第4話「バスケ」
雨がしとしとと降っているある日、体育の授業でバスケが行われることになった。
私はバスケ部なので、たまにこうして授業でバスケが行われると嬉しくなる。体育は好きな授業だ。たくさん身体を動かせるし、汗をかくと気持ちがいい。授業が全部体育にならないかなと思っていた。
「よーし、今日は男女混合でチームを組んで、試合をしてみようかー」
体育の先生がそんなことを言った。なるほど、男女でチームを組むのか。私はバスケ部ということで、友達から「一緒のチームになろー!」とたくさん誘われた。ふふふ、頼りにされているみたいでなんか嬉しい。
みんなで話し合ってチームが決まり、コート二つを使って試合が行われることになった。私は準備をしていると、
「――あ、若月がいる」
と、声をかけられた。見ると白石くんが笑顔でこちらを見ていた。
「あ、白石くん、相手チームなんだね、負けないよ!」
「お、おう、若月元気だな、その元気がいつもの授業であればいいのに」
ぐ、ぐぬぬ、気にしていることをサラリと言ってきたな……! よし、白石くんに勝ってやる。私は気合いが入った。
試合が始まった。ジャンプボールを制した私のチームのボールとなった。みんなでパスを回して、私のところにボールがやって来た……と思ったら、目の前に白石くんがいた。
「……若月、勝負しよう」
「……うん、負けないからね!」
白石くんの方が私よりも身長は高い。高さでは勝てない。私はパスを出すように見せかけて、右にドリブルを仕掛ける。白石くんもピッタリとついて来る。むむ、やるな……では……と思って、チラッと仲間の方を見ると、一瞬白石くんの視線が動いた。その隙を見逃さず、ドリブルを左手に変えて左から一気に白石くんを抜く。そのままゴール下に来たのでレイアップシュート。ボールはネットに吸い込まれた。
「よっしゃー! どうだー!」
「くそぅ、若月上手いなぁ。まぁバスケ部だから当然か、でも負けない!」
今度は相手チームのボールとなる。どんどんパスを回していたが、白石くんにボールが来そうになった一瞬の隙をついて私がパスカットする。前に走り出した仲間にすぐ素早いパスを出した。仲間がパスを受け取ってシュートを放つ。ボールはまたネットに吸い込まれた。
「や、ヤバい、若月さんが上手い!」
「すごいすごい! 若月さんナイスー!」
仲間に褒められて、嬉しい気持ちになった。
その後も私はドリブルで切り込んでシュートを放ったり、鋭いパスを出したりしていた。
そして試合が終わる。私のチームの勝利となった。
「ふっふっふー、白石くん見た!? 私だってやればできるんだよー!」
「ああ、負けたよ。すごかった、さすがだな」
白石くんはそう言って、私の頭をなでなでしてきた。
「……え、え!?」
「今日は負けたけど、テストじゃ負けないからね」
そう言って白石くんは男子の輪の中に入っていった。
「……若月さん、どうしたの? なんかボーっとしてるけど」
友達に言われてハッと気がつく。わ、私はちょっとボーっとしてしまった。白石くんが褒めてくれた……のかな……ちょっと恥ずかしい気持ちになった私だった。
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