026 - 再生魔法? ではない
「――という訳で、
ようやく私の頭も整理が出来てくる。一口に
ちなみにタイゴニアにそのレベルの魔導師は一人しかおらず、司教様の孫娘が
つまり、もし私がバイラン様の膝の痛みを緩和できてしまったら「確実に大神殿行きになり、宮廷魔導師にならなくてはいけないじゃろうな」とバイラン様は言う。
「ミアは大神殿行きは避けたいんじゃったな? 宮廷魔導師になれれば将来は安泰……いや、そこを辞めたわしが言うことではないの」
「祖父の跡を継いで鍛治士になるのが私の望みですから」
権力争いに嫌気が差し、筆頭宮廷魔導師を辞したバイラン様の話を聞いて「宮廷魔導師になります」とはならないよね。そんなギスギスしたところに行くのは絶対に嫌だし、私には『じっちゃんのような鍛冶士になる』という夢があるのだ。
「なぁラン
「それは無理じゃな。仮にミアが
「? 少々お待ちく――」
言い終わる前に既にアルビさんは、部屋の隅にある聖蘭珠で更新作業をしている。その顔つきはとても綺麗で、少女のようなハリのある肌が一層彼女の魅力を引き立てる。うん、
手際よく作業を終えた彼女はこちらに戻り、なんとも言えない表情を浮かべながら、バイラン様に一枚のメモを差し出した。
「……ギルマスはこれを見越していたのですか?」
「どれ……ふむふむ、やはりな。ミア、お主、大神殿は行かんでも良いぞ」
「はい……?」
バイラン様がテーブルにポイっと投げ置いたメモには、更新された私とプルクラの情報が記されていた。
氏名:ミア・ラキス
性別:女
種族:ヒト族
年齢:15
職号:
職業:見習鍛冶士・冒険者(Fランク)
技能:刀剣鍛治・双短剣術
名前:プルクラ
使役者:ミア・ラキス
種名:フクロオセロット?
登録:冒険者ギルド・ティグリス支部
技能:
特記事項:技能追加の兆し有
「お! 私が名付けた『
「ほんとだ……ミモ
あの大きくなるやつ、正式名称に……って私とプルクラの名称、微妙に違う。まぁ私は人間でプルクラは動物だから、こういう名称になるのか。
それはさておき、どうして大神殿行きにならないんだろうか。国民証にしっかりと
「さてさて。疑問だらけといった顔じゃなミアよ。わしも聞きたいことはあるし、順番に行こうかの。まず大神殿行きにならない理由……それは
「! でもラン婆様! ミアが
「なるほど……さすがギルマスです」
魔法ではなく技能だから。
これの何が違うのか、私にはわからんちんだけど、三人には分かっているようだ。
「つまりの。魔法系職号は『魔導師』『大魔導師』『聖女』『大聖女』『神官』『聖騎士』……とまぁ色々あるんじゃが、大神殿行きになるのはいずれも魔法系職号限定なんじゃよ。ところがミアの
「なるほど……?」
要するに『魔法じゃないし職号も一般職だし』って言い訳ができるから、今は黙殺しておけば問題にはならない、ということ?
バイラン様もこう仰ってるし、いざとなったら冒険者ギルドがなんとかしてくれるのかな。
「そういうことじゃな。もちろんギルドとしてお主の身の上は最大限庇護するつもりじゃよ……さてさて。今度はわしの番じゃ。
「えっと、それは――」
「すごいんだぞラン婆様! その名の通り、巨大化できるんだよ!」
「は? ミモザさん貴女一体何を――」
「おっきくなるのー!」
そう叫んだプルクラの身体はむくむくと大きくなる。
あ、この部屋だとあの大きさが収まらないじゃない! ちょっと待ってプルクラ! ……ってあれ?
村まで帰ってきたあの大きさの半分ほどで大きさが止まる。約2メルトでもこの執務室いっぱいになるのを見ると、改めてあの4メルトの大きさのプルクラがいかに大きいのかがよく分かる。というか大きさって自由自在なのか……。
「ちょ! プルクラちゃん!? なんですかそれは!?」
「プルクラよ……お主何者なんじゃ? まぁこれもミアの
「な? すごいだろ!? ほんとはさ、この倍くらいまで大きくなれるんだぞ! 現にビャッコの森から
「「……」」
静寂。
まさに静寂が執務室を支配する。
そうなるよね。私がお二人の立場ならそうなるに違いない。
「ミアよ……ちょっとお主の言葉、借りるぞ。もうわしらにもわからんちんじゃよ」
「ですよねー……あははは」
「つまり、このようにミアさんも大きくなれる、と?」
「はい。試していませんが、出来ると思います」
なぜ試さなかったのかと当然聞かれるが、衣服が
「確かにミアさんも成人したてとはいえ大人の女性ですから、それは恥ずかしいですよね」
「それに対応できる素材なんか聞いたこともないもんな……」
「でも、冒険者ギルドとしては実際に見てみないことにはのう……」
偶然だけど、今ここにはプルクラ含め女性しかいない。いっそのこと全部脱いで試すのは吝かではないが、如何せん執務室は狭すぎる。どうせやるなら最大まで大きくなってみたい。
「それならいい方法がある。でもその前に……わしの膝に
「あっ! そうでした。では試してみますので、ローブを膝まで捲っていただけますか?」
「あいわかった……これでいいかの?」
「母さまがんばるのー」
時々じっちゃんも「若い時ほど膝が曲がらんから仕事がきつい」と零すことがある。その度に私は膝を摩ってあげているのだが、これが成功すればじっちゃんも仕事がしやすくなるだろう。だから何としても成功させたい。痛くない膝とそのイメージ……私みたいに自由に痛みなく曲がるのをイメージして。そしてバイラン様の両膝にそれぞれの手のひらをそっと添える。
「ではいきます……“
その刹那、バイラン様の足全体が火照るように赤みを帯び、血色鮮やかに変化した。
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