028 - 小人獣化
ある意味これがギルドの三人――後からブリッツ師匠にも見てもらった――を一番驚かせた。
私自身も初めて試した
ちなみに私がバイラン様にかけた
ただ、上半身の衰えが下半身について来ないと半ばボヤかれたので、背中を中心に
「さてさて。色々見させてもらったが……ミアよ、お主もはや人間辞めとるの! プルクラの乗り心地も快適な上にあの速度! あんなに愉快な気持ちになったのは久しぶりじゃよ!」
「ウチもたのしかったのー! ばばさまこんどもりまでいっしょにあそびにいくのー!!」
私が首から下に
おまけにプルクラはすっかりバイラン様に懐いてしまい、足元に伏せて時折彼女の足に顔を擦り付けていた。強いものには服従するという野生の本能が働いてるのかな……。
一瞬途切れた会話の隙をついたのはブリッツ師匠。私と視線をしっかり合わせて、諭すように言った。
「ミア・ラキス。バイラン様も仰っていたが、お前の技能はかなり特異なものゆえ、迂闊に使わないようにな」
「っ! はい、師匠。気をつけます。助言感謝いたします!」
「うむ。元気があってよろしい! 以後も励むといい」
最後の最後でブリッツ師匠に褒められるという『ご褒美』をいただき、こうして波乱の一日が終わった。
「ではバイラン様、今日は色々とお世話になりました」
「こっちこそ有意義な時間じゃった。何か困ったらいつでも来るんじゃぞ」
「プルクラちゃんも、今日はありがとうございます。お肌のこと、またよろしくお願いしますね!」
「ウチにおまかせなのー!」
一通り挨拶を済ませ、ギルドを後にしようかと思えば、ミモ姉が大事なことに気づく。なにかあったかな?
「キワタリカメレオン、どうするかなぁ……」
「あぁ……そんなものもあったね、そういえば」
「もも肉はウチのなのー!」
これ以上の面倒事、つまり解体作業をする気力も無くなった私たちは、ギルドに解体をお願いして、じっちゃんの待つ我が家へと急いだ。
† † † †
なんだかんだで家に着いたのは夕飯前。普段の食事は私が担当だけど、今日はさすがに疲れて作る気力もない。ならばと商業区画まで足を伸ばしておかずを購入。スープだけは簡単なものを作れば立派な夕食になる。
プルクラのご飯だけは自作なので、これはミモ姉に任せることにした。とはいえやることは肉を食べやすい大きさに切って、野菜と獣骨を少し付け合わせるだけなんだけど。
夕食を囲みつつ、じっちゃんに今日の報告をしたのだが、もちろん話題の中心は『
「ギルドマスターも知らないなら、都のお偉いさんレベルじゃないと無理だろうなぁ」
「でもよゼルじい。行ったら行ったで下手したら大神殿に軟禁されちまうぞ」
えらく物騒な話に身をすくめれば、隣で大人しくご飯を食べていたプルクラが頬を一舐め。ありがとね、心配してくれて。私も頭を撫でてお返しする。
「そもそも
「だよなぁ。でかくなるたび服が破けたら、いくらあっても金が足りなくなるもんな」
まぁお金はさておき、なんといっても恥ずかしいからね。大きくなればなぜか恥ずかしくないんだけど、いざという時に躊躇したら意味がない。
ふとじっちゃんを見ると、考え事をしているのかフォークを持つ手が止まっている。
「どうしたのじっちゃん?」
「……確か
「「……」」
「……あれ? 違うのか?」
大きくなれるというその一点ばかりに気を取られ、小さくなれるという可能性に思い至らなかった。確かに生き物の理から逸脱して大きくなれるのなら、小さくもなれる……のかな?
しばしの静寂を破ったのはプルクラ。動物だから表情は乏しいが、代わりに尾はもうやる気満々で、それを見て可能性は確信に変わった。
「ふたりでやってみるのー!」
互いに顔を向けて一つ頷いた後、小さくなるなら頭に浮かんだこの言葉しかないとそれを叫んだ。
「“
うん、小さくなることしか頭になくて、服を脱ぐの忘れていたよ。
途端に視界が真っ暗になり、巨大な布と化した服をかき分け這い出れば、はるか上空に二つの絵に描いたような驚愕の顔。
「っ! ち、ちっせええぇぇぇ!」
「ミア……お前、人形みたいになっちまったな……」
「そ、そうかな……って二人ともでっか!」
「「いやいやミアが小さいだけだから」」
「ふたりとも小さいのー!」
じっちゃんに大きさを測ってもらったところ、現在私の大きさはなんと身長およそ30センテ。約1/5ってところだ。ちなみにプルクラも同じ比率で小さくなっていて、体長およそ20センテ。
私はじっちゃんの、プルクラはミモ姉の手のひらに乗せられて、まじまじと熟視される。人ってでかくなるとこんな風に見えるのか。まぁ実際は私たちが小さいだけなんだけど。というか家も広いしテーブルも大きい。並んだ夕食も食べきれないくらいだ。
「ミア、お前これなら潜入作戦とか、余裕で出来るんじゃないか? あ、でもそんな小さな武器も胴具もないか……」
「まぁ武器は儂が用意してやろう。その手の大きさだと……刃渡り6センテくらいか? 作るのは大変そうだが面白そうだ。胴具なんかはドルドにでも相談してみろ」
「ありがとじっちゃん……というかこうして爪も生えてるし、大丈夫な気もするけどね」
「ミア、試しにプルクラとちょっと走ってみ」
ミモ姉の提案に乗り、部屋の中を一通り走ったり跳んだりしてみるが、大きな二人の視点からすると、驚くほど速いものではなかったらしい。
元が小さいのだから当たり前だ。つまり、歩幅も1/5になるわけだからね。動きとしてはネズミよりもすばしっこいくらいだったそうだ。
「それでも充分すぎるだろ……ま、とにかく今日はこれくらいにしてさっさと飯食っちまおうぜ!」
「じゃあちょっと部屋に戻るね。恥ずかしいから」
一度自室に戻って
1/5の大きさだと、二階に上がる階段すら高山を登るくらいの規模だけど、馬鹿げた身体能力のおかげなのかポンポンと跳躍で上がることが出来る。
ふと後ろを見れば、一緒になぜかプルクラも着いて来る。君は元から裸だから大丈夫でしょ? 先にご飯食べててもいいんだよ?
「つくえの上から気になるにおいがするのー」
「えっ……どれのこと?」
私の机なんて神獣様の像と帳面――こう見えても日記的なものをつけている――とミモ姉が遠征先で買ってきた変なお土産と、あとは……。
「これなのー。こんどもりに行くときにもってくのー」
そう言ってプルクラが咥えてみせたのは、あの謎の
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます