第54話
木を切り倒し、柵を作る
ゴブリンが大量に集まるまで、一旦パブロペトリに帰還する
ホーソンさんに頼み込む。
「…正直、セントーラス号をそんな用途に使うとは。」
ホーソンさんは渋い顔だ
「あれは残された最後の船です。海中都市もそのうち使えなくなります、あの船が技術の最高峰です。今の工業技術では、まだ船を作れません。竜人族の誇りであり象徴です。エルフの世界樹のようなものです。」
「自分が、命に代えてもあの船を守ります。」
「物騒な台詞ですね。普通の人が言っても説得力がありませんが、トラフォードさんが言うなら、信じる気が起きてきます。」
「じゃあ。」
「ダンジョンの調査の任務に加えて、地上の緑化を承認します。」
「やったな、トラ。」
「トラフォードさん、おめでとうございます。」
「本当に乗るのか?」
「ああ、最後まで見届けさせてくれ。」
「解った。」
「あっ、装甲車Ⅱに報告書の書きかけがあるんだ。船で残りを書くから持ってきてくれないか?」
「なんだ、そんなこと、戻ってから書けばいいじゃないか。」
「船の中で暇だろ。大丈夫だ、
「しょうがねえな。」
カンプはセントーラス号を降りた
「レナーレさん、急ですが、出航してください。」
「いいんですか。」
「はい、お願いします。」
なぜだろう、船とカンプ、片方しか守れないような気がする
セントーラス号が
「回収が完了しました。」
竜人が知らせてくれる
セントーラス号が飛ぶ
少しだけ船底を開けて、
ボンボネーラ、アガルタ、パブロペトリ、広い範囲をくまなく飛んで、次は海を越えてミュルクヴィズ方面だ。
装甲車Ⅱに入ると、報告書の束と、手紙があった
「ん、俺宛ての手紙だと。」
カンプは報告書の束をぺらぺらとめくった後、手紙を手に取る
「ほうほう…。」
手紙にはカンプと会った時から今までのことが、事細かく書いてある
大急ぎでそれを読んでいると船は出航してしまった
「あっ、俺を置いていくって、どういうこった。」
怒りに任せて手紙を振り回すと、最後の頁が落ちる
それを見ると謝罪の言葉が書き綴ってある
もう一度それを拾って読むと、手紙を詳細に読み込んでいく
なぜかカンプには他の人への伝言みたいなものも託されていた
キングストン宛て、ルジキニ宛て、イドゥナ宛て、ボンボネーラの知人相手に伝言が頼まれている
その次にミュルクヴィズの人たち宛てに、スタン、サンシー、リュイス、ウェンブリー
パブロペトリの人々宛てが入っていた
ホーソン、レナーレ、キャロウ
アガルタのサンティ宛てもあった
それらを読んだあと、再び手紙を読み返した
また、報告書を読み返し、手紙を読みなおすのであった
兜で
突然、それが途切れる
なんだ、どういうことだ
「異常発生、
声が聞こえる
「監視映像はどうだ。」
「ちょっと、外が明るくてよく判らんな。」
「安全確保のため船底を閉めてから、確認しろ。」
「了解。」
「確認に行きます。」
「注意する様に。」
「「はいっ。」」
2人の足音が聞こえる
困ったな
車椅子に座って、兜が接続で、あっ、発声装置がある
ドガン、ゴロッ
あれっ、どうしたんだ
よく解らないが、何が起きた
体が転がったことが音でわかる
「そこを動くな。」
なんだ、誰の声だ
だれに言っている?
「おい、抵抗しても無駄だ。この剣を観ろ。」
「ビリビリビリ。」
「なっ、電撃。」
「そうだ解るか。」
「言うことを聞かなければ、ここをぶっ壊してやる。」
「何をする気だ。」
「まず、通信を切れ。」
「何、」
「早く通信を切れ。」
「解った。」
「あそこへ向かえ。」
「無駄だぞ、この船は攻撃力もないし、高度な安全運転が保証されている。」
「俺が世界樹へ神風攻撃をするとでも思ったか。俺らを舐めんな!」
バゴッ!
悪いやつらが、レナーレさんを脅迫している?
電撃剣?
「おい、殺したら拙い。」
「ああ、解っている。」
「おい、時間はどれだ、言え。」
「あれだ、AD3858年2月6日15時04分34秒」
「分と秒だけで良い。」
デジタル時計か、アナログ時計でないやつだったな
ADか、なんだっけ、BCの反対だったな
AD、BCはなんだったかな
『簡単に言やー、ADは神様以降ってこった。』
『神様?』
『おうよ、俺は視たことも会ったことも触ったこともねえけどよ。』
『そうなのか。聞いたことはあるのか?』
『聞いたことがあるってのは、よく記録にあるぜ。神の言葉が聞こえることがあるそーな。奇跡とかもな。』
『どこにいるんだ。』
空を指さすカンプ
はっ、現実逃避しているな
どうなっている
「そうだ、この高度と速度を維持しろ。今言った時間で1周するように世界樹の周りを周回しろ。」
「何をする気だ。何の脅迫だ。」
「今更そんな必要ねーぜ。世界をぶっ潰してやる。それから俺たちの思う世界に作り上げる。」
敵は、2人か
どうすればいいんだ
応援は
無理っぽいな
時間稼ぎか
それはレナーレさんも考えているだろうけど
あいつら何がしたい?
自分に何ができる?
「おおぅ、何だ。」
「はっはー、やっと気づいたか。そうよ。揺れてるだろ。」
「お前ら、よくもこんなことを。なんてことを考えてる。」
「お褒めに預かり恐縮だ。そうよ。世界樹を折っちまうのさ。」
「何故だ、共振するはずないのに。」
「はーっ、設計時はそうだったろうよ。維持管理もされてねえ建造物が、いつまでも強度を保つはずねーだろう。これでミュルクヴィズは終わりだ。あとは仲間をあつめてボンボネーラを落としてやる。アガルタやパブロペトリにいつまでもでかい顔はさせねーぜ。」
「お前、しゃべり過ぎだ。」
こいつら、いかれているけど本気だ
どうしよう
切羽詰まってきた
くっ、体さえ動けば、動け、動け、動け、動け
何か見えないかな、外の世界を見せてくれ、目よ見えろ
見えろ、見えろ、見えろ、見えろ…。
「奇跡だ。」
小さな声がでてしまった
「ん、だれかいるのか。」
やばい、どうしよう
「おい、ほかに誰かいるのか。」
「…。」
「答えろ!」
バスッ。
「やめろ、殺すんじゃない。」
「落ち着け、任せろ。」
そいつは冷静に、椅子に座っている竜人の死体に止めを刺す
「これか。」
やばい、からだよ動け
動け、動け
奇跡よ、もう一度
「こいつか。」
おおぅ、もうこれしかない
「ハムデン、そこまでだ。」
大声を出す
右目には2人の改造獣人が見える
一人は改造獣人1号だ
そして、2号だが、
口から上の顔が、
まさに怪物だ
「どこだあああ、てめええ。」
「落ち着け。」
「そんな姿になってまで生きたいか。」
「うるせえ、てめえ、いったいだれだ。どこにいる。」
「口に食らった剣は美味かったか。」
「なんで知っている!ふざけんな。」
「横になった世界で、ものの見方は変わらなかったのか。残念なやつだ。」
「余計なお世話だ。」
「腹に食らっても死なねえ、手足を切られても死なねえ。口に食らっても死なねえ。そこだけはすげーよ。」
「これか。」
改造獣人1号が発声装置を叩き切る
そして、こちらに向かってきた
あぅ、やべー。煽りすぎかな
剣が振り下ろされる
背骨が切れる音がする
ん、足で踏み踏みされているのかな
あっ、宙を舞っている
どうなっている
血まみれの下半身は床にあるのに…
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