第29話

「どうなった。」

キングストンに声をかける

「仲間がいるようだ。」

少し離れたところではもう一人、敵が尋問を受けていた

右腕が切断されている

止血されているだけだ

ヴィカレージが呼ぶ

「トラフォード。こいつを治療しろ。」

切断面を剛毛鬼トロールの皮で覆い、薬草をつける。豚鬼オークの皮で覆って、止血しなおす

「おーい。大丈夫か。」

見ると補給物資を載せた2台のコシュタガンケンが着いたところだった

戦闘員を載せたコシュタガンケンだけを先に行かせたのだ

6台のコシュタガンケン、35名の人員で臨んでいる

ヴィカレージが悩んでいる

「6人を残して29名か。敵は16ぐらい。」

とりあえず干し肉をかじる

「よし、全員集まれ、敵の本拠地をたたく。6名が残ってここの防衛を担う。捕虜は2名とも連れていく。各自食事をとれ。歩いて半日だ。食事2日分を持って集まれ。」

ヴィカレージが個別に指示を与えている

指示を聞き終えたカンプがやってくる

「俺は留守番だ。必ず戻って来いよ。あと、お前は捕虜を連れてく係だぞ。」

「そうか。」

「戻るまでに死体を埋めて、岩をどかさにゃならん。お前さんほどじゃないだろうが、楽じゃねえな。」

食事を終えて、荷物を準備して集まる

「トラフォード、お前はあの男を連れていけ。治療道具を忘れるな。」

捕虜の様子を見る

「おい、起きろ。」

「ん、ああ、畜生、痛ってえぞ。」

「いいか、水を飲ませてやる。ゆっくり飲め。だが、食い物はまだだ。」

「解った。水をくれ。」

水を飲ませてやる

「騒がれると困る、口をふさぐが我慢しろ。お前らの隠れ家に案内しろ、肩を貸してやるからしっかり歩け。」

大声が出せないように口を皮のマスクでしばる

足を自由にしてやる

腕はしばったままだ

ヴィカレージは2人を前に言う

「いいか、隠れ家まで案内しろ。そうしたら自由にしてやる。言っておくが2人いるから騙そうとして難しいぞ。そんなことをして命があると思うな。」

キングストンが片腕の男を連れている

綱で胴体が結ばれている

自分は矢で刺された方の足をかばうように、同時に片腕の男が見えにくいような位置取りをして、案内させる

しばらく歩いていると、何かを言いたそうだ

「ふがえごげ。」

「何だ、黙って歩け。」

「ふぎがすふ。」

歩いていると、捕虜の足の間から液体が流れてくる

「すまなかった。だが、死にたくないだろ。早く歩け。」

ちらりとキングストンの方を伺うと、歩くの辛いのか、血の気を失った顔で歩いている

後ろを振り返ると、周辺の様子をうかがっている者や地面の足跡を探している者が見える

「休憩だ。」

ヴィカレージの声がする

捕虜を座らせて、口を解いて水を飲ませてやる

ヴィカレージがこっちを見ている

口を縛って、命令する

「ここに居ろ。逃げたら殺す。」

捕虜はうなずく

ヴィカレージが使いの者をよこした

そいつと入れ替わるようにヴィカレージのもとに行く

「キングストンの方はダメだ。ここに置いていく。」

小声で話す

「判りました。」

「もうしばらくしたら出発しろ。」

かなり暗くなってきた

「行くぞ、道は判るな。解るなら目を閉じろ。」

捕虜は目を何度もあけたり閉じたりした

意識を向けさせるために「道は判るな。」「急いで歩け。」の言葉を繰り返す

木々が見えてきた

山があって林がある

林の中をしばらく行くと、明かりが見える

そこで止まる

「いいか、今から質問に答えろ。小さな声でだ。すべて終わったらどこにでも好きなところに行け。」

ヴィカレージの声が響く

「あの洞窟が隠れ家だな。」

「そうだ。」

「出入り口は一つだけか。」

「そうだ。」

「見張りは居るか?」

「2人はいるはずだ。」

ヴィカレージは偵察員を見る

「1人でした。」

「お、奥にいるはずだ。」

「洞窟の中はどうなっている?」

「ひとつだ。奥までひと続きだ。」

「分かれ道とかはないな?」

「ない、知らない。」

「指導者の名は?」

「ハムデンだ。」

「よし判った。」

「聞きたいことがある。」

口を挟んだ。

「どうしたトラフォード。」

「ここは洞穴迷宮ダンジョンか?」

洞穴迷宮ダンジョン?知らない。」

卑小鬼ゴブリンとか豚鬼オークがいないのか?」

「解らない。卑小鬼ゴブリンはたまに見る。」

この周辺に洞穴迷宮ダンジョンがあるに違いない


「良いか、弓兵が見張りをやる。そのあとは大盾を先頭にして突入。大盾の隙間より弓兵は射ること、接近戦になる前に長槍と交代。不明点はあるか。」

キングストンを見る

「キングストンとトラフォードは捕虜の護衛、ここで待機だ。」

「音を立てるなよ。静かに接近して開始の合図を待て。」

ヴィカレージは静かに移動し始めた

「さすが戦闘部隊だな。」

キングストンが言う

「キングストンもいろんな訓練に参加してるだろ。」

「あっちは何というか、迷いがない、ためらわない。」

「始まったようだ。」

「そうだな。」

向こうでかすかな音がする

やがて、伝令が呼びに来た

捕虜を連れて洞窟の入り口まで来た

中から死体や使えそうな物資が運び出される

ヴィカレージが捕虜に言う

「ハムデン、指導者はどいつだ。」

捕虜を連れて一人一人の顔を確認する

もういいだろうと口を自由にしてやる

一通り全員の顔を確認する

捕虜は困惑している

ヴィカレージが言葉を荒げる

「もう一度よく見ろ。」

振り返って部下に言う

「洞窟内を再捜索だ、何も見逃すな。」

並べられた死体を数える

「13、13人しかいない、逃げられた。」

ヴィカレージは捕虜に詰問する

「逃げた場合の集合先は?」

「ソ、そんなものはない。聞いたことない。」

「隠し部屋か隠し通路の類は?」

「本当に知らない。信じてくれ。」

「ハムデンはここに居たのか?」

「俺らは見張りが連絡を入れから出発した。2日前だ、それまでは居た。」

しばらくすると洞窟から捜索していた人が出てきた

何もなかったようだ

ヴィカレージは口を結んでしばらく黙っていたが、捕虜の方を向く

「ハムデンは見つからなかったが、君の協力には感謝している。どこにでも好きな所へ行くと良い。ここの物資で必要なものを持っていくと良い。トラフォード、キングストンも手伝ってやれ。」

捕虜に肩を貸して物色させる

嬉しそうだ

捕虜が指さす

「あれとあれが欲しい。」

「キングストン、あの皮袋を、」

言葉が続かない

捕虜の胸から槍の先端が突き出ている

血が噴き出た

振り向くとヴィカレージが何の表情もなく槍を突き出している

隣のキングストンは茫然としている

ズルリ。

槍を抜くとそれをキングストンに返す

「使えるものはすべて持ち帰る。が、持てないものは死体とともに洞窟に運び込め。燃えるものを集めて死体と一緒に焼却する。」

戦闘部隊が命令を遂行しようとしている

自分とキングストンだけが立ち尽くしている

「ヴィカレージさん、どうして。」

「…彼は最後に夢を見た。」

苦虫をかみつぶしたような顔で続ける。

「全責任は好むと好まざるとにかかわらず、私が負う。全ては私の責任だ。彼の命もだ。」夜を徹して作業し、コシュタガンケンまで戻った

荷物を積みかえて、ゼルズラへ出発する


戦闘部隊の3台とこの箱、装甲車とカンプが言ってたが、装甲車ってなんだ?

4台はゼルズラに戻った

キングストンやルジキニはパブロペトリに向けて出発した

ゼルズラに迎えのコシュタガンケンが来ていた

人を乗り換えて、3台がパブロペトリに向かう

竜人族は気に入ってくれるだろうか?

戦闘部隊はボンボネーラに帰る

正直、ヴィカレージと一緒は気まずい

ゼルズラで装甲車に、人が乗って来た

アガルタへの特殊任務に選ばれた者だ

「本当にいいのか?」

「ああ、これでお尋ね者になっても悔いはねえ。」

正直、共同体ギルド内でどういう話があったのか解らない

「どうしてお尋ね者ニャー?」

精神面の強さだろうか?逃げ足の速さ?いや身体能力だろうか?

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