第44話
「あいつらはよ、金のためにこの星を、すべての生命を滅ぼそうとしたんだ。そのくせに、まさか復興に手を貸すなんて、そんなことはねえよな。」
「カンプ、落ち着け。」
「ん、まあ、そうだな。そんなことありえねえよな。」
「おお、そろそろ海が見えるころだ、蝦蟇でも食って一息つこう。」
「そう、そうだな。」
ミュルクヴィズに到着した
「マクシミールを探そう。」
ひさしぶりのマクシミールは少し胸が膨らんでいるように見えた
「マクシミール、もしかして、そうなのか。」
「ええ、あなた大当たりよ。」
「整理券を配ってるだけじゃなかったのか。」
「あたしはリュイスみたいに面倒なことは言わないわ。」
「地図を、衛星画像を確認したい。お願いできるか。」
「いいわよ。」
「助かる。」
「もう、ここで暮らしちまえよ。」
カンプが言う
「ここじゃあ、どうやって子供を育てるんだ。」
「子育てしたい人が育てるわよ。」
「それは、まさか両親以外でもか。」
「そうよ、特に問題はないわ。遺伝子的には同じだし、熱意ある人が育てる方が良いんじゃない。」
「驚いた。」
「こりゃあ、ぶっとんでんな。」
「普通は相方だけど、今回はどうしようかしら。」
「トラ、どうするよ。」
「えっ、父親になるってことですか。」
「でも、あなたの子たちはミュルクヴィズの中で育てるそうよ。それだけは決まってるわ。」
「残念だな、トラ。」
あなたの子“たち”って、いったい…
半球型の建物に着いた
「候補となるダンジョン、もしくは枯れたダンジョンはこの3か所のどれかと思う。」
カンプの見せる地図について説明する
「じゃあ、これからね。」
手元の操作で画面の映像が変わっていく
「ボンボネーラからこっちの方向でいいのね?」
「ああ、そうだ。」
「ここは、…木は生えているけど、山ではないようよ。」
「じゃあ違うな。山以外でダンジョンというのは考えにくい。」
「ここは、山であるけど、あまり木は生えてないわ。」
「そうだな、トラどうよ。」
「ある程度の木は生えていた。間違いない。」
「じゃあ、最終候補、ここは、…確かに山ね。ボンボネーラのような山頂の丸穴は無いみたいだけど。」
「まあ、それも謎の一つではあるが、崩れて埋まったのかもしれんし、横穴かもしれんしな。」
「道を探すわ、…この道でこう行って、…あら、ゼルズラから行くのが便利そうね。」
「助かる、使えそうな道を書き込んでくれ。」
マクシミールは油墨と羽筆で器用に書き込んでいく
「どうするよ。トラ。」
「早く終わったし、水と食料を補給してパブロペトリ行こう。」
「なあ、マクシミール、
「あなた達、無事で返せる?貴重なものだから、私は意見を求められたら断るわ。」
「そうだよな。山賊退治に使おうと考えてるし、無理だよな。」
「あなたの図面の弓矢、完成したら山賊退治に使って良くってよ。」
「判った。」
もう行こうかと椅子から立ったとき、マクシミールが言う
「あっ、そうだわ、これを視てちょうだい。」
もう一度、画面の映像を確認する
それは、海沿いの山のようであはるが、山頂部分は丸い穴が開いている
「こりゃあ、もしかして。」
「ああ、
「どこだあ、これは。」
画面の操作をマクシミールが手元で行う
縮小されて、より広い範囲が映ってくる
「これは、」
「そうよ、パブロペトリよ。その近くね。」
ゴロゴロと快調な走りを見せるコシュタガンケン
「しかし、蝦蟇があやしいという話だが、さらに怪物である可能性が高まったな。」
「マクシミールも蝦蟇の燻製の味が忘れられなかった、とか言ってましたからねえ。海の
「海に囲まれた
「じゃあ、やっぱり
「いるかもしれねえな、用心するしかねえな。」
パプロペトリへの途中で、軽銀製コシュタガンケンとすれ違った
「おう、キャロウじゃねえか。定期便か。」
「ええ、肥料と塩とあとは観光の方を載せてます。」
「すげえな、おい。」
「パブロペトリじゃ世界樹が流行ってます。登るのが人気なんです。」
キャロンさんを載せたコシュタガンケンを見送る
「ああやって、面倒なことをしないでセントーラス号で行った方が良いんじゃ。」
「おめーは判ってねーな。旅の楽しみは目的じゃなく行程にあるんだ。」
「そうなんですか。」
「そうだよ。おめーは。」
「あっ、しまった、またも世界樹に登るのを忘れた。」
「縁がねえんだ。諦めな。そういうもんはあるんだよ。相性が悪いんだ。」
「そうなのか。」
「縁起を担いだ方が良いぜ。運を良くしようと思ったら。」
「そうか。カンプも迷信深いな。」
「ちがうな、これは検証済みの事実だ。例えば、酒場でいつも同じ席に座るとか、模擬戦で勝ったら、髭をそらないとか。」
カンプへの尊敬度合いが低下した。
パブロペトリに着いた
レナーレさんを探す
守衛の人にお願いすると船の建屋へ行くように言われる
「なあ、ずいぶん簡単になったもんだ。」
「そうですね。ちょっと前は警備がしっかりしてたような気がします。」
建屋に着くとレナーレさんがでてくる
「…ほう、そんな状況なのか。」
レナーレさんが言う
「そうです。ゼルズラを開拓したい。そのためには山賊が邪魔。討伐隊を編成するには
「確かに、アガルタとパブロペトリ間の隊商もちょいちょい襲われているらしい。」
「あと、ここの近くに
「そうなのか、それは知らなかった。」
「
セントーラス号に乗り込む
しばらくすると海中都市に着いた
「さてと、
「結局、制御回路はやり直したのか。」
「そうです、動力と駆動系を残して、新しい制御回路を移植しました。」
「難しかったんじゃないのか。」
「設計思想は似たものがありましたら、そうでもなかったです。」
「誰が作ったか解るか?」
「いやあ、われわれの物ではないとしか言えないですね。」
「ありがとな、トラ、やるぞ。」
「えっ、」
「えっ、じゃねえだろ、とっとと済ますぞ。」
それから、数日間、海の中の実験室で作業した
「やっぱり、やめません。」
「ダメだろそりゃ。これをやんねえと山賊討伐できねえぞ。」
「そうですか。」
ここはパブロペトリからコシュタガンケンで一日走ったところ
海沿いに山があり、木々は見えない
「それともあれか、山を登って山頂から行くか。」
「カンプが行くなら。」
「そうだな、俺は
「歩きながら操作できません。」
「じゃあとっとと潜れ、竜人の皆様方が待ってるぞ。」
「ふう。」
兜を被る
コシュタガンケンから飛び降りる
「ア゛ーッ゛、ア゛ーッ゛」
「何変な声出してるんだ。」
「せっかく喋れるようになったんだからいいじゃないですか。」
上空に向かって手を振る
空にはセントーラス号が浮かんでいる
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