第11話
2本のこん棒を持って天幕の外に出る
どこかで声がする
「蠕虫だ。」
「気を付けろ。」
「急げ。」
現場に着くと、巨大な蠕虫が存在した
頭というより牙が生えまくった口、太い胴体
尾は胴体に比べると細く黒くなっている
すでに犠牲者が出ている
口から人の足がはみ出ている
口を槍でつつかれている
ルジキニが口を殴る
蠕虫がルジキニを向いた
駆け込んで、こん棒を思いっきり叩きつける
蠕虫がこちらを向く、いや、口をこちらに向ける
キングストンが口の中に槍を突っ込む
ガキン
牙が跳ね返す
ルジキニがまた殴る
「大楯だ。大楯準備。」
叫び声が聞こえる
再びこん棒で殴る
硬い、少しは効いてほしい
足は完全に飲み込まれた
「大楯。いけ。」
キングストンが叫ぶ
頭巾と航空眼鏡、鼻から口、首筋まで覆い、外套を羽織った男が大楯を持って突進する
「毒霧に注意しろ。」
キングストンが叫ぶ
盾に口を塞がれた格好の蠕虫は、ちょっとだけ収縮と伸長繰り返した
「逃げろ。」
大楯で踏ん張る男以外はさがる
蠕虫の口から霧状の何かが噴き出す
ブシューッ
蠕虫は木立ちに向かって進んでいる
「追うんじゃない。」
ビセンテが言う
「気になることがあります。」
「どうしたトラフォード。」
「蠕虫がジョリジョリの正体です。」
「くっ、そうか、キングストン、ルジキニ、一緒に後を付けろ。」
3人で走り出す
「どうする。トラフォード。」
「何か分かるかもしれない。」
「毒霧に注意でごわす。」
松明を持ったルジキニが言う
木立ちに入る
蠕虫の姿が見えない
木立ちの反対側に出た
「どういうことだ、中にいるのか?トラフォード。」
「分らん、木立ちに入った場所まで戻ろう。」
蠕虫の痕を探す
「ここだな、みんな匂いを嗅いでくれ。」
「おおぅ、臭うな。」
「…。」
「この匂いをジョリジョリの穴で嗅いだ。当然、
「なるほど、そうか。蠕虫の行く先を探ろう。」
地面の痕を辿り、匂いを嗅いで探す
「おかしいでごわす。」
「どうしたルジニキ。」
「ここはさっきもぅ来たでごわす。」
「なに…、本当か?トラフォードどうだ。」
「…確かに、最初から調べるか?」
キングストンはしばらく考えて結論を出した
「止めとこう。引き上げるぞ。」
「分らんことの方が遥かに多いでごわす。」
ルジキニが言う
野営地に戻ると片付けは終わっていた
ビセンテが声をかける
「その様子では上手くいかなかったようだな。」
「蠕虫は木立ちに入って、その先は分かりません。」
「そうか、トラフォード、
「確かです、同じ匂いです。」
「分った、朝まで寝ろ、警備は私とビィラでやる。」
少し考える
翌朝、ビセンテが言う
「明るい中で、再調査してくれ。」
昨日の3人で木立ちに向かう
「やっぱり分らんなぁ。トラフォード、何か分かるか。」
「ん~。分らん。ルジキニはどうだ。」
「良い枝でごわす。」
長くて太い木の枝を持っている
「おお、良いこん棒になりそうだ。トラフォード、貰ったらどうだ。」
「これで、模擬戦するのでごわす。」
「嬉しいような嬉しくないような。」
ルジキニから受け取って、持って帰ることにする
結局、何もわからないまま戻ると、出発の準備が終わっていた
ビセンテが待っている
キングストンが言う
「何も分かりません。」
「仕方ない、そういうときもある。君は予定変更だ。アガルタまで行くことになる。」
キングストンは少し驚き力強く返事をする
「お役に立ちます。」
出発して、最初の休憩だ
ルジキニが樽を持って、中身を穴に入れる
自分とキングストンは穴を土で埋める
「なあ、キングストンとルジキニは同じような荷車を曳いてたよな。どうしてだ?」
「それはだな、俺は欠員の補充でアガルタに行く。それで、大楯で毒霧をくらった奴がいたろ。そいつが今まで俺たちが曳いてた荷車を曳いている。」
「そやつの荷車を曳いているでごわす。」
なぜかキングストンがほとんど説明する
「なあ、ルジキニ、それは分かったが、その、言葉使いは方言なのか?イドゥナと同じで語尾が訛っているような。」
「同じ…とは、失礼千万でごわす。」
触れてはいけないことのようだ
「あーっ、そろそろつくと思うぞ、ゼルズラに。」
「ゼルズラ…。中継地点か。」
キングストンが話題を変える
休憩を2回した後、しばらくすると緑が見えてくる
緑が溢れている
見える範囲がすべて木、木、木、さらに進むと手前に草が生えているのが分かる
草原だ
道がうねりながら続いている
その途中に変わったものがあった
大きな石が並べてある
数十歩ぐらいでしかないが、荷車が素直に動いてくれるぐらいには仕上げが良い
そして、改めて気が付いた
草の間には
さっきの場所には、両側に多くの
驚いていると、やがて木が多くなり、荷車の列は森の中に入っていった
やがてひらけた所に着くと荷車が止められていく
キングストンがやってくる
「ゼルズラにようこそ。そうだな、俺が案内しよう。」
「あなたは野営の準備をしてください。」
「ヴィラ、なんで。」
ルジキニが無言で樽を差し出す
キングストンとルジキニは樽を持って穴掘りに行った
「トラフォード、あなたはたくさんの水を見たことあって。」
「えっ。」
話が分からない
「私の後をついて来てください。」
後を追うと、少し下ったところに木が少ない場所がある
ヴィラが指で示す
「あれが分かりますか。」
そこは草と多くの
「なんですかこれは?」
驚いて、息を呑む
「こんなでかい水は見たことない。」
「これは、湖よ。」
ヴィラが自慢げに喋る
「ここは水が枯れないわ。
「ここは、いえ、ここも天国ですね。」
ヴィラが付け足す
「そうね、でも食べ物がないの。野良
野営地に戻るといつもと様子が違う
「キングストン、なんか違わないか?」
「ああ、今夜の警備は全員で交代するらしい。」
「ここ数回、かならず夜襲があるのよ。」
ヴィラが不幸なお知らせをする
「以前はそんなことはなかったわ。でもかなり前に
警備中だが、ルジキニからもらった枝を削っている
「これで、握れるようになった。」
できたばかりのこん棒を両手で握る
軽くて強そうだ
両手を広げたよりも少し短いが、今までのこん棒の二倍ぐらいの長さがある
「是非とも模擬戦をもうっ、申し込む。」
「それはアガルタから戻ってからにしてくれ。」
石が詰まった横の皮袋を見る
投げるのに丁度良いものを集めたのだ
「ルジキニ、さっきの手順でお願いするぞ。間違っても先に突っ込むなよ。」
「失礼なこともうっすな。」
ボンボネーラでも練習した
ここ数日、休憩中にも練習した
寝る前にも練習したし、あそこの木でも練習した
大丈夫だ
何度も石を投げて、あの木に命中した
あの木に…
しばらく考えて、ゆっくりと顔を向ける
「ルジキニ、敵襲だと思う。」
小さな声で囁く
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