第37話
キャロウさんの話は興味深い
「われわれは気温の影響を受けやすいのです。」
「というと。」
「寒いと動きが鈍くなり、それを嫌って冬場は冬眠する者もいます。」
「ほうほう、なるほど。」
「室内を適温に保てばなんとかなるので、主に若者が冬場は働いています。」
「それで」
「外の世界に興味はありますが、気温が低い夜は我々にとって危険です。動けないところを狙われたらどうしようもありません。」
「獣人が護衛をするというわけか。」
「その通りです。逆に、夏とかは活発に動けて暇を持て余しています。この労働力を生かす場所がありません。」
「なるほど、読めて来たぞ」
「われわれは、温度で性別が変わるのでパブロペトリのような拠点は必要です。しかし、未来を考えると生活の場も広げる必要があります。」
「えっ、性別が変わるって?」
「まあ、卵の育成温度で意図的に変えています。」
「驚きました。」
「お互いに悪い話ではないでしょう。」
工場で新しいコシュタガンケンを試作している
「おう、こりゃいいな。軽銀か。」
「素材としてはこれでいいかと思います。」
「あとは足回りだな。」
「このあたりの部材でなんとかなりますか?」
「おお、これくらいの発条がちょうどいいんじゃねえか。」
「しかし、こんな工房があるとは思わなかったぜ」
「ここは工業都市ですから、工場のかなりの部材を作れます。大変ですけど。」
「おめーら農業はどうしてんだ。」
「温室でやっています。ここいら海沿いは塩害でまともな作物は育たないのです。」
「たしかになあ。」
「しかし、車輪は何とかならんかのう。」
「護謨はありますが、それだけ多くのものを作るのはちょっと無理ですね。」
「しゃあねえな。ミュルクヴィズに頼むか。」
「やってくれますかね、あのエルフ達。」
「この前、喜ぶことをしてあげたので、協力してくれますよ。」
ちょっとだけ意見を言うことができた
出番がほとんどないな
「おい、トラ、俺は忙しいから好きにしとけ、用ができたら呼ぶ。」
「判った。」
カンプに邪魔だと追い出されてしまった
工房という建屋を出て歩く
工場なのだろう、大きい建物がたくさん並んでいる
ここは凄いな
適当に歩いていくと、海に出た
岩が続いている、その向こうは海だ
海を見ていると蝦蟇の子がいる
これは美味そうだな
「あれはなんだ?」
黒い蝦蟇の子に混じって変なのがいる
これは食えるのか?
岩場の間をぬって、海に入る
変なものを手でつかもうとする
「ちっ、痛っ。」
咬まれたのか、痛みが走る
折れたショベルを手に持つ
ショベルの刃で攻撃すると、手だろうか、2本ほど切り落とすことに成功した
切られた手は動いている
本体を攻撃するも、するりと逃げられる
それならばと、柄の折れた側で突き刺す。折れた断面が良いすべり止めになったようだ、そいつは串刺しになり、なぜか黒い液体を吹き出す
「なんだこりゃ。」
「なんでしょうね。」
「今まで見たことないですね。」
二本の手と串刺しにした本体を観て、三人で悩んでいる
「まあ、食えるかもしれんし。良いじゃねえか。」
「キャロウさんの好きにしてください。」
「はあ、ありがたくいただきます。」
「おめー、まだそんなもん持ってたのか。」
「これしかないですよ。」
「そんな折れたショベルは土を掘るぐらいしか使えねーぞ。」
「それが本来の使い方でしょ。」
「おめーは剣の練習でもしてろ。」
またまた追い出されてしまった
広場、建物がたくさんあるが、たまに広場がある
そこで、剣の訓練をしている
両手で剣を振る
振れないことはない
いろいろな動きを想定して剣を振る
ちょっとだけ短槍に似ているような気がする
何日かそうやって過ごしていると、カンプとルジキニがやって来た
「ご無沙汰しもうぅした。」
「元気そうだ。」
「もう冬だから、最後の隊商らしいぞ。俺は冬の間はここに残るつもりだが、おめーはどうする。」
「ルジキニ、自分はカンプに付き合う。」
「よっしゃ、ルジキニ頼んだぞ、よろしくな。」
「まかせるでごわす。」
ルジキニの鼻息は荒い
久しぶりの宴会だ
といってもパブロペトリもボンボネーラと同じで酒が出ない
料理は美味しい
「それでキングストンは良くなったのか。」
「今は、トロールの指を繋げたでごわす。」
「そうか、早く良くなるといいな。」
「ゼルズラで
「エマームは元気かな。」
「それは、知らないでごわす。」
「蝦蟇はどうだった。」
「それなりに居るので取ったでごわす。」
確かに今日の料理は蝦蟇の肉が多い
「なんか、イドゥナの機嫌が悪いでごわす。」
「なんでだろうな。」
「たぶん、キングストンが悪いでごわす。」
「どうした、なにかあったのか。」
「あいつら、、おいも幸せを見せつけるでごわす。」
「…そうか、わかる。」
あいつら、そうなるだろうな
ルジキニが去り、カンプは工房に籠り、自分はひたすら剣を振る
電撃も剣に合わせることができるようになった
珍しくカンプがやって来た
「このさみーなか、よくやるなあ。」
「準備運動さえしっかりやれば、寒いほうが良いですよ。」
「そうかもな。」
「どうしたんですか。」
「試作と図面は終わったんで、
「あれは、装甲車に載せたままですね。」
「ここじゃ難しいから、海に行くらしい。」
「えええっ?」
いったいどうゆうことだ
装甲車を走らす
これぐらいの寒さぐらいじゃ
「キャロウさんは大丈夫ですか。」
「この服は暖かいです。さすがはミュルクヴィズ製ですね。」
「この前の訪問で手に入れたわけですね。」
「蝦蟇肉の燻製は好評でしたが、蝦蟇の子はいらないみたいです。お風呂で育てようかという意見もありましたが。」
「それは止めて正解です。」
「あれに載せてください。」
それは、これ以上はないというぐらいに大きな建物で、大扉が開いていた
建物の中に進む
そこには、なんだろう、卵をもっとつぶして細長くしたようなものがあった、超でかい
建物のほぼすべてを占めるぐらいでかい
それの下部に坂道になるように扉が開いていた
「あそこです。」
「これはいったいなんですか?」
「セントーラス号です。これで海の中に潜ります。」
「海に潜る。想像できないです。」
セントーラス号の中に入ると、そこは広い部屋だった
やがて入って来た扉が閉まる
「コシュタガンケンを固定してください。」
御者台から降りて、紐や鎖で固定する
「
先に謝っておく
「よっしゃ、中は終わったぜ。」
元々、中も簡単に動かないように固定してある
「
「載せたままでいいだろ、あっちでも移動させるんだろ。」
「そうです、研究室で解析します。」
やがて、誰かが近づく
「私はレアーレです。よろしく。」
そう言った人はキャロウさんとそっくりで、違いを探そうと必死になって見つめる
「おう、よろしくな、俺がカンプで、こっちがトラフォードだ。」
「よ、よろしくお願いします。」
「まあ、緊張しないでください。怖いことはないですよ。」
…怖いことになるのかな
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