第41話

特に問題もなくミュルクヴィズに着いた

サンシーさんと相談する

「…ほう、パブロペトリとミュルクヴィズの直通とな。」

「新型コシュタガンケンは荷車対比で6倍の積載量、時間は半分になります。」

「それはすごいな。」

「運営はボンボネーラ手配の獣人、竜人も冬以外は手伝えるそうです。」

「助かる。われわれは森以外は慣れていないのだよ。」

「ゼルズラが開拓できたら、状況は変わるでしょう。」

スタンさんが付け足す。

「山賊退治になんか協力してくんねえか。」

カンプがぶち込んでくる

「そうだな、食料以外となると、弓矢の供給は可能だ。」

「ありがとうございます。」

羽民ハーピーの供給とコシュタガンケンの基地にも協力しよう。よろしく頼む。」

「今晩は特に何も予定していないが、好きに楽しんでくれ。」

スタンさんがそう言って片目を閉じる

ん、どういうことだ


「カンプ、みんなどこ行った。」

「ルジキニは世界樹と言ってたが、後は知らん。みんな急いでたな。」

「パブロペトリまでの道を確認したほうが良くないか。」

「おお、そりゃそうだ。」

リュイスさんでも探そうか

そこらへんを歩いている人に聞いてみる

「すいません、リュイスさんを知りませんか。」

「…リュイスはあれなんで、ご用件はなんですか。」

「地図、画像、衛星画像でパブロペトリまでの道を確認したいんだが、だれでもいい。手伝ってくれねえか。」

「わっ、わたし、マクシミールで良ければお手伝いしますよ。」

案内されて、森の奥の建物に着いた

その建物はきれいな半球型で、外壁は色とりどりの小さな磁器がいっぱい貼られていた

「こんな建物は初めて見ました。」

「昔からある建物です。空気抵抗を抑えるためにこんな外観をしています。この瓦はあとから張り付けたのです。綺麗でしょう。」

「おおぅ、すげーな。」

カンプも驚いている

「こちらへどうぞ。」

中はセントーラス号やパブロペトリを思い出させるような作りだ

「この部屋です。」

そこには壁に表示機器が張り付けられて、いろいろな画像が見れるようになっている

が、まだ何も動いていないようだった

「今から準備します。しばらくお待ちください。」

マクシミールさんがいろいろと操作するのを黙ってみている

「これを視てください。」

「おぅ、これはもしかしてミュルクヴィズか。」

「そうです。」

そこには中央に黒い丸があり森が広がっている画像があった

「え~と、縮小しますね。」

なにかすると、それは小さくなっていく

やがて、海とか橋が判るような大きさになった

「ここがミュルクヴィズでここがパブロペトリになります

「おお、そうか。使えそうな道はあるか。」

それからマクシミールは何かを操作して大きな画像にする

「この道を辿りましょう。」

何か操作すると赤い色が付いた

「ここから、こう行って、ああ、ここは埋まっているみたい。こっちに曲がって…。」

かなり複雑な道順になった

「これで確実に通れるはずです。」

「ありがとうございます。」

それからマクシミールさんは用意した紙と羽根筆と油墨で画像を素早く模写する

「おお、凄いな。匠の技だな。」

「何度もやったことがあります。」

「そうなんですか。機会があるわけですね。」

「ええ、数年に一回ぐらい。」

おやっ、そうなのか


食事処ボッビズ、カンプが賭博酒場を嫌がってここになった

マクシミールさんのおすすめだ

「ここは蝙蝠がおいしいです。」

「そうですか。」

「葡萄酒だ。」

カンプは飲むことで忙しそうだ

「衛星で地図を作っていたんですね。」

「まあ、資源を探すことが目的で、それを取りに行くために地図を作っていました。」

「へえーっ。」

「葡萄酒もうめーな。あれだ、蒸留酒も持って来い。」

「リュイスさんのあれってなんですか。」

「あれは、あれです。知りたいですか。」

「教えてくださいよ。」

「じゃあ、飲み比べで勝ったら教えてあげます。」

「なんですかそれは。」


軽い衝撃で目が覚める

「はっ、マクシミールさん。」

「…マクスは整理券を配ってたよ。」

「整理券って、だれです。あなたは。」

「えと、リュイスかな。」

「絶対違うでしょ。止めてください。」

「ダメダメ、あたしに子種をちょうだい。」

…結局最後までやってしまった

のろのろと部屋からでる

今日は手術をしなきゃいけなかったような

まだ、朝の早い時間だ

用意されていた宿にもどるとカンプが寝ている

眠い、カンプを問いただしたいが、睡魔に勝てなかった

「…。」

次に目が覚めると別の部屋にいる

しかも頭の羽が全部抜かれている

防具も皮も全部取り外されている

「よおぅ、気が付いたかい。」

「カンプ、これはいったい。」

起き上がろうにも寝台に腕と足が固定されていた

「初めから説明してくれ。」

「俺は止めたんだがな。秘蔵の蒸留酒をくれるっていうから。」

「なんだそれは。」

「お前、前回リュイスを孕ませたらしいぞ。」

「えっ、どうして。」

「まあ、やることやったからだろうな。けど、今までそんなことはなかったらしい。」

「?」

「リュイスは検査と経過観察でずっとここに居るらしい。ここは病院だ。」

「病院、それはなんだ。」

「まあ、治療とか手術をするところだ。おめーはそのあともやらかしたろ、他にも何人か妊娠したらしい。」

「…賭博酒場。」

「まだ隠しているらしいが、噂になってたみたいで、昨日のあれだ。子が欲しいやつらが押し掛けた。」

「…整理券。」

「ああ、手術してここをでるまで、子種を提供しろ。それで今回はチャラらしい。」

「一つ教えてくれ、なぜ自分の子供を欲しがる。」

「ここは外観がみんな同じだからな。飽きたんじゃねえか?まあ、それは冗談だが、獣人との子なら、森以外でも十分生きていけるしな。やつらも生き残る手段を探しているってこった。」

「そうなのか。」

「90匹の羽民も準備できたらしい。おれらは出発する。安心して待ってろ。」

やがて、誰かがやってくる

「やあ、トラフォード、私はウェンブリーだ。よろしく。」

「はあ。」

「君の脳に接続端子を埋め込む手術をする。と言ってもほとんど機械がやる。私は開始させるだけだ。」

「はあ。」

「すまんが少し寝ててほしい。動かれると困る。」

「はあ。」

薬を飲まされ、注射をされる

意識が闇に落ちる

次に目覚めたときは、頭痛の嵐だった

頭を触ろうとしても手足は拘束されたままだった

しばらくするとウェンブリーがやってきた

「やあ、言うまでもないが手術は無事終わった。なあに、簡単だ。頭蓋骨を外して針を脳に打ち込み、骨を戻しただけだ。ただ、固定具が頭蓋骨を抑えているので、しばらくこのままだ。固定具が20日ぐらい、それを外して10日ぐらいで大丈夫だろう。」

「あのう、このままって、寝た状態ということですか。」

「何を言っている。当たり前だろ。眠れないようであれば薬を飲むと良い。準備しとく。それとあれだ、君の遺伝子を調べさせてもらった。」

「はあ。」

「君は獣人というより、獣人と人間のハーフに近い。」

「はあ、意味が解りません。」

「そうだな、私たちも君たちも人間から作られた、まあ、大昔のカンプたちだな。実は、私たちも君たちも人間との間に子供はできない。まあ、少なくとも健康な子供はできない。」

ん、どういうことだ?

「本来、私たちと君たちの間に子供はできないはずだが、君はその壁をいともたやすくぶち破った。」

「そうですか。」

「君の子種は重要だ。ひょっとすると世界を変える可能性がある。」

「そうなんですか。」

「もっと自信と誇りを持ちたまえ。そういうことで夜は必ず薬を飲んでから寝るんだぞ。」

「?・・・」

ウェンブリーは上機嫌で去っていった。

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