第9話
あれから、もう一度周囲を捜索して、隠れていた
訓練場に戻った
戦闘は終わっていた
確実に止めを刺している者や周辺を警戒している者が居る
グディソンが大声で叫ぶ
「みなさーん、もうひとがんばりです。計画通り動いてください。」
ヴィカレージが叫ぶ
「
ビセンテが指示をだす
「歩ける負傷者は自力で指定の場所に来い。あと、重傷者を運んでくるように。」
プラモールが付け足す
「手の空いたものは解体を手伝ってくれ。それから、食事は生ものからだ。保存できるものは保存食にする。」
「ちっ、
苦情が巻き起こった
グディソンがやってきて言う
「みなさん、隻眼を見せてください。」
4人とグディソンとで、隻眼の回収に向かう
林の外に向かい、改めて隻眼の死体を見る
「それで、殺した後に槍を回収したということですね。ちょっとひっくり返してください。」
グディソンが言う
自分とキングストン、ルジキニが俯せになった死体に悪戦苦闘しながらひっくり返す
グディソンが観察している
隻眼の顔を改めて観る
「キングストン、奴は、いったい何を考えていた?」
「はあっ、お前変なことを考えてんな。」
みんなで隻眼の顔を観る
「笑ってるでごわす。」
「…ただの助平顔ニャ。」
イドゥナが吐き捨てる
グディソンの指示で、荷車に載せた隻眼をビセンテの工房へ運ぶ
「もっと人を呼べばよかったですねえ。」
「頑張るでごわす。」
「そうだ、これくらいなんともない。」
「キングストンは脳筋ニャ。」
自分は無言で荷車を押す
ルジキニとキングストンが引き棒を引っ張り、イドゥナとグディソンも荷車を押している
何とか工房に着くと、ビセンテが休憩していた
「ドクター,ビセンテ,カルデロン、持ってきましたよ。」
「ありがとう、こいつを調べる必要がある。荷車から降ろして、そこに置いといてくれ。」
それからグディソンとビセンテは話し込む
隻眼を降ろして、そこに置く
「俺たちは戻ろう。」
「そうだニャ。」
「腹がへったでごわす。」
移動しようとするとビセンテに言われた
「トラフォード、数日後には出発する。」
今日は穴を掘っている
「モイシュさん、これくらいでしょうか?」
「そうだな、もう少しかな。」
何をしているかというと、植林であった
「これくらいかな。樽の中身を入れてくれ。」
「トラフォード、土をかぶせたら、次の場所を掘ろう。」
荷車に空の樽を戻して、土を埋め戻す
「どれくらい植林したらいいんですか?」
「そうだな、理想は見渡す限り木を植えたいがな。そうもいくまい。」
「柵、武器、交易にも、あらゆるものに使いますもんね。」
「それだけではない、砂漠からの風を防ぎ、空気を奇麗にしてくれる。」
「
「まあ、そのあたりはアガルタに行けば分かるかもしれないなあ。」
「そうなんです…んっ。」
穴を掘り進めていると、突然手ごたえが無くなって空洞が開く
「おおっ、なんだぁ、これは。トラフォード、ちょっと覗いてくれ。」
「ええぇ、それは…。」
一応、ささやかな抵抗を試みる
「あなたが第一発見者ですよ。」
覚悟を決めて、ゆっくりと、穴の開いたところに顔を近づける
少し変なにおいがする
「どうかな?」
「もう少し,顔を入れてみます。」
暗いながらも、屈むことで歩けそうな大きさだとわかる
何かが移動したような跡がある
視界が効く範囲で、分岐はない
片方は上の方に続いているようだ、もう片方は下の方へ続いている
突っ込んだ頭を抜く
「見てください。」
モイシュも恐る恐る首を突っ込む
「
モイシュへ聞いてみる。直ぐに首を出して、穴から離れる
「そうかもしれない。だとするとこのままでは不味い。とりあえず、板をかぶせて埋めて戻してくれ。」
埋め戻して、目印に岩を置く
「さて、厄介事はグディソンへ連絡だね。」
ちょっとうれしそうにモイシュが言う。
「ここがその場所ですか。」
グディソンを捕まえて、概要を説明し、再び現場に戻ってきた
グディソンは目印の岩に近づいて、周りを見渡す
「トラフォードさん、穴はどこからどこへ通じてると?」
グディソンに説明する
「片方はあっちへ、片方は向こうへ。」
グディソンは顎に手をやり、考え込む
「おそらく、
「土木部隊で話題になったことすらないです。」
「そうですね。
グディソンが視線を向けてくる
「トラフォードさん、隊商の出発にはまだ時間があります。」
「いやです。」
「まだ何も言ってませんよ?」
目印の岩から少し離れた場所に、天幕が設置されている
天幕の中で横になり、耳を土に押し付けている
「そろそろ交代してくれ、イドゥナ。同じ姿勢でいるのは厳しい。」
「わかったニャ。」
地面を掘って、皮を敷いてある床からでる
座って、岩のあたりを監視していたイドゥナと場所を代わる
ザク、ザクッ。
「何をしている?」
「ちょっと、耳が当たるように深く掘るニャ。」
「もう少ししたらキングストンとルジキニが来るはずだ。静かにできないか。」
「首が凝るニャ。変な姿勢で、じっとしているのは無理ニャ。」
諦めて岩を監視する
しばらくたって、2人がやってきた
「トラフォード、イドゥナ、交代に来た。」
「来もうした。」
「やっと来たニャ。」
「ありがとう、助かった。異常はない。」
床から這い出たイドゥナが四つん這いのまま背中を反らす
ちょっと体勢を変えながら2回も
「本当に
「グディソンはそう言っている。」
ザク、ザクッ。
ルジキニが頭を置く位置だろうか、地面を掘っている
「それが大事ニャ。」
ザク、ザクッ。
「ルジキニ、掘るのをやめろ。」
キングストンが囁く
各々が地面に耳を当てる
ジョリ、ジョリ。
小さな音だが、規則的に聞こえてくる
「音をたてるじゃないぞ。」
さらに小さくキングストンが囁く
ジョリ、ジョリジョリ、ジョリジョリ、ジョリジョリ、ジョリジョリ、ジョリジョリ…。
少し大きくなったそれは、だんだん小さくなり、やがて聞こえなくなった
しばらくたって、こわばった体を起こし、脂汗と土で汚れた顔を全員で見合う
笑い声はでない。
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