第45話

「コシュタガンケンも運んでくれればいいんですけど。」

「縦割りの部署だから融通がきかねえんだ。諦めろ。早く行け。」

「判りました。」

兜を被って、考えた通りに機械人形メタルゴーレム改が動く

兜から紐がつながって、コシュタガンケン内の表示装置に目が見たものが映されている

「そこが歩きやすい。5時の方向だ。」

カンプは全方向を見ている

こっちは、左目に映った視界だけだ

より深く、海の底へ歩いていく

「この状態はセントーラス号でも解ってますよね。」

「ああ、ここから転送している。いざとなったら機械人形メタルゴーレム改を回収するはずだ。」

「カンプと自分は。」

「…。さあな。とっとと進め。」

進んでいくと、海底に穴が見えてきた

「あったぞ。」

「やはり、黒い点々が見えます。」

「近寄れ。10時の方向だ。」

「了解。」

黒い点々は蝦蟇の子だった

穴の中はさすがに見えない

「ちょっと待て、光源点灯。」

機械人形メタルゴーレム改の胸部から発光する

穴の中に入る

「黒い蝦蟇の子が不気味ですね。」

「不吉なことを言うな。」

穴の中を奥へと進む

おや、上にあがるぞ

少し上方に歩くと、空気が溜まっているところへ出た

「蝦蟇がいます。」

そこには巨大な蝦蟇がいた

「どうします。」

「何匹もいるな。奥に進むしかねえな。邪魔する奴はぶん殴れ。」

時折いる蝦蟇を殴り飛ばしながら先へ進む

ビチャァ!ビチャァ!

機械人形メタルゴーレム改の体中に蝦蟇の舌がぶち当てられる

「気持ち悪りーな。」

進むと水面が見えてきた

「どうします?」

「ここまできたら進むしかねーだろ。行け。」

足を一歩一歩進める

蝦蟇親子以外の怪物がいる

なんだこれは

「おいなんだ。これは、見たことねー怪物だらけだ。こりゃあ、もしかして魚か?」

「何ですそれは。」

「話はあとだ。2時方向からやばそうなのが来てる!」

「何だこの触手は、ちっ、爪がある。」

ガリッ、ガリッ。

機械人形メタルゴーレム改の外装が削られる

「どうします。」

手足を動かして逃れようとするが、触手だらけだ

何本あるんだ?

とても逃げきれない

「しょうがねえ、トラ、食われろ。」

「へっ、何を。」

「9時の方向に口らしきものがある。食われろ。」

「すべてはカンプの責任です。行きます。」

怪物に機械人形メタルゴーレム改が飲み込まれる

口の中、かなり広い

攻撃されなくなった

「これからどうします。」

「ちょっとまて、今調べている。」

とりあえず、しっかり立とうとする

まわりを肉の壁で包まれて、動きにくい

「おい、勝手に動くな。7時の方向を向け。」

とりあえず、必死に動く

「違う違う。1時の方向で、少し前傾姿勢を取れ。」

「こうですか。」

体を傾けると胸部より放射光が発射された

白一色、それが消えると気泡と焼けた肉塊、肉壁

「うわっ、言ってください。視界が見えないです。」

「こっちで見えてっから安心しろ。動いている心臓らしきものをやった。その穴から出れるか。」

肉の壁を押しのけて、そいつの体内から這い出す

触手はまだ動いている

「これ以上はやばくありません。」

「確かにそうだな。空気溜まりまで戻れ。」

「蝦蟇の舌が気持ち悪いですよ。」

「がまんしろ、それくらい。」

上にもどると、蝦蟇が寄ってくる

舌がべちべちと触れてくる

「これからどうしましょう。」

「竜人たちの意見を聞いてみるか。」

「えっ、それじゃあ。」

「俺はここに居るから、お前外に出て話して来い。」

コシュタガンケンからでるとセントーラス号が近寄ってくる

やがて船体下部から檻のようなものが出てくる

「トラフォード。」

「レナーレさん。」

「こっちは空気溜まりが解消されれば良いと考える。」

「そうですか。」

「すまないが、掘って怪物が通れるようにしてくれ。」

「判りました。」

コシュタガンケンに戻る

「どうだ。」

「空気溜まりの岩を掘って怪物が通れるようにしてくれ、だそうです。」

「やはりそうか。がんばれ。」

「はあ。」



30日以上かかった

昼は自分が操作して、夜はカンプが操作した

やがて、自動で掘る工程を覚えさせて、それからは監視しているだけになった

1日に1回、セントーラス号が見に来てくれた

食料も投下してくれる



「こいつですよ、あの大物。」

「そうかあ」

「しかも、前パブロペトリの海岸で見つけたやつです。どうです。」

「こいつが大きくなったら、あれかあ。しかし、うめえなこれは。」

「そうですよね。おいしいですよね、これ。」

すべての作業が終わり、撤収する前日

ダンジョンからでる怪物を味見していた

「これで海も豊かになるんじゃないですか。」

「そうかもな。」

「いいことですね。」

「まあな。」

「どうしたんですか。」

「ん、いやなに、上手くいっているときほど用心する必要があるのさ。」

「そうなんですか。」

「人生、長生きしていると、そういうもの解ってくるものさ。」

「…。」

カンプの予言は当たっていた。


翌日、パブロペトリへ戻ると、ホーソンさんに呼ばれる

そこにはホーソンさん、レナーレさん、キャロウさんがいる

ホーソンさんが話し出す

「今回、海のダンジョンの機能回復について、君たちには非常に世話になった。パブロペトリを代表して礼を言う。」

レナーレさんが喋り出す

「あなたたちが帰ってくるということで、ゼルズラおよびハムデンのダンジョンを偵察してきました。」

「それでどうなんてんだ。」

「まず、ゼルズラには木こりたちがいるようです。」

キャロウさんが言う

「木こりはボンボネーラが正式に送り出したものではないと思います。まだ、そんな話は聞いていません。推測ですが、噂を聞いて集まって来た漂流民だと思います。まあ、アガルタやボンボネーラからの人間もいるとは思いますが。」

「そして、この木こりたちは山賊の支配下にあるようです。およそ40数名。」

「?!」

「それは間違いねーか。」

「間違いありません。獣道ができて、人や物資の行き来を確認しました。」

「山賊とは限らねーんじゃ。」

「現在、アガルタとパブロペトリ間の隊商は行方不明です。」

「…いつから、」

「かなり前から、襲われることがあったのですが。この数十日、全くやりとりができてません。」

「ボンボネーラとアガルタの行き来が無くなって、情報が来なくなったからな。」

「この情報は、ボンボネーラは、」

「定期便が来たら伝えますので、15日、いや20日以内には伝わると思います。」

「パブロペトリとしては、ボンボネーラと情報共有のうえ計画的に行動したいと考えている。」

ホーソンさんがのたまう



いつもの部屋に泊まる

「カンプ、どう思う。」

「パブロペトリの考えは間違っちゃいねえ。」

「じゃあどうなる。」

「アガルタは、…中の住人は関係ねえ。関係なくもないが。問題は外の獣人だ。」

「外の人たち。」

「ああ、最悪そこいら辺まで山賊の支配下になる。」

「逆に、今まではどうして安全だったんだ?」

「今まで隊商をやってた護衛らがボンボネーラに行っちまったからだ。」

「…そうだったのか。」

「近い将来、山賊の国ができて、そこを通してアガルタと交易だな。パブロペトリもミュルクヴィズも単独では行動できなくなるな。」

「ボンボネーラはどうなる?」

「現時点で影響は少ない。」

「そうか。」

「しかし、ゼルズラの木材資源は山賊のものだな。」

「なんてことだ。」

「ゼルズラの蝙蝠、羽民ハーピー、木材、ちょっと離れた近海の蝦蟇、これらは山賊のものだな、さらにアガルタの農産物もそうなるかもしれねえ。」

「…。」

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