第35話

はっ、ここはどこだ

隣を見るとヴィラがいる

すやすやと寝ている

他には誰もいない

服を着て、外に出る

たぶん、ヴィラの天幕だろう

逃げるように自分の天幕に戻る

あとでカンプに聞こう、いったいどうなったんだ?

「トラ、やべーぞ。」

「カンプ、昨日の話なんだが」

食事をしているところにカンプが来た

「あ、その話はあとだ、すぐに出る準備をしろ。ゼルズラに行くぞ。」

「何の話だ。」

「キングストンがやられたらしい。」

「なんだ?!」

天幕で荷物をまとめて装甲車に放り込み、羽民ハーピーを準備する

機械人形メタルゴーレムはカンプが準備している

水と食料を準備する

ヴィカレージに会う

「トラフォード。」

「こっちは足が遅いので先にでます。」

「解った。こっちも準備でき次第後を追う。」

ボンボネーラを出発する

御者台でカンプに言う

「いったいどういうことだ?」

「ゼルズラでキングストンが戦っているらしい。少しやられたと言っていた。とりあえず、昼はお前が走らせろ。夜は俺が交代する。」

ひたすら装甲車を走らせる

2日目の朝にヴィカレージに追い抜かれた

「先に行っているぞ。」

「解りました。」

代わったばかりのカンプに尋ねる

機械人形メタルゴーレムを走らせなくて、良いのか。」

「あいつはしゃべれねえからな。よく理解している奴が居ねえとダメだろう。」

「コシュタガンケンが5台か、20人ぐらいか。1日でよく集めたな。冬準備もあるのにな。」

「まあ、焦ってもしょうがねえ、明日中には着くから落ち着け。」


3日目の夜中にゼルズラに着いた

朝の目覚めとともに、それを知る

「キングストン、無事か?」

「ああ、何とか生きてるぜ。」

天幕に寝かされたキングストンは腹をぐるぐると巻かれていた

「それはなんだ。」

「おめー、キングストンに喋らすな。腹を切られて包帯で巻かれてんだ、包帯はミュルクヴィズのもんだ。」

「そうか、右手をどうした。」

「だから、」

「ちょっとだけいいか。奴は速いぞ、槍で受け損ねて、右手の指を切られた。お前と同じだ。」

「なに、」

「電撃だ。気を付けろ。」

「さあもう出て行って。」

治療班に追い出された


「相手は大剣を振るうらしい。しかも電撃ときた。やべー相手だ。かたきを取ろうなんて思うなよ。」

「…判った。」

カンプに連れられヴィカレージのとこに行く

「正直言って、私もあんなものは初めて見る。キングストンは腹の傷が塞がり次第、ボンボネーラに移送する。今日の午後に作戦会議で、上手くいけば、明日の朝に仕掛ける。一応、君らを待っていた。奴を見てくると良い。」

カンプが案内する

「今、2次被害がないように人面樹トレント狩りもやっている。ゼルズラで奴と出会ったらしい。奴を囲うことに成功して、竜人はパブロペトリに送ったそうだ。例の話はパブロペトリに伝わっただろう。そして、たぶん奴はハムデンの洞穴迷宮ダンジョンから来たと思うぞ。」


そこは湖に面する一画で、丸太の柵で封じられている

頭に角が一本あり、目は単眼で、片手に剣を持っている

こっそりと木の後ろから覗き見る

見張りだろうか他にも何人かいる

「でかいな。」

「ああ、かなりでかい。剛毛鬼トロールより大きいな。」

「あの角、」

「ん、どうした。」

「あの角って茸を逆さまにしたような感じですね。」

「たしかに、そんな形だ。」

観察していると湖の蝦蟇の子を取ろうとしている

片手の剣を逆手に持つと、大きく振りかぶり、振り下ろす

湖面に刺さるその瞬間、光が発せられる

そのあとは、湖面に蝦蟇の子が浮いているようで、掴んで口に放り込んでいた

「こりゃ、早くしねえと蝦蟇が全滅するかもな。」

カンプと自分は引き返す

「奴の名前は、」

単眼角鬼サイクロプスだな。」

カンプは宣言する。


会議が始まっていた。

「弓矢はどうだったんだ。」

「奴を見たら判ったと思うが、矢は通らなかった。」

「キングストンの報告にもあったし、到着して様子見で射かけてみた。」

「あぶねーことを。」

「必要なことだ。」

「目玉を狙おう。」

「まあ、何とかなるかもしれんな。」

「力はどうなんだ。」

「今の丸太の柵であればかろうじて大丈夫です。人の大盾は話になりません。キングストンの報告では怪我するだけだと。」

「それじゃあ大槍ぐらいしかないな。」

「大槍は5本準備した、しかし、あれだけでかいと、上半身を狙うのは無理かもしれん。」

「下半身か。」

「トラフォード、何かねえか。」

機械人形メタルゴーレムで足止めするのはどうかと。」

「たしかに、アイツの重さなら何とかなるかもしれんな。」

「その機械人形メタルゴーレムはあれか、洞穴迷宮ダンジョンの怪物か?」

「まあ、洞穴迷宮ダンジョンの一部かな。実物を見た方がはえーな。トラ、行くぞ。」

カンプと自分は装甲車に行って、機械人形メタルゴーレムを動かす

「ついでだ、機械人形メタルゴーレムで俺を担いで持っていけ、ちゃんと言う通りに動けよ。」

「解りましたよ。」

機械人形メタルゴーレムでカンプを持ち上げるって、どうしよう。こうするか

お姫様抱っこされたカンプが天幕の中の会議の場へ入っていく

「てめー恥ずかしい真似させやがって。」

「えっ、のりのりだったじゃないですか。」

「まあいい、奴を仕留めるぞ。」

「そのつもりです。」

「あと、もしもの場合は放射光線だ、その時は運転代われよ。」

「動いてなければ当たると思いますけど。」

会議の参加者は機械人形メタルゴーレムを見て驚き、お姫様抱っこをされたカンプを見て微妙な顔をしていた

そのあと、カンプより小さな機械人形メタルゴーレムを持ち上げようと、3人、4人で持ち上げていた


翌日、後ろで準備しているカンプと自分の前で大槍が入ろうとしている

丸太の柵が動かされ、大槍が入る

単眼角鬼サイクロプスが走って近づく

弓兵が矢を射る

単眼角鬼サイクロプスは剣を自由自在に操り、すべての矢を叩き落とす

「なんちゅう奴だ。」

機械人形メタルゴーレム走ります。」

必要最小限の機器で操っている

装甲車は目立ち過ぎだ

槍が投擲される

大槍は単眼角鬼サイクロプスに近づく

これまた右手の剣を操り、長槍をすべて叩き落す

大槍の後ろに予備隊が入った

長槍、短槍、長剣、斧、この人たちの命が最も危ない

単眼角鬼サイクロプス機械人形メタルゴーレムを蹴ろうとする

ヒシッ。

機械人形メタルゴーレムは回り込むようにして左足にしがみつく

「よっしゃ。」

大槍が右足に突っ込む

単眼角鬼サイクロプスは右手の剣をひねると左手の逆手に持ち替え、大槍に剣を当てる

「ん。」

大槍の勢いは殺され、次の瞬間には右手の逆手で、突かれる

大槍の持ち手は辛くも逃げ切った

別の大槍が2つ、角度をずらして突っ込んでくる

真横と、後ろ側からだ

単眼角鬼サイクロプスは右手一本で大槍を剣で引っ掛け、それを後方に跳ね上げる

後ろの大槍は横転して持ち手は負傷する

「まじか、後ろも見えてるんじゃねーか。」

「カンプ、奴は頭をぐるぐる回している。きっと、目以外で視ている。」

「そうか、角に視えたのは電波探知機か。」

「トラ、奴の角を切れ。いや、技を使え、それで奴は視えなくなる。」

…まじですか

大槍2本が大外で待機して様子見中だ

予備隊が最前線に入って、けん制している

時折、槍が飛ぶが、あっさりとはたき落とされる

機械人形メタルゴーレムの操作をカンプに任せて、走る

機械人形メタルゴーレムが重しになって、足止めにはなっている

「ヴィカレージ、角が弱点です。」

途中で叫ぶ

金属ショベルを持って、単眼角鬼サイクロプスに近づく

ビリジリ

気で一瞬奴の動きが止まるような気がする

槍か、予備隊の攻撃に気を合わせるしかない

投げられた槍に合わせる

ジリジリ。

槍は命中し、背中に傷を負ったようだ

単眼角鬼サイクロプスにガン見されている

当然か

最優先の攻撃目標になったようだ

回り込もうとするが、単眼角鬼サイクロプスも左足を軸にしてからだの向きを変えてくる

機械人形メタルゴーレムも足の関節を決めているはずだが、それを無視してこっちに迫ってくる

槍が投擲された

ジリビリ。

長槍が左足の太ももに傷を付ける

単眼角鬼サイクロプスの大剣は一瞬遅れた

まじかで見るとあきれるほどでかい剣だ

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