第2話「メッセージ」
(はあぁ、白石くんのノート、いつ見ても美しいなぁ)
ある日の夜、私は自分の部屋でそんなことをボーっと考えてしまった。いかんいかん、危ない人だ。人のノートに恋をしているなんて、恥ずかしくて誰にも言えない。
(……それに比べて私のノートは……なんだこれ、なんて書いてあるんだろう)
自分のノートを見ながらはあぁとため息をつく。今日も先生の言葉は催眠術だった。なんでみんな眠くならないんだろう。いや、私と一緒で寝ている人もいるか。そう思うとちょっと安心した……って、安心してはいけない。
(……それにしても、白石くんは真面目に起きて授業受けてるんだよね、すごいなぁ、今度『眠くならないの?』って訊いてみようかなぁ)
その時、私のスマホが鳴った。私は中学生だが、親に許可をもらってスマホを持たせてもらっている。クラスでも持っている人は多い。さすがに学校で使うと怒られるのだが、みんなこっそり持って来てこっそり使っているみたいだ。私もその一人だった。
スマホを見ると、RINEというメッセージアプリにメッセージが来ていた。誰だろうかと思って開いてみると――
「……え、え……!?」
そこには『白石悠斗』という名前があった。どうやら白石くんが送ってきたみたいだ……って、あれ? 私と白石くんはRINEを交換していなかったはず。それなのに白石くんから送られてきている? え? どういうこと?
おそるおそるメッセージを開くと、
『こんばんは、白石です。友達に若月のアカウント教えてもらった。ごめん急に送ってしまって』
と、書かれてあった。な、なるほど、クラスメイトの誰かから教えてもらったのかな。それはいいんだけど、どうしよう、なんて返事すればいいのだろうか。白石くんが送ってきたメッセージを見ながら私はぐるぐると考えてしまった。や、ヤバい、既読になっているはずだから早く返事しないと。
『こんばんは、ううん、大丈夫だよ、どうかした?』
私は普通過ぎる返事を送ってしまった。ま、まぁ、質問しているし返事が来るんじゃないかと思っていると、すぐに返事は来た。
『授業中に若月がまた寝てるの見てしまって。またノートとれてないでしょ?』
白石くんの返事に、私はドキッとしてしまった。み、見られていたのか……うう、恥ずかしい……。
『はい……今ノート見てたんだけど、何書いてあるのかさっぱりで……』
『やっぱり……あれだけ寝るなと言ったのに』
『す、すいません……』
すぐにでも土下座したい気分だった。
『まぁいいや、明日ノート見せてあげるよ。早めに学校に来て。俺も行くから』
白石くんのメッセージを見て、私は飛び上がりそうになった。ま、またノート見せてくれるのか、嬉しい……あの白石くんの美しい字が見れるのだ……って、やっぱり危ない人みたいだ。
『ありがとう! このお礼はいつか必ず……!』
『いいよ、気にしないで。それよりも、若月は授業中に寝る癖を直すこと』
『は、はい……分かりました』
『……まぁ、怒ってるわけじゃないから。じゃあまた明日学校で』
『うん、ありがとう~!』
RINEのやりとりが終わって、私はどこかフワフワした気持ちになった。白石くん優しいな、こんな私も見捨てないでいてくれて……ん? 別に見てるとか見てないとかそういう話ではないのかな? よく分からなくなってきた。
その後ふふふと笑いながら、白石くんが送ってきたメッセージを見ている私だった。
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