第2話 回想:建国神話と紅月の誕生
どこの国にも、建国にまつわる神話、あるいは
美しく賢い仙女・
そしてまた、その満ち欠けを
この仙女・姮娥の加護を得て、
以来、宵国の皇家では、代々にわたって、祖神にも等しい存在として姮娥娘々を大切に
これに
祈りに訪れる人々が
――麦がよく
――家内が安全でありますように。
――
――良い職に就けますように。
――
――良縁が得られますように。
――子宝にめぐまれますように。
人々が姮娥に祈ることは様々だ。それだけ、この仙女が宵国で尊崇を集めているということだった。
一方で、月の仙女を
特に、満月が時ならず不意に欠けはじめ、やがてほの
紅月は、ただ目にしただけの者をすら不幸にする、
宵国の皇都・
夜空に
夕刻に女主人が産気づいてからというもの、いま、時刻はすでに真夜中に至るも、
そんな中、湯を満たした
「ひっ……つ、月が……!」
女の声につられるように、その場にいた何人かが、天高い位置の月を
そして、めいめいが息を
「しょ、蝕だ……!」
「月が欠けている……!」
誰も彼もが、慌てて顔を伏せた。
ここ宵国において、月蝕はなによりも不吉なものとされている。目にすれば、それだけで
しかし、蝕は不意に起きる。
だからこそ余計にそれは
だから、いま意想外の蝕に襲われた人々もまた、それぞれに、慌てて
が、今宵ばかりは、そうはいかない。お産は待ってはくれないからだ。
それがどれほどの時間続いただろう。
やがて、おあぁ、と、産声が上がった。
そのとき、まさに空の月は、
「なんと、不吉な……」
誰かがぼそりと言った。
すぐにその不用意な発言を
――……紅月の最中に生まれ落ちた赤子は、もしや、なにかの凶兆なのではあるまいか。
すぐに
凶を
そもそも、赤子の無事の成長を願って、生まれた子に
この日、皆既月蝕の
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