第4話
グディソンが誰かと話している
左腕は薄い黄色の短毛が、同じような毛が頭部にも生えている
三角の耳と少し太めでクルリと巻いた尾だ
背丈はそれほどではないが、外套で隠れた右肩が異様な存在感を放つ
「トラフォードさん、紹介します。ドクター,ビセンテ,カルデロン」
「君がトラフォードか、みんなからはビセンテと呼ばれている。」
ビセンテは鋭い視線を向ける
「トラフォードです。どくた…」
「それはグディソンだけが言っている。ビセンテだ。トラフォード」
「トラフォードさん、詳しい話をドクター,ビセンテ,カルデロンから聞いてください、じゃ、これで、あとはよろしく。」
「トラフォード、少し待ってくれ、やることがある。」
手持ちぶさたになり、周囲を観ると、イドゥナが何か見てる
「これが斧だわん。」
「なんだそれは。」
「これはお父さんのお父さんの…。」
「それはもういい、いや、よくない、どうでもいい。じゃなくて斧とはなんだ。」
「斧を使って木を切るニャ、そのための道具ニャ。」
「木を、それで切るのか。」
想像もできない
降ろされていく荷物をみると、他にもいろいろなものがある
どういうことだ
どこからこんなものが
グディソンが物々交換とか言ってたような
飽きもせずにそれを眺めていた
イドゥナは寝に帰ったようだ
ビセンテが近づいてきた
「トラフォード、夕食を食べながら話をしよう。」
食事処にやってきて、調理場を観る
まだ、働いている人は少ない
「ブラモール、いいか。」
声をかけられたそいつは、何より大きな尻尾が特徴だった
足ぐらいある、実際、体を支えているようだ
「なんだい、ビセンテ」
「飯を食いたいが、どれを食えばいい。」
「あっちのテーブルにあるやつだったら、何でも持ってってくれ。」
「ありがとう。いつも助かる。」
トラフォードはビセンテの顔を観ると、目力に押されるように、ビセンテのまねをする
「プラモール、さん、自分も食べていいか?」
「ああ、いいぞ、名前はなんだっけ。」
「トラフォード、です。」
向こうも覚える気になったようだ
葉っぱのうえに焼
「早く来て良かった、ここなら落ち着ける。」
そこは木が組み上げられた食べ物を置く台と人が座れるような石があった
ここは初めてだ、前は地べたに座って食べた
「ここだけでなく、ボンボネーラは全部がいい所です。」
緊張したせいか、本音のような言葉が口をついた
「土木部隊が、計画を立てている。ここはもっと広くなり、良くなる。」
とりあえず、口にモノをいれて、少し考え、その先を予想する。
「あの、斧を使うということでしょうか。」
「簡単に言うとそれだな。」
緑の生肉を飲み込んで、続ける
「それ以外にもあらたな道具を手に入れた。」
焼
「ビセンテ、さんが交易して、」
「正確には
途中で答えが返ってくる。
「交易の相手はどこですか?」
「今回はアガルタだ。」
「アガルタ。」
「君には一緒に来てもらいたい。」
焼いた
「君は文字が読めて、しかも書けるそうじゃないか。」
そうだ、グディソンに根ほり葉ほり聞かれたような気がする
「父との暇つぶしです。」
昔の記憶が溢れる一文字一文字、木の枝で地面に書かされた。
「この世界はいろいろなものが失われた。文字もそうなりそうだ。トラフォードの親父さんはそれに抵抗した英雄だな。」
一瞬、びっくりしたが、無意識に話をそらす
「交易に読み書きが必要ということですね。」
「それを含めて人にはいろいろなものが必要だ。残念ながら、ここボンボネーラでも教えたり、学んだりする、その機会を提供できるほど余裕はない。」
ビセンテも食事を終えた
「出発まで時間がある。まずは、ここをよく知ってほしい。行く気になったら、私のもとに来てくれ。」
葉っぱの上の芋虫を掴んで、口に放り込む
生ではなく調理されている
ほんのりと甘くて美味しい
「…で、俺のところに来たと。」
足と尾を組んで立っているプラモールさん、その尾はいったいどうなってるんだ…
腕を組んでさらに続ける
「よし、解体班から順にやってみろ!」
朝飯を食べた後に、頭を下げて相談した自分は、お仕事体験をしていくことが決定した
焼いた
さっそく場所を移動する
そこは丸太を削った台があり、運ばれてきた
「解体はわかるか、トラフォード」
「自己流であればできます。」
「まずは人がやるとこを観てみろ。」
見ているとそれは何人かで協力し、分担され、手際よく処理されている
皮が剥され、腹が切り裂かれ、可食部が多い部分はまた別の台に運ばれる
内臓もそれぞれに集められていて、血も樽に受けられて、どこかに運ばれる
皮や骨はさらに別の場所に運ばれるようだ
「食えるものは全部食う。使えるものは全部使いたおす。残りは土に埋めて木や草にする。」「最後の…、どういうことですか?」
プラモールさんは説明する
「俺が思うに、
解体班を手伝った後に、教えられた場所を見に行った
林の外側で、周りには小さい若木や、草が生えている
そこは穴が掘られ、骨や皮、内臓が、埋められている
穴がいっぱいになると、埋め戻され、また別の穴が準備される
飽きもせず見つめていると、こちらに近づいてくるものがいる
「おい新入り。」
そいつは顔が毛むくじゃらの男だった
「ヴィカレージだ、どうした、見てるばかりでは退屈だろう。戦うのは好きか。」
「トラフォードです。いろいろと見て回っているところです。」
「知っている。」
長い槍を持っている
「戦うとは?」
「そのうち判る。」
しばらく無言で様子を伺っていた
そいつは上からやってきた
空を飛んでいる!
灰色で人族に見えないこともないが、どう見ても会話が成り立ちそうもない
何の感情も持たない顔だ、これは危険だ、本能が警告する
ヴィカレージは見た目に寄らず、足が速かった
降下地点に駆け込み槍でそいつをけん制する
そいつは上空から降下するも、槍に突き出される
自分もやっと反応し、手頃な石を掴んで投石する
何度か投げたが当たらない
ひとしきり粘ったあと、そいつは諦めたのか、どこかに飛び立っていった
ヴィカレージに寄っていく
「何もできませんでした。」
投げた石はかすりもしなかった
「いい投石だった。…空にいたんじゃ、どうしようもないからな。」
「あれは何ですか?」
「
「えっ、それは食えますか?」
「…どうだろうな、すぐに孵化するし、幼虫は凶悪だ。見つけ次第殺すべきだ。」
何事もなかったかのように、また穴が掘られ、臓物なんかが放り込まれる
「あれから芽がでて、草木が生える。」
「ええっ?」
「せっかくの植林を邪魔されるわけにはいかないからな。」
「
翌日は調理班だった
「その葉っぱを並べてくれ、そう、そんな感じ。15皿分だな。」
プラモールに指示される
「こいつが、捌いたばかりの
グディソンとビセンテもいる
大勢が木で作られた台を運んできている
そして、良さそうなところに設置される
最大の特徴は丸太ではない、平たい板が使われている
近寄って観ていると、グディソンが話しかけてきた
「どうですか、新しい食卓は。」
「新しい技術が使われている。アガルタから持ち帰った。」
ビセンテが会話に加わる
自分は一言も言う隙がない
「あの鋸ってのは良いですねぇ。」
「ああ、部品もあるし、これからは荷車も作れるだろう。」
「土木部隊にもっと人を割り振りましょう。」
「ビセンテさん。」
「急いで次の隊商を準備しましょう。」
「どくたー、ビ、セ、ン、テさん。」
「んっ、どうした。トラフォード。」
「自分も交易をお手伝いします。」
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