方であることを。


……


今の自分は、宙に浮いていた。

白い玉が炎を纏ったような形。それはきっと、自分の魂の姿だった。


わかる、オレにはわかるぞ。これはオレの、能力だ。

オレは能力で魂を操作してるんだ。


……オレはずっと、能力が使えなかった。

それは、開花していないからだとずっと思っていたが違ったんだ。

開花していたことに気づけなかったんだ。

魂操作なんて、分かるわけないよな。

自分の死がきっかけで能力に目覚めるなんて皮肉すぎるぜ。

だが、目覚めた今は、自分の能力の感覚がはっきりわかるぜ。


……


ある程度動き回りオレは能力の事をなんとなく分かってきた。

この能力は、魂操作(ソウルコントロール)

魂の状態で自由に動ける、そして。他の物にも入ることが出来る。

オレは部屋の中の色々に入ってみた。

その中でも最もしっくり来たのはノノだった。

元々生物の形をしているためか、ノノに入ると声も出せたし、ある程度動くことも出来た。


……オレは自分の身体を見てみた。


「ま、当然だよな」


……死んでいる。確実に死んでいた。

少なくとも。生物学上は。


「ん……?」


オレは特集な能力の影響か、ある事が理解った。

…オレの身体には、まだ、ほんと僅かに生命力が残っている事に。

身体も動かせないほどの微力なエネルギー。


それは、恐らく、この能力を維持するためのエネルギー。

つまり、これが切れたら、この魂も天に昇っちまうはずだ。


オレは、身体に入ってみようとそた。

だが、一瞬入っただけで、ものすごく勢いで押し出されてしまう。まともに意識を維持することも出来なかった。


「…まぁ、当然か」


01月17日


「お兄ちゃん……約束したのに……、ずっと……ずっとそばで見てくれるって……」


悲しく呟くゆきを、オレは空中から見ていた。

その姿は、今にも掻き消えてしまいそうで……。

そんなゆきの姿に耐えられず、オレは。

ノノの中に、入った。

そして……


「元気……出して」


オレは、ノノから声を出してしまったのだ。


「あなたなの、ノノ」

「そう、だよ。ボクだよ……ノノ、だよ」


オレはとっさに自分をノノだと言ってしまった。

そして、その時から、オレはノノとして。今日まで生きてきてしまったのだ


……


そしてオレは、今にも消えてしまいそうな、ゆきを見て。言ってしまったんだ。


「そんなんじゃ、お兄さんも安心して目覚められないよ」

「え」

「まだだよ、まだ確実ひ死んだわけじゃない……あの人の魂はまだ、この世界のある」


ゆきに元気を与えるために。

仮初の希望の言葉を放ってしまった。

絶対に叶うはずのない、絶望というなの希望の言葉を。


……


今思うと、あまりにも愚かな行動だったと思う。

結局オレは、ゆきに。何かをしてやれたのだろうか…。

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