第3話 妹の姿

……………



こうして、ゆきに連れてこられた先は、アトラクションではなかった。

遊園地のすみみにポツンとある小さなステージ。

使っている時以外は人もほとんど集まらない場所。

しかし、今はポツポツと人が集まっていた。

特に親子連れの人々がそこそこいるようだった。

そして人々の集団より少し後方の位置。そこにはあの金城まおの姿も見えた。

人々から離れた位置にポツンと1人佇んでいた。


ゆきはトイレに行くといい去っていっってしまっていた。


「何か始まるのかな」


そして、待っていると、聞き覚えのある音楽が流れ出した。

「この曲は…、確か」

そうだ、これは、ゆきが歌っている「プリンセスミラージュ」の主題歌だ。


そして、ステージに見覚えよある姿が現れた…

そう、オレの妹「月城ゆき」だ。

「なにやってんだアイツ……?」


パチパチパチパチパチパチパチパチ

観客から拍手が巻き起こる


ステージの中央に堂々と立ち、ゆきは言った。

「本日は、プリンセスミラージュの放送記念イベントに起こし頂き。ありがとうございます!」

そうか…、プリミラのイベントなのか、これは。

「私は主題歌を担当している月城ゆきと申します。本日はイベントのオープニングアクトを努めさせて頂きます。それでは皆さん、お聞きください。」


そう言ってゆきは右手を上にあげる。

すると、当たり一面は一気に暗くなり、星々が瞬いているような夜の風景に様変わりして、昼間なのに当たりは夜の星空のような景色になった。


ゆきの身体からは白く淡い光が溢れている。

そう、これはゆきの「能力」だ。

ゆきの能力は。自信の周りに「星空空間」を展開する。そしてその空間には「癒し」の効果がある。

さっきオレの傷を癒した技は、この能力の応用したに過ぎない。


その光景に前方にいる親子連れの観客達は、驚いていた。小さいこどもは、すごいーとか、きれーい、などの声が聞こえてくる。

逆に後方にいる人達は全く動じていなかった。おそらくこの人達は元々ゆきのファンなのだろう。


そして音楽が流れ出す。もちろんその曲はあの、プリンセスミラージュの主題歌だ。

そしてゆきは歌った……。


くらい夜空の中で、淡く白い輝きを放ちながら、ゆきは歌い踊った。


オレはそんなゆきの姿を……。

とても、綺麗だなと思った。


…どうして、プリンセスミラージュの主題歌にゆきが選ばれたのか、オレはなんとなくわかった気がした。

プリミラは、夜空の星々から力を得てたたかう女の子の話だ。

そんな物語には。ゆきの優しく力強い歌声に、そしてこの「能力」はまさにイメージにぴったりなんだ。


……歌が終わった。

パチパチパチパチパチパチパチ

と拍手が飛び交う。

そしてゆきは言った。

「皆さん、ありがとうございます!」

そんな中前方にいるこどもが言った

「みらーじゅ、でてくるー?」

と。ゆきはその子どもに微笑みかけて

「もうすぐ出てくるよー、だから良い子にして待っててね♪」と言いその子の頭を撫でた。

その子はわかったー!といい静かになった


「それでは、私の出番はこれでおしまいです。これからもイベントをお楽しみください!」

そしてゆきはステージから去っていった…。





‥……………



アニメのイベントも終わり。ゆきは再びオレの元に戻ってきた。

それからというもの特に何も変わることなく再び遊園地を楽しんだ。


気付けば夕方になっていた。

オレとゆきは、観覧車に乗ることになった。


観覧車の中でオレは今日ずっと気になっていたことを、ゆきに訊ねた。

「なぁ、そろそろ教えてくれないか?」

「なに?」

「なんで急に遊園地なんかに誘ったのかだよ」

「なんでって…、昔はよく行っていたじゃない

「そりゃあ昔は行っていたが、別にオレじゃあなくても、友達とでも行けばいいじゃあないか」

その言葉にゆきは、少し悲しそうに顔をして言った

「そ、それは…。お兄ちゃんに、見て欲しかったから…。私が歌っているところ」

「…え?」

「だ、だってお兄ちゃん、私がアイドルやってるところ見て欲しいって言ってもいつも、キョーミない。って言って聞いてくれないんだもの」

……そういえばそんな事を言ったような気もする。

「だから、ね。遊園地に行くついでに見てもらおうかなって思いつたの。ちょうど今日イベントがあったからね」


ゆきは、オレにアイドルとして歌っている姿を見て欲しくて遊園地に誘ったのか…。

しかし、そんなにオレに見てもらうことが大事なことなのか


「ただ、今日はちょっと特殊なイベントだったけどね。今日は私のこと知らない人もいっぱいだったし……。いつもは、私のファンの前で歌うけどもっと凄いんだよ!もっと盛り上がって、きっとお兄ちゃんもびっくりするくらいに。でも。今日は私のこと知らない人もいっぱいいたから、ちょっと緊張しちゃった…」


緊張していたのか?あまりそんな感じには見えなかったけど…


「ねぇ、お兄ちゃん。どうだった?私、ちゃんと歌えてたかな?」

ゆきは、少し不安そうな顔でそんなことを聞いてくる。

オレは、素直な気持ちで応えた。


「あぁ、良かったよ。しっかり聴こえていたよ、ゆきの歌。…ゆきが歌っている姿は初めて見たけど、とても綺麗だったよ」


「ほ、ほんとぉ……?」

「あぁ。凄いじゃあないか、ゆき」


オレはゆきの頭を撫でた

ゆきは、さっきまでの不安な表情はどこへやら。とても嬉しそうだった

……こうして、ゆきの頭を撫でると、昔のことを思い出す。

昔はゆきは、とても泣き虫な女の子だった。

ちょっとしたことで泣いてしまうゆきを、慰めるためにオレはよく頭を撫でてやっていたのだ。

今のゆきは、そんな昔とは違い、自分でなんでもできる強い子に成長していのだな。とオレは思った。


「ありがとう、お兄ちゃん!」


ゆきは笑顔を見せた。

その笑顔は、まるで夜空にまたたく星のように、きらめいていた。

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