第28話
気を感じて動かして外からの吸収もできるようになったが、ビセンテのような光と音はできない
まだ、本気の訓練はしていない
左腕に不安が残る
右目も集中して視ようとすると目眩がする
なぜだろう
「おぅ、帰って来たぜ。久しぶりの我が家だな。」
いやいや違うだろ
「おいっ、それは
「ダメです。食べさせません。大事なエマームを。何の用ですか。」
「だれだよ。エマームって。」
「この可愛い子が視えませんか?カンプより100倍愛しい存在です。」
「やっと島流しから帰って来たのに冷てえな。ミュルクヴィズの長所は酒だけかと思ったがそうでもなかったな。」
「だから要件は何ですか。」
「リュイスが残念がってたぞ。」
「あの
いい人だったような
「あいつな、
「
「あっと、そうだな。簡単に言うと
「なんか凄そうですね。」
「てめーっ、本気で思ってねえだろ。凄そうじゃなくって、ホントに凄いんだよ。」
「そうなんですか。」
「本当に凄いのはこれからだ。
「へーっ。」
「おまえっ、馬鹿にしてるだろ。」
「いや、別に。それで何か判ったことは。」
「まだ始めたばかりだが、発電機を使っていることが解ったらしい。」
「発電機、それって。」
「そうだ、発電機だ。磁極力発電機。おそらく100万kW級。」
訓練場でショベルを振っている
「まあまあだな。左腕を、角度をもっとこうして。」
「すまんな、キングストン。」
キングストンも帰っていた
空いた時間に訓練を見てもらっている
「金属ショベルか、長剣でも良さそうだな。左腕は力がありそうだし。」
「元
「俺は、次にパブロペトリに行ってくる。」
「そうか。」
「ああ、肥料を得て、ミュルクヴィズにまた行く。」
「そうか、頑張ってくれ。」
「ゼルズラ経由で、ボンボネーラには戻らない。」
「あ?」
「ボンボネーラから始まって、ゼルズラ、パブロペトリ、ゼルズラ、ミュルクヴィズ、そしてボンボネーラだ。」
「結構、長いな。」
「今回、キャロウさん達竜人族をミュルクヴィズに連れていきたい。」
「そうなのか。凄いな。」
「ああ、ミュルクヴィズからの提案だ。」
カンプと模擬戦だ
ガキン、カン、ガキ
かなり左腕もなじんできた
「なあ、カンプ、アガルタにはどう行く?」
「俺とおめーだけで行くんじゃねえのか?」
「それもそうなんだが、危なくないか?」
「ああ、山賊か?確かにあぶねー気がするな。」
「10人以上は居るんだろ。」
「やつらが狙うのは基本食料だ。」
「アガルタからパブロペトリ行きが良く襲われる。この前遭遇したのは、あいつらの拠点があるからだろう。」
「ゼルズラからパブロペトリ、その近くに山賊の本拠地か。」
「避けては通れねえ道だな。」
キングストンに相談だな
ゼルズラにて
「ごめんな。エマーム。強く生きてくれよ。」
「おめー、そんなんだったらやめたらどうだ。」
「いや、ゼルズラの未来のためにはエマームが必要なんだ。」
「ピーッ。ヒーッ」
その心を解るのか
6馬力のコシュタガンケンは4日でゼルズラに着いた
パブロペトリに向けて出発だ
御者として座る
ゆっくりと走らせる
隣にカンプが座る
荷車は箱型だ
「敵はまだか?」
「ヴィカレージさん、落ち着いてください。たぶん、明日か明後日です。」
「そうか。」
「俺はともかく、おめーも損な役回りだな。」
「いやー、どうしてでしょうね。逃げ足の速さでしょうか。」
「言い出しっぺだからな。俺はどうなんだ。」
「目が良いから仕方がないじゃないですか。」
「戦いが始まったら箱の中に籠らせてもらうぜ。」
その日、襲撃は無かった
2日目、朝から快調だ
しかし、カンプの声でその気分は打ち切られる
「道に障害物がある。岩だろうな。」
「予想通りですね。」
「ヴィカレージさん、聞こえました。道に岩です。」
「判った。任せる。」
しばらく進む
「誰か隠れています?」
「隠れていそうな場所はねえな。」
「ゆっくり走らせます。」
のろのろと進み、かなり手前で止まる
周りの様子をうかがう。遮るものがない
「敵の姿は視えません。そっちはどうですか。」
荷車の後ろに移動していたカンプが言う
「隠れてるな。赤外線で見つけた。穴を掘って潜んでいる。たぶん、前にもいるぞ。どうする。」
「予定通りやりましょう。
「保護盾を降ろしてください。」
荷車の箱、二重になっていた部分は下がって、
入口を閉めて、自分も箱に籠る
籠城戦だ
「どうだ敵は。」
ヴィカレージが血走った眼を向けてくる
「向こうも驚いたと思いますよ。」
「後ろの敵が出てきた。8人だ5時方向に4人、7時方向に4人。」
カンプが叫ぶ
前方ののぞき穴から伺うと6人が地面に這いずり出てくる
「2時方向に3人、10時方向に3人」
「殺せー。」
「仕留めろ。」
叫び声が聞こえる
「弓兵!」
ヴィカレージの声がとんだ
天井が外されて、防護壁を設置する
2人の弓兵が台に上る
敵は4人の弓兵が慌てて弓を弾いている
「ドンッ、ドンッ。」
敵の矢がどこかに当たっている
「ビュッ、ビュッ。」
10時方向の弓手に当たった
「2時方向に弓兵」
カンプが叫ぶ。
「応援が来た。8時方向に弓兵。」
おとりである自分たちのコシュタガンケン、その後方には目視できる限界まで離れて本隊のコシュタガンケンがついてきていた
こちらがゆっくり進んでいたので、異常を知って速度を上げて急行したのだ
「前方の弓兵全滅。今から出る。」
ショベルを持って、外に出る
槍使いが3人、剣と盾の男が1人
槍とショベルが交錯する
ガキン。ビュッ。
弓兵が仕事をした
槍使いが2人
突き出された槍をショベルで払う
ガキン。
隣に斧が見えた
「助けに来たぜ。」
カンプは槍使いを引き付けた
もう一人と対峙する
ショベルを突き出す
槍で受けられる
ショベルを突く、突く、ひたすら突く
手を傷つけられた槍使いは槍を落とす
すぐさま首にショベルを突き刺す
吹き出す血を浴びて真っ赤に染められた顔をあげると剣の男の背中に矢が刺さるところだった
隣でカンプがとどめを刺している
振り返るとヴィカレージが槍を持って立っている
「援護はいらなかったようだな。」
「一つ貸しだぜ。」
カンプが戻りながら声をかける
「後方はどうなりました。」
「あれを観たまえ。」
そこにはキングストンやルジキニが敵に止めを刺しているのが見えた
「ちょっとまってください。」
自分は敵の弓兵を確認しに行った
1人は死んでいた
念のため首にショベルをあてる
もう一人は2本の矢を食らっていたが生きていた
「生存者がいる。」
大声で叫ぶ
ヴィカレージとカンプが来る
「おい、お前、仲間は何人だ。」
そいつは目を開いて何も言わない
ヴィカレージが視線を向けてくる
ショベルの先を首筋に突きつける
「全部しゃべったら、見逃してやる。」
「…本当か。」
「ああ本当だ。」
「ここに半分いる。残りは隠れ家にいる。」
「隠れ家まで案内するなら傷の手当てをする。」
「本当か。必ずだぞ。」
「隠れ家はどこだ。」
「ここから半日ぐらいだ。」
ヴィカレージはまたも視線を向ける
「トラフォード、治療してくれ。」
ヴィカレージはキングストンの方に向かった
「今から治療道具を持ってくる。ここでまて。」
コシュタガンケンは弓兵が移動の準備をしていた
「治療道具をくれ。」
「判った。」
道具の入った皮袋を渡される
敵の傍に戻るとカンプが監視している
「まず、腹の矢を抜いて治療する。その次が足だ。」
「抜くぞ、騒ぐな。」
一気に腹の矢を引き抜く
敵は大声でわめく
塩漬け
試した結果では効果があった、を傷口にあてる
表裏を間違えていないことを確かめる
指で傷穴に押し込む
敵は気絶した
「静かになったぜ。」
カンプが言う
足の矢を抜いて
手足を縛ってからみんなのところに合流する
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