ある日突然異世界に召喚されたのでチートスキルを使ったら何故か魔王になりました

五三竜

魔王になるまで

 彼はいつも通り夕飯を食べて自室に戻り就寝した。


 一人暮らしの彼は特に縛られるものは無いため自分の好きなタイミングで何でもすることが出来る。


 しかし、それだと良くないのでルーティーンを作っている。


 そして、彼はいつも通り就寝した。


 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━それから何時間経過したのだろうか。どれだけ待っても一向にアラームがならない。


 彼は、疑問に思いながらも目を開いた。やはり、普段の生活習慣なのだろうか?決まった時間に起きてしまう。


 そして、彼は目を開いた瞬間驚きと困惑に包まれた。なんと、今いる場所が自分の部屋では無いのだ。それどころか、地球なのかすら怪しい。


 彼は起きるなり周りを見渡し確認する。しかし、これといって何かがわかる訳では無い。ただ、知らない場所に起きたらいた、という事実だけが突きつけられる。


 男はそんな状況になりながらも何とか理解しようと頭を回転させた。その瞬間、突如として後ろから声をかけられる。


「パンパカパーン!おめでとうございます!あなたは今異世界に召喚されました!あなたには異世界へ行き、その力を使って中に生きてもらいまーす!」


 いきなり後ろからそんなことを言われる。慌てて振り返るとそこには女の人がいた。その女の人は、面積の少ない服を着ており、何故か背中から羽が生えている。


 そして、その女の人はすごく興味深いことを言った。


「異世界?どういうことですか?」


黒山くろやまかける様、あなたは今異世界に召喚されたのです。そのため、あなたにはチートスキルと呼ばれるものを授け、異世界で自由に生きてもらいたいと思ってます」


「え?は?自由に生きるって、そもそも、異世界ってなんだよ?俺を元の世界に戻してくれ」


「それは出来ません。諦めて異世界に行ってください。それでは良い旅を」


「は?え?ちょっと待て……っ!?」


 翔が何かを言い終わる前に目の前の女は翔を強烈な光で包み込んだ。そのせいで目を開けることも困難となる。


 そして、光が収まり目を開けるとそこはさっきとは違った街のような場所だった。


「っ!?嘘だろ……!本当に異世界に来ちまったよ」


 翔はそう呟いて周りを見渡す。周りには普通に人が行き交っている。そして、その人達は自分とは違った格好をしてこっちを見ている。


「やべぇ、かなり浮いてんじゃねぇか……」


 翔はその事に真っ先に気がつくと、直ぐに周りになにかないか探した。すると、大きな建物がある。翔はそこに向かって走り出した。


 そして、その大きな建物に入ると中には多くの人がいた。その人達は皆武器を構えている。翔はそんな人達に気を使いがら真っ直ぐカウンターのところまで進んだ。


「やっぱりな。ここなら大丈夫そうだ」


 翔はそう言って微笑む。なぜなら、翔は知っていたから。だいたいこういう異世界に召喚された時はギルドに行くのが1番だということに。そして、ギルドには変な服を着た冒険者が多いことに。


 翔のその狙いは的中した。そして、そのままカウンターまで行きそこにいた女の人に話しかける。


「すみません。冒険者登録をしたいんですけど」


「あ、はい。分かりました。今すぐ準備をします」


 翔が話しかけると女の人は慌てて道具を持ってくる。どうやらサボっていたらしい。もしかしたらこの人が布面積の少ない水着でいるのはサボった罰なのかもしれない。まぁ、そんなことは今は置いておこう。


「では、ここに手をかざしてください」


 翔は言われた通り道具の上に手を置く。すると、道具から異音がなり始めた。そして、道具は光を放ち始める。


 翔はその光出目が眩み目を閉じた。そして、光が収まるまで待つ。すると、光とともに異音も次第に収まっていった。


 翔は光が収まると目を開ける。すると、その道具からカードが出てきた。女の人はそのカードを見つめる。


「はい。出来ましたね。ステータスは……え!?全部カンストしてる!?魔法も……この魔撃まげきってなんですか!?」


 そんなことを聞きながら相当驚いている。しかし、そんなこと聞かれても分かるわけないのだ。


「いや、知りません。これから色々頑張って改名していきます」


「分かりました!では、これから良い旅を!」


 ギルドの受付の女の人はニコニコ笑顔で翔を送り出した。


 翔はそれから街の外に向かった。なんせ、あの女神のような女が何もくれなかったからだ。金どころか武器すらもない。だから、金を稼ぐ必要があるのだ。


 と言っても、バイトをしたい訳では無い。あの女もゆっくり楽しめって言っていたからな。翔はゆっくり生きることにした。


 そして、そう思った矢先、早速モンスターに出会う。だが、それほど強そうでもない。翔はそう思って魔法を使った。最初はただの炎魔法だ。だから、それほど強いわけじゃないはず。なのだが……


 なんと、出てきた炎はとてつもない炎だった。まるで龍のいぶきのような炎だ。


「え……?」


 翔はその異常な威力に言葉を失う。そして、何故か自然と自信が満ち溢れてきた。


「俺って最強なんじゃね?」


 そう呟いて微笑む。その瞬間、何故かとてつもない殺気を感じた。振り返ると、序盤で出てくるはずがないほど強そうな人型のモンスターが居る。


 そのモンスターは悪魔なのだろうか?背中からコウモリのような羽を生やしている。


「お前か……とてつもない気を感じたから来てみたが……殺す!」


 悪魔は問答無用で殺しにくる。さすがにこれはまずい。翔は慌てて咄嗟に、『魔撃まげき』を発動した。


「”魔撃まげき”」


 すると、とてつもない力で圧縮された魔力の塊が黒い光を放ちながら悪魔に向かって放たれた。そして、その魔力の塊は悪魔にぶつかった瞬間爆発する。


「グギャァァァァァ!」


 なんと、たった1発で悪魔を倒してしまったのだ。


「え?もう勝ったのか……」


 しかし、これだけでは終わらない。気がつくと、後ろにさらに4人いる。さすがにこれはまずい。しかも、全員魔王の幹部のような趣をしている。


「あ、終わった……」


 翔がそう呟いた瞬間、その4人は突然翔の前で膝まづいた。


「「「魔王様!」」」


 そして、そんなことを言ってくる。


「え?」


 翔は訳が分からずそんな情けない声を出した。


「お待ちしてました!魔王様!」


「今すぐ城へ戻りましょう!」


「え?どういうことだよ……」


「なるほど。やはり転生の影響で記憶があやふやになっておられるのですな。大丈夫です。我らがサポートします。ささ、行きましょう」


 4人の中の1人がそう言って翔をどこかに向かわせようとした。そして、他の4人もそいつに触れる。すると、突然瞬間移動のようなものをして違う場所へと向かった。


 向かった先は魔王城だった。


「……やはり、魔王城も弾いたりしませんな。魔王様は本物のようだ」


 なんと、本当に翔は魔王らしい。何故か翔は異世界に召喚されて1時間も経過しないうちに魔王になってしまった。


 たった1回チートスキルを使っただけでも魔王になるなんて、とんでもなさすぎだ。だが、なんでか分からないがこれからすっごく楽しい生活が待ってそうだ。


 だが、その話はまた別の話。

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ある日突然異世界に召喚されたのでチートスキルを使ったら何故か魔王になりました 五三竜 @Komiryu5353

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