第22話
グディソンが挨拶する
「言うまでもないですが、安全第一です。人命が損なわれるようなことがあってはなりません。」
ビセンテも一言がある
「パブロペトリとの初めての直接取引だ。今後を考えると肥料の確保が最優先である、期待している。」
「それでは出発する。」
3台のコシュタガンケンが並んでいる
キングストンの声とともに、先頭の1号車を自ら操り発車する
カンプが荷台に乗り、2号車はルジキニが御者、ヴィラが荷台
そして、いよいよしんがりの自分の番だ
イドゥナが見張りもかねて後ろに乗車している
1台のコシュタガンケンに
途中で道幅の確保が必要になることも考え、16日ぐらいでパブロペトリへ到着する計画だ。試運転を繰り返し、終夜で走らす実験も行った
夜目の利くキングストン、イドゥナ、カンプは大丈夫だが、残りは難しいことが判っている
第一、道が整備されていないと夜は危ない
今回は暗くなったら走らないと決めている
「イドゥナ、聞こえるか?」
「よく聞こえるニャ。」
「蝙蝠養殖計画と
「順調ニャー。」
「もっと詳しく教えてくれ。」
「蝙蝠は
「
「卵を産んで、あたいが温めてヒナを孵したニャ。とってもかわいいニャ。食べたいぐらいニャ。」
「お、おおっ、そうか。」
「今朝も別れるときに泣かれたニャ。」
ほんとに悲しそうだ
「大きくなったら、ボンボネーラの警備もしてくれるし卵も産んでくれるニャ。楽しみだニャ。」
今度は明るくなった
ボンボネーラでは放し飼いでお願いしてもらおう
6日目でゼルズラについた
ゼルズラ周辺の道を補修するのがかなり手間だった
地図を前にして綿密な打ち合せを行う
「俺は、ミュルクヴィズで衛星画像を見せてもらった。」
キングストンが言う
「こういうふうに行くとアガルタだ。」
地図上の線を指でなぞる
「パブロペトリはこう行く。」
全く異なる
「全く別の道になる。何が起きるか判らない。慎重に進むぞ。」
コシュタガンケンは止まっている
少しの間だが
通りやすいように道を整備する
キングストンとカンプは道筋について話をしている
ルジキニに近寄る
「どうだ、ルジキニ。何か異変はあるか。」
「何んにもう、ありもうぅさん。」
「そうか。」
「よし、出発する。」
キングストンの合図だ
荷台に乗り込む
「なあ、イドゥナ、何か変わったことはないか。」
「ニャい、ニャい。トラフォードは神経質ニャ。ゼルズラをでて8日目だけど何もニャい。安全だニャ。」
「そうか。」
道以外は何もない
たまに草木がちょっとだけ茂っている中をひたすら進む
「ここで野営する。ここまで何も無かったが、油断するな。おそらく、明日にはパブロペトリに到着する。気を引き締めろ。」
夜、カンプに話しかける
「なあ、カンプ。ちょくちょくキングストンと話をしてたが、何を話している。」
「あれか、俺は方位が判る。ついでに言うと地図も分かる。」
「どういうことだ。」
「ああ、あの弱っちい太陽が昇るのが東の空だ。で、沈むのが西の空だ。俺はその向きが判る。」
「すごいな。」
「ちなみに大昔の地図ならこの目で見ることができる。」
そう言って右目の義眼を撫でる
「人工衛星が残ってりゃ、正確な位置が分かるんだがな。」
「ミュルクヴィズが管理しているやつか。」
「まあ、ちょっと違うけど、似たような奴だ、GPS衛星があまり残ってねえんだ。」
翌朝、早めの出発だ
まだ薄暗い中、荷台に乗り込む
ゴロンゴロンと軽快に進む
「イドゥナ」
「ニャ」
「イドゥナ、ちょっと止めてこっちに来てくれ。」
「なにニャ。」
「あそこ、あの道の右の草木の生えているところ。だれかいないか。」
「ニャ、5人、いや7人は居るニャ。」
「大変ニャ、キングストンに知らせるニャ。」
「俺が行く、イドゥナは監視を続けてくれ。」
ルジキニとヴィラはすでに止まって様子を伺っている
その前を行くカンプに大声で言う
「すまん、止まってくれ。」
「キングストン、止めろ。」
カンプからキングストンに声が届く
御者台に追いつてキングストンに伝える
「誰かに見られている。どうも怪しい。」
3人でそいつらを見る
「イドゥナは7人だと言っている。」
「そうだな、それくらい居るな。」
「ちょっとまて、11人以上は居るな。3人は座って話をしている。」
カンプは言った
「そんなに居るのか。」
「どうする。」
「たぶん、こっちの速度にはついてこれねーな。危ねーのは帰りだ。待ち伏せ確定だな。こりゃ。」
「可能な限り早く進んで振り切ろう。」
「何かあったら大声で知らせろ。」
キングストンは近づいてきたルジキニとヴィラにも言う
「敵に追跡されているが、距離がある。振り切る。なるべく早く進んでくれ。しっかり警戒しろ。」
「判ったわ。」
イドゥナは監視を続けていた
「どうだ、変化あるか。11人は居るらしいぞ。」
「動きはないニャ。8人ぐらいしか見えないニャ。」
「すまんが、早く出発してくれ。追跡を振り切る。」
「任せるニャ。」
再び、ゴロンゴロンと動き出す
振動で判りにくいが、敵の動きはなさそうだ。
「イドゥナ、キングストンまでの伝言をたのむ。」
「判ったニャ。」
「今のところ敵に変化なし。」
「復唱、今のところ敵に変化ニャし。」
「たのむ。」
イドゥナはルジキニに伝えている
この車間距離なら何とかなるだろう
やがて、伝言が帰って来た
「トラフォード、キングストンから伝言ニャ。この調子で走る。警戒を怠るニャ。」
「了解、この調子で走る。警戒を怠るな。」
イドゥナとの会話も慣れたな
やがて、前方には高い建物が見えて来た
煙を噴いているものもある。なんだあれは
金属製の柵が見渡す限り続いている
そして、目の前には大扉があって、警備の人がキングストンとカンプに何やら話をしている
その人は鱗で全身を覆われており、太く長い尻尾を持っている
話が終わったようで、キングストンが手招きしている
3台のコシュタガンケンはパブロペトリの中に入っていく
大きな倉庫に招き入れられて積んでいた木材と干し肉を降ろす
コシュタガンケンと広場に移動して、休憩をとる
周りに槍を持った護衛が控える
キングストンとカンプはどこかで打ち合せらしい
「どう思う、ここは金属ばかりだ。」
ルジキニが答える
「斧で切れないかもうっ。」
「ここは工場都市ですわ。」
「ニャんだそれ。」
ヴィラの言い分にイドゥナが噛みつく
「海の水から塩やら肥料やらを造っているそうですわ。」
「すごいな。」
「私たちには,まねできない技術ですわ。」
「詳しいな。」
「ビセンテ様からお聞きしました。」
キングストンとカンプが護衛を伴ってやって来た
「遅くなってすまない。今日はこれから夕食会だ、明日は肥料を積み込み次第、出発だ。」
「ボンボネーラとパブロペトリの友好を祝いまして、歓迎の食事をどうぞ。」
挨拶をした人はホーソンというらしい
外観は他の人と変わらない
というか見分けがつかない、似すぎている
「我々は今のドワーフ族とは異なり海に住み始めた。」
「カンプ、ドワーフってなんだ。」
「あれはアガルタの、俺たちを示す言葉だ、差別用語だがな。」
挨拶は続く
「その昔、宇宙からやって来た者により、我々は造られた。やって来た者はイツァムナーという神たちだ。」
「レプティリアンだろ。」
カンプがこぼす
それも差別用語だろうか
「君たち獣人族よりも歴史ある種族だ。」
「海で仕事をしていた、陸に上がったのは最近だ。ドワーフ族とは長い間、協力関係であった。獣人たちとはこれから良い関係を築いていきたい。」
キングストンが挨拶する
「我々は、今まで非力でした。しかし、ここにいるカンプをはじめアガルタの協力で徐々に発展しております。最近、ミュルクヴィズとも協力関係を結びました。」
「ミュルクヴィズは噂のあれか。」
「あの老害エルフどもか。」
「頭でっかちの保守派が。」
まわりの印象が良くないようだ
エルフも差別用語かな
「
キングストンが盛大な拍手を受ける
料理が届けられる
「蝦蟇の卵スープです。」
「蝦蟇の子の焼き物です。」
「蝦蟇のステーキです。」
なんだろう蝦蟇って
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