間章

 ワンルームの中心にベッド、テーブル、冷蔵庫にシンク。その部屋はやけに寂寞としていた。家具は単身者用に整えられているが、雑誌のモデルルームをそのまま切り取ってきたみたいに生活感がない。遮光カーテンは人目を憚るかのように閉め切られていて、僅かな隙間から地方都市のさびれた夜景をのぞかせている。


 ナイトライトの薄明りに照らされたベッドに、女がひとり寝そべっていた。マットレスの周りには、破れたシャツやストッキングの切れ端がゴミみたいに散らかされている。


「なあ、赤坂。もういいだろ」


「大胆なんだから……」


 赤坂と呼ばれた女は息を荒くして、僅かに頬を染め、潤んだ瞳で隣に座る人影を見つめた。吐息が交わるほどの距離で二人はむつみ合う。薄暗い部屋に嘲笑が響いた。


「ったく。こんなことしてよ、不良教師もいいとこだな?」


「教師だって人間だもの、聖職者じゃないわ。それに、貴方が相手だからこんなことするのよ」


 赤坂は妖艶に微笑むと、一糸まとわぬ姿をさらけ出す。煽情的な下着を脱ぐと豊かな胸が零れ落ちた。乱暴に肢体を押し倒し、白くて柔らかそうな太腿の奥へ手を伸ばす。


「そんなこと言ってさ、誰にでもこういうことやってんじゃねえのか」


 嘲るように笑って身体を押さえつけた。こうして赤坂が誘ってくるということは、自分には存在価値があるということだ。どんな形であれ必要とされている。それがほんの少しだけ、自分の心を慰めてくれた。


 意地の悪い笑みを張り付ける。それから自分に染みついた暴力と血飛沫の匂いがちゃんとごまかされているかどうか考えた。先程安西を殴ってきたばかりだ。抵抗してきたので気絶するまでやりあった。


 だが赤坂は、自分の匂いなどには関心無いようだったので、思考を放棄してその肉体に手を伸ばした。

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